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	<title>Yuji Ohno (大野雄二) | 気ままに音楽生活</title>
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	<description>いささか気ままに──ではありますが　素敵な音楽をご紹介してまいりますので　どうぞよろしくお願いいたします</description>
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	<title>Yuji Ohno (大野雄二) | 気ままに音楽生活</title>
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		<title>谷川賢作 − 大野雄二 / 犬神家の一族 オリジナル・サウンドトラック (2006年)</title>
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		<pubDate>Sun, 06 Sep 2026 08:01:15 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[Soundtrack]]></category>
		<category><![CDATA[Kensaku Tanikawa (谷川賢作)]]></category>
		<category><![CDATA[Yuji Ohno (大野雄二)]]></category>
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					<description><![CDATA[30年のときを超えて蘇るふたつの『犬神家の一族』の音楽──大野雄二による貴重なボーナス・トラックも追加された新旧スコアのダブル・フィーチュア盤]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h2><span id="toc1">30年のときを超えて蘇るふたつの『犬神家の一族』の音楽──大野雄二による貴重なボーナス・トラックも追加された新旧スコアのダブル・フィーチュア盤</span></h2>

<div class="wp-block-cocoon-blocks-label-box-1 label-box block-box has-border-color has-ex-a-border-color">
<div class="label-box-label block-box-label box-label"><span class="label-box-label-text block-box-label-text box-label-text">recommendation</span></div>
<div class="label-box-content block-box-content box-content">
<p class="wp-block-paragraph"><img decoding="async" class="wp-image-703 alignleft" style="margin-bottom: 0px;" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png" alt="" width="101" height="92" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-300x274.png 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records.png 640w" sizes="(max-width: 101px) 100vw, 101px" /><em>谷川賢作 − 大野雄二 / 犬神家の一族 オリジナル・サウンドトラック (2006)</em></p>
<p style="text-align: right;"><em>Today&#8217;s Tune : 那須の金田一耕助</em></p>
</div>
</div>

  <div id="toc" class="toc tnt-disc toc-center tnt-disc border-element"><input type="checkbox" class="toc-checkbox" id="toc-checkbox-2" checked><label class="toc-title" for="toc-checkbox-2">目次</label>
    <div class="toc-content">
