いまもってクレート・ディガーたちから熱い視線を注がれているアニメ『ルパン三世』テレビ第2シリーズのサウンドトラック・アルバム、大野雄二〜ユー&エクスプロージョン・バンドの『ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック2』
Album : You & The Explosion Band / Lupin The 3rd Original Soundtrack 2 (1978)
Today’s Tune : Love Squall
大幅なイメージチェンジが図られたテレビ第2シリーズ
アニメ『ルパン三世』のいわゆるテレビ第2シリーズのサウンドトラック・アルバムをご紹介する。意外なことにこのブログで、このシリーズのサントラ盤を採り上げるのははじめてである。この第2シリーズは、日本テレビ系列において1977年10月3日から1980年10月6日まで、およそ3年間にわたり放送された。そのエピソードは155話に及び、全テレビシリーズのなかでももっとも放送期間が長い。原作は云うまでもなく、漫画家モンキー・パンチによるコミック作品。怪盗アルセーヌ・ルパンの孫と称する神出鬼没の大泥棒、ルパン三世を主人公としたある種のクライム・サスペンスだが、見かたによってはお色気アクション・ギャグ・コメディと捉えることもできるだろう。
個人的にはテレビ第1シリーズのほうが好きなのだけれど、主人公のルパン三世の赤いジャケットやだれもが知る「ルパン三世のテーマ」が生み出されたことを考慮に入れると、一般的に『ルパン三世』のイメージを定着させたのはテレビ第2シリーズと云わざるを得ない。ちなみに緑のジャケットを着用したルパン三世が活躍する第1シリーズは、1971年10月24日から1972年3月26日まで放送された。大隅正秋をはじめ、出崎統、高畑勲、宮崎駿といった錚々たる顔ぶれが演出を手がけているが、視聴率は低迷しつづけ放送は全23話で打ち切りとなった。おそらくおなじ轍を踏まないようにということなのだろう、第2シリーズでは大幅なイメージチェンジが図られた。
テレビ第1シリーズとテレビ第2シリーズとの違いでぼくがもっとも気になったのは、実はルパン三世とその仲間たちの顔。キャラクター・デザイナーが大塚康生から北原健雄に替わったことが大きい。実は第2シリーズは、現実の時間経過に合わせて第1シリーズの最終話の5年後として描かれている。第2シリーズ第1話では、メイン・キャラクターたちの第1シリーズ終了からの5年間の動向が、簡単ではあるが語られる。加えて第1シリーズ第1話の敵役、犯罪組織スコーピオンのコミッショナー、ミスターXが超人間に生まれ変わって再登場する。おまけにミスターXの回想という形で、第1シリーズ第1話の映像がそのまま流用されてもいる。つまるところ、ふたつのシリーズは地つづきになっているのだ。

でもテレビ第2シリーズが放送開始された当初、ぼくはルパン三世とその仲間たちの顔に、違和感を覚えざるを得なかった。果たしてふたつのシリーズに関連性をもたせることがほんとうに必要だったのか、いまも疑問に感じている次第。いっそのことパラレルワールド的な描かれかたをされたほうが、しっくりきたかもしれない。ところがどっこい、そんな苦言を呈するぼくも、実はいつの間にか第2シリーズの水に慣れてしまっていた。よくよく考えると、その最大の要因は音楽にあったと気がつく。ふたつのシリーズの音楽を比較すると、推進力のある多様なリズム・パターンが展開されるところは共通するのだが、そこから生まれる各々のテクスチュアには大きな隔たりが感じられるのである。
テレビ第1シリーズの音楽を手がけたのは、唯一無二のスタイリスト、ヤマタケの愛称で親しまれる山下毅雄。映画、テレビドラマ、アニメ、CMなどの音楽を数多く手がけた作曲家だ。ヤマタケ・サウンドは、ジャズ、ロック、ソウル、ラテンなど、多彩なジャンルの音楽がクロスオーヴァーするのも然ることながら、スキャット、口笛、かけ声などが頻繁に登場するという実にユニークなものである。その解き放たれたような晴々したフィーリングは、大人向けのアニメを制作するという『ルパン三世』に掲げられた当時としては実に画期的なコンセプトに、よくマッチしていると思われる。いっぽうチャーリー・コーセイが歌うエンディング・テーマなどは、デカダンスな印象さえ与える。いずれにしても、第1シリーズの音楽は斬新だった。
