Duke Pearson / Merry Ole Soul (1969年)

クリスマス・リースとピアノ
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たとえクリスマス・シーズンじゃなくても……

recommendation

Album : Duke Pearson / Merry Ole Soul (1969)

Today’s Tune : Little Drummer Boy

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クリスマス・シーズンにはクリスマス・アルバムを……

 

 日本で街中がいちばん賑わうのは、クリスマス・シーズンではないだろうか?まあ、ぼくは敬虔なクリスチャンではないから、たとえばツリーやリースなどの飾り付けをいつからいつまでやればいいのかさえ、よくわかっていない。どこかでイルミネーションの点灯式があったとか、今日は感謝祭だとか聞いて、もうそんな季節なのね──と、なんとなく思うくらい。それでも、商店街のアーケードや各ショップの店内が美しく装飾されているのを目の当たりにすると、端なくもこころが浮き立つもの。

 

 そんなときに欠かせないのが、クリスマス・ソング──やはり音楽がなくちゃね。素敵なBGMがあれば、大切なひとと過ごすクリスマス・イヴの夜もムード満点!──とはいうものの、ぼくの場合、もう久しくそんなロマンティックな出来事とは無縁なんだけれどね……。とにもかくにも、この季節──様々なクリスマスにちなんだ音楽を街で耳にするし、それにこころを踊らされるのも事実。CDショップに足を運んでみると、しっかりクリスマス・アルバムの特設コーナーが設けられているから、お好みで一枚チョイスしてみてはいかが?

 しかしながら、そうは云ってみたものの、クリスマス・アルバムというと、オフシーズンにはほとんどターンテーブルにのることがなかったりする。それも余儀なきことで、たとえば夏真っ盛りの日に「♪さあ、あなたから、メリークリスマス……」なんて、大音量でオーディオを鳴らしていたら、変なひとと観られること間違いなしだ。そもそも、精神的にそれをプレイしようとは思わないけれど……。そんなわけで、昔はいい気になってその年の記念にと、毎年必ずクリスマスに因んだCDを購入していたぼくも、いまはすっかり買い控えの状態にある(ほとんど聴かないものが、いっぱいあるしね)。

 

クリスマスでなくてもクリスマス・アルバムを……

 

 そうはいっても、クリスマス・シーズンでなくても、なんとなく聴きたくなるアルバムもある。すぐに思い浮かぶのが、デューク・ピアソンの『メリー・オール・ソウル』──旧ブルーノート・レーベル唯一のクリスマス・アルバムでもあるのだけれど、なんでピアソンがそんな稀少な一枚をものするに至ったのか、なんとなく想像できる。

 

 ピアソンはピアノ奏者として活躍するいっぽうで、1963年からブルーノート・レコードの副プロデューサー兼音楽監督も務めていた。あのハービー・ハンコックの名作『スピーク・ライク・ア・チャイルド』(1968年)も、彼のプロデュース作品。振り返ってみると、作曲やアレンジも含めて、彼が手掛けた作品には、確かにハードバップの現状をちょっと変えるようなところがあった。

 

 とはいっても、そのサウンドからは、革新的なものを創造する──みたいな、しゃちこばるようなところは、微塵も感じられない。そこがいいのだけれど、この『メリー・オール・ソウル』もご多分に洩れず、肩肘の張らない作りでありながら、ピアソンのアイディアとセンスがしっかり光っている(おそらくそういう作品を制作させたら、ブルーノートでは彼が随一だろう)。そんなところに魅せられて、ぼくは、季節外れと云われても、ついつい本作をプレイしてしまうのだ。

 そういえば、ラズウェル細木さんの漫画『ラズウェル細木のときめきJAZZタイム』(1989年)のなかで、本作が採り上げられていた。主人公(ご本人の分身?)がこのレコードに翻弄されまくるエピソードに、ひときわ爆笑させられる(ぜひ一読あれ!)。ラズウェルさんはここで、本作について「血まなこになって探すようなものではけしてない」「愛すべき小品集」とコメントされている。ぼくも、まったく同感──そして、こういう作品──案外人気があるんだよね。

 

「愛すべき小品集」こそ愛聴盤!

 

 本作は、ピアノ・トリオにパーカッションが加えられているのだけれど、このスタイルもレイジーな魅力を生み出している要因のひとつと、ぼくには思われる。もともとアクの強さとは無縁のピアソンならではの、いかにも彼らしい粋なはからいと、感じられる。緩いぶんだけ、楽しさ倍増──それも名プロデューサーの狙いと観られる。

 

 アルバムのオープナー「そりすべり」は、アーマッド・ジャマル・トリオの『バット・ノット・フォー・ミー』(1985年)に収録されている「ポインシアナ」を彷彿させるリズム・パターンに乗って、ピアノのブロック・コードによるイントロからチェレスタによるテーマへ──と、いきなり浮遊感が横溢する。チェレスタを使うところも、遊びごころに溢れているというか、お茶目だな。

 

 続く「リトル・ドラマー・ボーイ」は、個人的には本作の中でいちばん好きなのだけれど、この曲でピアソンは自分はあまり弾かないで、ドラムスとベースにスポットを当てている。ピアソンが最も信頼するリズム隊──ボブ・クランショウ(b)とミッキー・ローカー(ds)が紡ぎ出す律動が、マーチングから当時流行っていたジャズ・ロックに変化していく様が、鮮やかだ。

 そして、パーカッション!──ブラジル出身で、ウェザー・リポートリターン・トゥ・フォーエヴァーのメンバーでもあった、アイアート・モレイラが、サンバ風の「ジングル・ベル」ではカウベルやテンプルブロック、アップ・テンポの「サンタが街にやってくる」ではボンゴ、進軍するような「ワッセイル・ソング」ではトライアングル──と、それぞれの打楽器で花を添えている。

 

 ところで、主役のピアソンはといえば──相変わらず流麗で小気味いいピアノ・プレイを展開。その端正な演奏と遊びごころがいっぱいのアレンジが、とてもセンスがよくて、リスナーにレイドバックした雰囲気を味わわせてくれる。そんなところが、ぼくは大好き!「愛すべき小品集」とは言い得て妙と思うけれど、そんな作品こそ、案外愛聴盤になるし、クリスマスとは関係なく、けっこう聴いてしまう。もちろん、クリスマス・パーティで流しても、盛り上がること間違いなしだけれど!


 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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