    <ol class="toc-list open"><li><a href="#toc1" tabindex="0">30年のときを超えて蘇るふたつの『犬神家の一族』の音楽──大野雄二による貴重なボーナス・トラックも追加された新旧スコアのダブル・フィーチュア盤</a><ol><li><a href="#toc2" tabindex="0">日本映画の常識を覆すエポックメーキング的かつエヴァーグリーンな音楽</a></li><li><a href="#toc3" tabindex="0">リメイク版『犬神家の一族』はキャスティングの時点でつまづいている</a></li><li><a href="#toc4" tabindex="0">1976年版のフィルムスコアリング手法で録音したトラックの一部を収録</a></li></ol></li></ol>
    </div>
  </div>

<h3><span id="toc2">日本映画の常識を覆すエポックメーキング的かつエヴァーグリーンな音楽</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　音楽家、<strong>大野雄二</strong>がこの世を去ったことはこのブログでもお伝えしたが、昨日のことのように思えてならない。大野さんは2026年５月４日午前６時８分、老衰のため東京都の自宅で永眠された。直前まで普段と変わることなく過ごされていて、就寝中に苦しむことなく安らかに旅立たれたとのこと。享年84歳だった。大野さんの誕生日である５月30日に開催されたライヴ公演「Lupintic All Stars Produced by YUJI OHNO」も、まだ記憶に新しい。そしてその会場となったフード＆ドリンクの提供とライヴ公演とが組み合わされたクラブ＆レストラン、東京都港区赤坂のビルボードライブ東京において、去る９月１日、２日の両日、大野さんのお別れの会が開かれた。関係者から一般のファンまで多くのひとたちが、それぞれの思い出を胸に大野さんを偲んだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　云うまでもなく大野さんは、ジャズ・ピアニストとしてキャリアをスタートさせ、テレビアニメ『ルパン三世』第２シリーズ(1977年 – 1980年)をはじめとする、テレビや映画のテーマ曲やアンダースコアを数多く手がけ、作曲家として広く知られるようになった音楽家だ。その出世作といえば、1970年代の中ごろから1980年代半ばにかけて隆盛を極めた、角川映画の初作品『犬神家の一族』(1976年)だろう。<strong>市川崑</strong>監督、<strong>石坂浩二</strong>主演による金田一耕助シリーズの第１作でもある。主人公の私立探偵、金田一耕助をはじめて原作どおりの着物姿で登場させたことも当時は画期的だったが、大野さんが作曲したテーマ曲「愛のバラード」のハンガリーの打弦楽器ハンマード・ダルシマーとシンセサイザーとがユニゾンした独特の音色で奏でられる流麗なメロディは、一般大衆だけでなく各界にも爽やかな衝撃を与えた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それまでの日本映画の主題曲や劇伴といえば、西洋芸術音楽の流れを汲んだものが主流だった。たとえばクラシック音楽だと、<strong>伊福部昭</strong>、<strong>眞鍋理一郎</strong>、<strong>芥川也寸志</strong>、<strong>佐藤勝</strong>、<strong>林光</strong>、現代音楽だと<strong>湯浅譲二</strong>、<strong>武満徹</strong>などがすぐに思い浮かぶのだが、これは個人的に好きな作曲家である。ただ当時小学生だったぼくにはどう贔屓目に見ても、それらの大作曲家たちのペンによる数々の名曲よりも、大野さんの「愛のバラード」のほうが新鮮に感じられたのだ。<strong>ヘンリー・マンシーニ</strong>が作曲した『シャレード』(1963年)のテーマ曲を彷彿させる、モダンな３拍子のメロディック・ラインといい、<strong>デイヴ・グルーシン</strong>が『コンドル』(1975年)のテーマ曲で試みたハンガリーの民族楽器、ツィンバロンとモーグ・シンセサイザーとをミックスする手法に倣ったサウンドいい、とにかく新しかった。</p>
<p><img fetchpriority="high" decoding="async" class="aligncenter wp-image-9655 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/09/inugami1.png" alt="犬神家の一族のワンシーン・イラスト(沈みかけるボートから珠世を助ける金田一)" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/09/inugami1.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/09/inugami1-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　それまで映画音楽を１、２本しか手がけたことがなかった大野さんを大作映画『犬神家の一族』の音楽制作に起用したのは、映画の製作総指揮を執った角川書店の当時の青年社長、<strong>角川春樹</strong>。