それに対してテレビ第2シリーズの音楽では ジャズ・ピアニストの大野雄二が起用された。とはいっても当時の大野さんといえば本業のほうは開店休業中で、もっぱら作曲家活動に専念していた。すでにポップ・ミュージックのプロデューサーやアレンジャーを務めるかたわら、CM音楽をはじめ、テレビドラマや映画のアンダースコアなどを数多く手がけていたが、一般的にはなんといっても角川春樹事務所製作第1回作品の映画『犬神家の一族』(1976年)の音楽を担当したのを機に、広くその名を轟かせた。そのサウンドにはジャズをはじめ、ロック、ソウル、ラテンなどのエッセンスが含まれており、どちらかというとそれまで日本の映画音楽で主流だったヨーロッパの伝統的な作曲技法や演奏法によるスコアとは、ひと味もふたも違う心地よさがあった。
ちょうど『ルパン三世』テレビ第2シリーズの放送がスタートした直後(1977年10月8日)に劇場公開された、角川映画第2弾『人間の証明』(1977年)の音楽も大野さんが手がけたものだが、ロック・シンガーのジョー山中を起用した主題歌「人間の証明のテーマ」は、映画公開まえからテレビやラジオのスポット広告で頻繁に流されたことも手伝って大ヒットとなった。山中さんにとっても、初のオリコン・チャート入りで2位を記録した生涯最大のヒット曲である。劇伴のほうも、1970年代前半からアメリカでブームとなっていたクロスオーヴァー・ミュージックに倣ったスタイルがフレッシュな印象を与え、たいへんな人気を博した。そしてそのサウンドは『ルパン三世』の新しい音楽に直結するものでもあった。
いまから考えると、映画公開のおよそ2週間まえ(1977年9月25日)にリリースされた『人間の証明』のサウンドトラック・アルバムは、映像と切り離して聴いても、こころ行くまで深く味わい尽くすことのできるクロスオーヴァー・アルバムだった。たとえば、このアルバムに収録されているいくつかの楽曲には、海外のクロスオーヴァー作品からの影響が顕著に窺える。主旋律がアープ・オデッセイの口笛のような音色で奏でられる「我が心の故郷へ」では、躍動感のあるイントロがデイヴ・グルーシンの「フライ・バイ・ナイト」という曲のそれを彷彿させる。ギターのヴァイオリン奏法がリラクゼーションを促す「夜明けのコーヒー・ショップ」は、リー・リトナーの「ドルフィン・ドリームス」をイメージさせる。
サントラ盤は商品化を目的としたオリジナル・レコーディング
さらにミステリアスなムードを醸し出す「謎のキーワード」に至っては、クラウス・オガーマンの「夜のおとずれ」という曲が手本にされているとしか思えない。これらをオマージュととるかパクりととるかはさておき、そのサウンドがいまの時代においてもDJたちのあいだで国産レア・グルーヴとして重宝されるように、きわめてクールなものであることは間違いない。まして当時の日本映画の音楽としては、紛れもなく先進的だった。このレコードをはじめて聴いたときのぼくといえば、それこそデイヴ・グルーシン、ボブ・ジェームス、エウミール・デオダートなどのアルバムに手を出すほんの少しまえ。そういう意味では、ぼくにとって大野雄二という音楽家は、クロスオーヴァーあるいはフュージョンへの水先案内人だったとも云える。
ところで『ルパン三世』テレビ第2シリーズの音楽は、映画『人間の証明』のクロスオーヴァー・サウンドが直線的に引き継がれたものだ。さきに挙げた楽曲を含む『人間の証明』のアルバム用音源のレコーディングは、1977年の5月に港区麻布台のサウンド・シティ・スタジオと目黒のモウリ・スタジオにおいて行われた。そしてそのおよそ3か月後の8月、おなじサウンド・シティ・スタジオをはじめ、杉並区堀之内のテイチク・スタジオ、千代田区有楽町のニッポン放送内スタジオにおいて、有名な「ルパン三世のテーマ」エンディング・テーマの「ルパン三世愛のテーマ」さらにはアンダースコアからアイキャッチに至るまで『ルパン三世』テレビ第2シリーズの初期の音楽のほとんどが吹き込まれたのである。