角川さんは、日本テレビのサスペンスドラマ・シリーズ『火曜日の女』(1969年 &#8211; 1973年)および『土曜日の女』(1973年 &#8211; 1974年)の劇伴や、NHKのニュース番組『ニュースセンター９時』(1974年 &#8211; 1988年)のテーマ曲を聴いて、大野さんがクリエイトするフレッシュなサウンドに注目したのだという。氏の狙いは、映画、書籍、音楽のメディアミックスだったわけだが、そういう戦略が意欲的に行われ成功した例としては、おそらくこの映画が最初だったのではなかろうか。映画は空前の大ヒットを記録。原作本は、異例の売り上げを達成。映画公開前に発売された「愛のバラード」のEPレコードも、スマッシュヒットとなった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　折に触れて実感するのだが、角川さんはまったく型破りというか、虚心坦懐なひとだ。なにせ『犬神家の一族』の音楽の制作費に、当時の日本映画の相場50万円に対し、500万円以上を投じたというのだから──。氏が音楽メディアを、原作本や映画の収益向上を補完するものであり、相乗効果をもたらす重要なファクターと見ていたことは明らかだ。というのも、角川映画のサウンドトラック・アルバムや主題曲を収録したEPレコードといえば、概ね映画の公開前に発売され、しかもそれらは常に単に劇伴を記録したものではなく、鑑賞用音楽として成立する作品に仕上げられていたからだ。その手法は当初、メディアミックスの一環だったのだろうが、それが結果的に日本映画のサウンドトラックに新風を吹き込み、延いては商業音楽を高い次元にもっていく足がかりとなったことは事実である。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　日本の映画音楽の高品質化に先鞭をつけた『犬神家の一族』のサウンドトラックの吹き込みは、通常の音楽作品と同様に撮影所以外のレコーディング・スタジオにおいて、当時としてはスタンダードだった16トラックのMTRが使用されて行われた。映画公開直後に発売されたサウンドトラック・アルバムには、サントラ盤というよりもどちらかというと、<strong>大野雄二/プロジェクト</strong>による情趣に富んだ上質のクロスオーヴァー/フュージョン作品といった風情がある。このサウンドが現代においてもリスナーに爽やかな衝撃を与えるのは、まず間違いないことと思われるのだが、それと同時にこのサントラ盤のコンテンツとフィルム用ソースとにイメージのズレを感じる向きも非常に多いと想像される。そしてそれには、合理的な根拠があるのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　もともとビクター音楽産業からLPレコードとして発売されていた『犬神家の一族』のオリジナル・サウンドトラック・アルバムを、1998年にカルチュア・パブリッシャーズがはじめてCD化した際、フロントブックレットに<strong>市川崑</strong>監督のコメントが掲載された。それには「サウンドもフレッシュな音楽をと<strong>角川春樹</strong>君の推薦で<strong>大野雄二</strong>君を起用した」という一節がある。しかしながら実際は、市川監督は当初、大野さんがクリエイトしたサウンドに難色を示したのだ。大野さんの証言によると、氏はまず選曲を担当した<strong>大橋鉄矢</strong>に「大野さんの作った曲は一切受け付けられません」と云われ、監督からも「大野君、悪いけど僕の映画にはちょっと合わないなぁ」とダメ出しを食らったとのこと。監督はそれこそ西洋芸術音楽の流れを汲むような楽曲、ことに現代音楽的な音を求めていたのだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ところが、音楽ライターである<strong>不破了三</strong>の取材によると、レコーディングで指揮を担当したコンダクターの<strong>吉澤博</strong>(市川監督より年長者)が、大野さんの音楽に異を唱える市川監督に「あんたねぇ、大野さんに任せたんなら現場でごちゃごちゃ言いなさんな！」と一喝したそうだ。吉澤さんは、映画音楽指揮の第一人者。<strong>小津安二郎</strong>監督の諸作をはじめとする日本映画の黄金期を音楽面で支えた名コンダクターである。大野さんとはその後も『人間の証明』(1977年)や『野生の証明』(1978年)などで一緒に仕事をしている。以上、たいへん興味深いエピソードではあるが、結局のところ大野さんは、フィルムスコアリング手法(出来上がった映像の尺に合わせて音楽をつける方法)で、ふたたびレコーディングに臨むこととなった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　映画と切り離しても独立した音楽作品として大野サウンドをたっぷり味わうことができる『犬神家の一族』のオリジナル・サウンドトラック・アルバムが、映画を鑑賞したひとに思い描いていたものと異なる印象を与えるのは、そんな事情があるからだ。ちなみに多少なりとも大野さんに影響を与えた<strong>ヘンリー・マンシーニ</strong>は、フィルム・ヴァージョンとは別に、商品化のためのフルレングス・ヴァージョンをレコーディングすることで有名。映像から離れても鑑賞するに足る音楽をリスナーに提供するという、映画音楽の名匠のこだわりである。とにもかくにもこのサントラ盤の音源は、それまでの日本映画の常識を覆すようなエポックメーキング的かつエヴァーグリーンなもの。その楽曲といえば、ゼロ年代の音楽シーンにおいて<strong>DJ MURO</strong>がレア・グルーヴとして採り上げるくらい、キャッチーなのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc3">リメイク版『犬神家の一族』はキャスティングの時点でつまづいている</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ではここで、その音源の吹き込みについて具体的に触れておく。EPレコードとして発売された「愛のバラード」とそのB面に収録された「憎しみのテーマ」は、1976年８月に東京都中目黒に所在するモウリスタジオ(現モウリアートワークススタジオ)において録音された。<strong>大野雄二とファンタスティック・ブルー</strong>と銘打たれたバンドのクレジットには、<strong>杉本喜代志</strong>(g)、<strong>高水健司</strong>(b)、<strong>市原康</strong>(ds)、<strong>穴井忠臣</strong>(perc)、<strong>中川昌三</strong>(fl)など、その後の大野サウンドに欠かせない敏腕プレイヤーの名が連なる。なおアルバムのほうに収録されたそのほかの楽曲では、日本を代表するファーストコール・ミュージシャン、<strong>岡沢章</strong>がベースを弾いている。しかも、レコーディング＆ミキシング・エンジニアは、あの<strong>ナイアガラ・トライアングル</strong>の作品を手掛けた<strong>吉田保</strong>。名作には名作たる所以があるのだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　アルバムのほうのレコーディングは1976年９月、主に港区麻布十番に所在するアオイスタジオにおいて行われた。こちらでは、大野さんと長年コンビを組んだ<strong>伊豫部富治</strong>がエンジニアを務めた。むろんアルバムにもEP盤の２曲は収録されたのだが、それらは若干ミックスが異なる。特に「愛のバラード」は、EP盤ではダルシマーのリバーブレーションが深くされたり、ストリングスが前面に押し出されたり、パートごとに強調されるところがあった(映画ではこちらのヴァージョンが使用されている)。ところが、アルバムではそれらの効果が若干弱められている。また、22小節ほど新たなイントロも付け加えられている。おそらく、アルバムとしての均衡維持が優先されたのだろう。機会があれば、ぜひ聴き比べていただきたい。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　さらに『犬神家の一族』のオリジナル・サウンドトラック・アルバムの収録曲について、お伝えしておく。オープナーの「愛のバラード」につづくのはプログレ風の「怨念」だが、長尺の混成曲でアルバム中もっとも聴き応えのあるナンバーだ。ダルシマーと琵琶も使用されているが、ハモンド・オルガンの猛演やストリングスのトレモロも効果的。そして、なんといってもエレクトリック・ギターのソロがダイナミックで秀逸。途中、劇中で金田一耕助のテーマ的に使われている曲のモティーフも現れる。３曲目の「呪い住みし館」は、<strong>大橋鉄矢</strong>により加工されフィルムでも使用された曲だが、エキサイティングなドラムスのソロが白眉。冒頭のギターを床に叩きつけて出した衝撃音もインパクトが強いが、このサウンドエフェクトは大野さんが音楽を手がけた劇場アニメ『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)で流用された。</p>
<p><img decoding="async" class="aligncenter wp-image-9656 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/09/inugami2.png" alt="犬神家の一族のワンシーン・イラスト(一族を前に遺言状を読み上げる弁護士)" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/09/inugami2.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/09/inugami2-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　ミッドテンポのフュージョン・ナンバー「仮面」は、エキゾティックなアコースティック・ギターが素晴らしい。フェンダー・ローズのコンピングも効果的だ。フリー・ジャズが全開する「終焉」は、映画でも使用された。ローズとウィンドチャイムのデュオ「愁いのプロローグ」は、透明感が際立つインタールード。