新たに生み出された『ルパン三世』テレビ第2シリーズのスコアにおける、ジャンルの垣根を超えた音楽性を孕んだスタイリッシュなサウンドは、軽妙洒脱であるところは共通するもののどちらかというと鷹揚さが際立ったテレビ第1シリーズのスコアのそれとは、かなり雰囲気が違う。映画音楽の作曲家に喩えるなら、音楽の担当がアルマンド・トロヴァヨーリからデイヴ・グルーシンに替わったような感じといったところだ。いずれにしても第2シリーズの音楽には、第1シリーズの音楽においてある程度定着していたイメージを払拭するような勢いがあった。そんな大野雄二によるニュー・サウンドを歓迎するとともに、キャラクター・デザインを筆頭に当初違和感を覚えた第2シリーズの世界に、ぼくはいつのまにか順応していたのである。

むろん番組を制作する側にそんな思惑はなかったのだろうけれど、結局のところぼくは大野雄二の音楽に上手くごまかされてしまい、テレビ第1シリーズに引きつづきテレビ第2シリーズもなんとなく最後まで観てしまったのだ。裏を返せば、それだけ大野さんの音楽が素晴らしかったということになる。素晴らしいといえば、当初発売されていたこのシリーズのサウンドトラック・アルバムの収録曲が、フィルムスコアリングとは別に商品化を目的としたオリジナル・レコーディングによるものだったということが挙げられる。このマナーはアメリカの映画音楽の作曲家、ヘンリー・マンシーニの音盤ではお決まりのようになっていたが、大野さんの初期の作品でもこの作法が採用されることが多かった。
テレビ第2シリーズのためにレコーディングされたトラックは、放送期間が長期にわたったこともあり膨大な数に上る。放送終了後に映像への使用のみを前提としたトラックもそのほとんどが商品化に至ったが、レコード化を踏まえたオリジナル・レコーディングのそれと比較すると明らかにクオリティが低い。逆から云えば、このシリーズの放送期間中に発売された3枚のサウンドトラック・アルバムのコンテンツは、どれも鑑賞用音楽として成立しているのはもちろんのこと、敢えて『ルパン三世』を意識しなくても大野雄二のクロスオーヴァー作品としてその醍醐味をたっぷり味わうことができるものとなっている。そしてこの3枚もまた『人間の証明』のサントラ盤と同様に、いまもってクレート・ディガーたちから熱い視線を注がれている。
そんな『ルパン三世』のサウンドトラック・アルバムが、最初に発売されたのは1978年の1月25日。テレビ放送開始からすでに3ヶ月以上が経過したあとのリリースとなったが、レコーディングは1977年の11月から前述のサウンド・シティ・スタジオと赤坂ミュージック・スタジオとで行われた。のちに何度となくアップデートされる「ルパン三世のテーマ」のオリジナルは、ホレス・パーランの「コンガレグレ」を彷彿させるメロディック・ライン、フィリー・ソウルばりのグルーヴィーなリズム、そして歯切れのいいブラスと華麗で柔らかなストリングスといった、洗練されたアーバン・ムードのサウンドが新鮮だった。また収録曲の「マグナム・ダンス」は、明らかにボブ・ジェームスの「ナイト・クローラー」が意識されている。
このころの大野サウンドでは、シグマ・サウンドとも云われるフィラデルフィア発のソウル・ミュージックや、CTIレコードのブランディング戦略を象徴するポピュラライズされたジャズ・サウンド、いわゆるクロスオーヴァーなどからの影響が顕著に現れている。というかそれらのスタイルが、手本ないし規範として意識的に真似されているように感じられる。だから『ルパン三世』の楽曲にも、上記のような海外のアーティストの作品との類似性が随所に見受けられるのだ。それを剽窃と捉えて憤慨する向きもあるだろうけれど、ヒンシュクを買う覚悟で云えば、ぼくにはそれはそれで楽しいことのようにも思われる。いずれにしても当時の日本では、映像作品にそういうスタイルの音楽を提供する作曲家といえば、大野雄二をおいてほかにいなかったのである。
ときに『ルパン三世』のサウンドトラック・アルバムだが、1枚目の発売から11か月足らずという短いスパンで2枚目のレコードがリリースされた。ニュー・アルバムの制作は、オープニング・テーマとエンディング・テーマの変更に合わせたもの。3枚目もやはり同様のタイミングで発売された。2枚目のレコードは1978年12月10日に発売されたのだが、同年12月16日に公開された劇場映画第1作『ルパン三世 ルパンVS複製人間』(1978年)のサントラ盤としての機能も果たす仕様となっている。とはいっても全曲、音盤化が目的とされたオリジナル・レコーディングによるもの。劇場版のフィルム・スコアはのちにレコードとして発売されたが、映画公開から6年3か月ほど経った1985年3月21日のことである。
今回はこの2枚目のアルバムをご紹介するので、その詳細については後述させていただくとして、そのまえに2枚目のリリースからおよそ1年後の1979年12月1日に発売された3枚目のアルバムについて簡単に触れておく。こちらの音盤も2枚目と同様に、オープニング・テーマとエンディング・テーマの変更にともない制作されたものであるが、全編オリジナル・レコーディングとなっている。また本作は1979年12月15日に公開された、宮崎駿の劇場映画初監督作品でもある『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)のサウンドトラック・アルバムも兼ねている。吹き込みはオープニングとエンディングの両テーマのみ1979年7月31日に行われ、マスタリングが終了したのは9月6日。そのほかのトラックはすべて、同年10月の録音となっている。
ヴァラエティに富んでいながら音楽作品として調和がとれている
このアルバムの楽曲のレコーディングは、すべて千代田区四番町のサウンドインスタジオで行われたのだが、このレコーディング・スタジオは当時スタートしたばかりだった日本テレビ音楽(MTVM)のスタジオ部門によって開設された。スウィンギーなビッグバンド・ジャズにアレンジされた人気のオープニング・テーマ「ルパン三世 ’80」は、ここで誕生した。なおこの曲で鮮やかなマレット捌きを披露しているのは、ジャズ・ヴィブラフォニストの松石和宏である。ただアルバム全体の印象といえば、それまでのファンキー・テイストは薄められ、そのかわりにエレガントなサウンドとトロピカルなリズムがクローズアップされたように感じられる。これは多少なりとも、ヨーロッパの架空の小国を舞台とする劇場版のムードにベクトルが向けられた結果だろう。
ちなみに映画『ルパン三世 カリオストロの城』のレコード化を前提としないスコアは、1979年10月17日に港区六本木の朝日サウンド・スタジオ501スタジオで行われた。またフィルム・スコアの音盤は、映画公開から3年半以上あとの1983年3月21日に発売された。そしてやはり3枚目のオリジナル・レコーディング・アルバムに収録されているトラックにも、海外のアーティストの楽曲にインスパイアされたものがあるので一応挙げておく。まず「そよ風の誘惑」と「悪の栄光」という曲だが、それぞれヴィブラフォニスト、マイク・マイニエリの曲「イージー・トゥ・プリーズ」と「マジック・カーペット」によく似ている。また「ミステリアス・ジャーニー」は、ギタリスト、アール・クルーの「アコースティック・レディ・パート1」を彷彿させる。
3枚目のアルバムは、さきに述べたようにテレビシリーズのアンダースコアであると同時に映画『ルパン三世 カリオストロの城』のサントラ盤でもあるわけで、従来よりもアコースティックなサウンドが志向されている。おそらくそういう音をイメージしたとき大野さんは、ヴィブラフォン、ナイロン弦ギターといった楽器が音景のセンターに位置づけられたフュージョン作品を参酌して、スコアを書いたのだろう。繰り返しになるけれど、こういう類似性に出くわすとぼくの場合、ついクチもとを緩めてしまいながらも、そのことが妙に腑に落ちたりするのだ。というのも大野さん自身が、いっときは港区南青山の骨董通りにあった輸入レコード店、パイド・パイパー・ハウスに通い詰めるほど、音楽を聴くことがいちばんの趣味であると明言しているからだ。

そんなふうにして大野さんが海外の音盤から得た多種多様の音の具材によって、あたかも美味い五目炒飯のようにもっとも彩り豊かに仕上げられたのが、2枚目のオリジナル・レコーディング・アルバム『ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック2』 (1978年)である。私感では3枚のサウンドトラック・アルバムのなかで、楽曲がヴァラエティに富んでいながら、ひとつの音楽作品としてとりわけ調和がとれているのは本作と思われる。LPレコードは当時NTVMが提携していた英国のレーベル、サトリル・レコードからリリースされており、テレビアニメのサントラ盤とはいえ外観にも子ども向けの番組をイメージさせるところは微塵もない。アルバム・プロデュースは、大野さん自身とMTVMの飯田則子とが手がけている。
レコーディングは、エンディング・テーマの「ラヴ・スコール <峰不二子のテーマ>」とインサート・ソング「スーパー・ヒーロー <ルパン三世のテーマ>」とが1978年8月16日(歌入れは各々9月16日、8月18日)に、オープニング・テーマの「ルパン三世 ’79」が9月に、そしてそれ以外の楽曲は11月2日と4日に、それぞれ定番のサウンド・シティ・スタジオ(「スーパー・ヒーロー <ルパン三世のテーマ>」の歌入れのみ大平スタジオ)で行われた。レコーディング・エンジニアは、大野作品ではおなじみの伊豫部富治が務めている。演奏はユー&エクスプロージョン・バンドと記載されているが、このときのメンバーは大野雄二(key)、松木恒秀(g)、長岡道夫(b)、渡嘉敷祐一(ds)、穴井忠臣(perc)となっている。
そのほかの参加ミュージシャンは、中川昌三(fl)、藤山明(fl)、中谷望(fl)、村岡建(sax, cl)、斉藤清(sax)、数原晋(tp)、岸義和(tp)、中川喜弘(tp)、白山文男(tp)、新井英治(tb)、鈴木稔グループ(str)、栗林稔(org)、風間文彦(acc)、坂田宏聡(shakuhachi)、堅田啓光(tsuzumi)、平山万佐子(biwa)、伊集加代子グループ(cho)、トミー・スナイダー(vo)、サンドラ・ホーン(vo)となっている。大野さんのレコーディングでは、おなじみの顔ぶればかりである。補足しておくと、松木さん、渡嘉敷さん、穴井さんの3人は当時、コルゲン・バンド(のちのザ・プレイヤーズ)のメンバー。長岡さんは、ワン・ライン・バンド(のちのSHŌGUN)のメンバー。そして伊集さんは、もとシンガーズ・スリーのメンバーだった。
アルバムは「ルパン三世 ’79」からスタート。アップテンポのディスコ・ヴァージョンだが、メロディを奏でるオーバーハイムと随所で聴かれるポラード・シンドラムの音色が印象に残る。ストリングスの高速デタシェもキャッチーだ。哀愁を帯びたウェスタン風の「トルネイド <次元大介のテーマ>」は、ストレートにチャック・マンジョーネの「サンチェスの子供たち」を思い出させる。ドライなフリューゲルホーンとソリタリーなアープ・オデッセイとのコントラストが鮮やかだ。リフレッシングなサンバ「恋はサンパウロ」では、軽やかなホーンズのアンサンブルも然ることながら華やかさを添える女性コーラスが素敵だ。ミッドテンポのアーバン・ソウル「スフィンクス」では、なんといってもスティーヴ・ガッドを想わせるドラミングがクールだ。
スケールの大きなジャズ・ファンク「螺旋飛行〜黄昏のサンジェルマン」では、ダンサブルなビート感と気分を浮き立たせるようなブラス・サウンドが心地いい。スローになってからのトロンボーンとアコーディオンとの絡みが、スウィートなムードを演出する。アップ・テンポのブギー・ファンク「黒い陰謀」では、なんといってもエッジの効いたブラス・サウンドにシビレる。エキゾティックなムードの「オアシスへ…」では、トロピカルなリズムとフルートやストリングスによるアンサンブルが得も云われぬ清涼感を醸成する。粋なディスコ・ブギー「スーパー・ヒーロー <ルパン三世のテーマ>」では、ゴダイゴのドラマーでもあるトミー・スナイダーがスマートなヴォーカルを聴かせる。女性コーラスもファッショナブルだ。
尺八、琵琶、そして鼓といった和楽器がフィーチュアされる「斬鉄剣 <石川五右衛門のテーマ>」は、和風メロディとロッキッシュなリズムが溶け合ったダイナミックなナンバー。エレクトリック・ギターのソロも熱い。ハンド・クラッピングが入るニューオーリンズ風の「ファニー・ウォーク」では、バウンシーなリズムと迸るブルース・フィーリングに胸がすく。ハモンドやクラリネットも効果的だ。ラストを飾る「ラヴ・スコール <峰不二子のテーマ>」は、もう名曲と云うしかない。サンバのビート感とソウル・ミュージックの風合いがほどよくミックスされている。のちにサンディー&ザ・サンセッツで知られるようになる、サンドラ・ホーンのアダルトライクだけれどキュートなヴォーカルもいい。セカンド・ヴァースでキーが半音上がるのにも、ちょっと感激。この曲も含めて、本盤は大野雄二のセンスのよさが全開した1枚と云える。ぜひご賞味あれ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。







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