８分の６拍子のロック・チューン「憎しみのテーマ」は、アコースティック・ピアノの内部奏法とブルージーなアドリブがビターな味わいを醸し出している。本編でも使用されたコード進行の美しい「瞑想」は、アコースティック・ギターとフェイズシフトされたローズの音色が清涼感を生んでいる。その後、チェンバー・ミュージック風の「湖影」テーマ曲のスローなヴァリエーション「祈り」アコースティック・ギターがフラメンコからジャズへ転換するクールな「受難の血」とつづく。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　これらの３曲は劇中音楽とは異なるトラックだが、作品の世界観はしっかり伝わってくる。さらに、オーボエ、ハープ、ストリングスが重厚でありながら爽快な感動を喚ぶ「幻想」は、映画の終盤でアウトロの一端のみが使用された。そしてアルバムは「愛のバラード」の別ヴァージョン、主旋律を奏でるダルシマーがピアノ演奏に差し替えられた「孤独」で締めくくられる。全体的な印象は大野さん自身も述べているとおり、サントラ盤というよりは<strong>横溝正史</strong>の世界観が音で再現されたイメージ・アルバムといった感じだ。そういえばオリジナルのLPレコードには、サウンドトラックという記載がどこにもなかった。この不朽の名作、多くのファンから長年愛されつづけ、2018年にはビクターエンタテインメントから、紙ジャケットが採用されオリジナルのLPレコードが忠実に再現された仕様のCDが発売された。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　さて、ここからは少しハナシを変えさせていただく。1976年に製作された『犬神家の一族』は、ミステリー映画史、延いては日本映画史に残る傑作として現在も非常に高い評価を受けているが、公開から30年後の2006年におなじ監督、主演コンビで再映画化されている。<strong>市川崑</strong>といえば、生涯にわたりセルフリメイクを繰り返した映像作家として知られる。もっとも有名なのは『ビルマの竪琴 第一部・第二部』(1956年)を『ビルマの竪琴』(1985)として再映画化したケースだろう。ほかにも映画『恋人』(1951年)を1959年に日本テレビ系列でドラマ化、やはり映画『足にさわった女』(1952年)を1960年に日本テレビ系列でドラマ化、さらに映画『黒い十人の女』(1961年)を2002年にフジテレビ系列でドラマ化、逆に日本テレビ系列のテレビドラマ『破戒』(1961年)を1962年に映画化している。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　市川監督がセルフリメイクを繰り返すのは、むろん自作への思い入れの強さからなのだろうが、同時にいくばくかの不満も抱えていて、それが監督にとってスッキリと諦められない心残りとなっていたのだろう。<strong>市川崑</strong>というひとは、観客にとっては些細なことでも、自分が納得していなければ、それを修正したいという思いを常に抱いていたのではなかろうか。そういう気持ちはよくわかる。映像作家に限らず意識の高いクリエイターは、多かれ少なかれ自作の細部をブラッシュアップしたいと、絶えず思うものなのである。おそらく市川監督は、文句のない箇所ではオリジナルを忠実に再現し、気の済まない箇所には新たなアプローチを加えていたのだろう。そして、実は監督がその作業を楽しんでいるかのようにさえ、ぼくには思われて仕方がないのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　とはいっても、セルフリメイクが成功しているかどうかはハナシが別で、結論から云うと、市川作品のファンであるぼくでも『犬神家の一族』のリメイクは失敗だったと思う。監督は折に触れて「キャスティングが終わったとき、演出は70パーセント終わっている」というような言及をするのだが、2006年版『犬神家の一族』は、そもそもキャスティングの時点でつまづいているように思われる。再映画化に際してプロデューサーを務めた<strong>一瀬隆重</strong>の意向がかなり反映されているように思われるのだが、率直に云って、1976年版よりも2006年版のほうがいいと思われる配役は皆無である。たとえば、原作では「この世のものとは思えない」と描写された美しさを誇るヒロイン、野々宮珠世といえば、なんといっても旧作の<strong>島田陽子</strong>だろう。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　あの透き通るような美しさと凛とした上品さを漂わせる珠世役は、申し訳ないが新作の<strong>松嶋菜々子</strong>にとって少々荷が重過ぎたのではなかろうか。また、両作で金田一耕助を演じた石坂さんでさえ、卓越した表現力の持ち主であるとはいえすでに65歳、かつての軽快さは失われ、いささか動作が鈍い。旧作で金田一にほのかな恋ごころを覗かせる那須ホテルの女中、はるを新作では<strong>深田恭子</strong>が演じたが、金田一との関係性はもはや祖父と孫娘のようなものにさえ映る。そういえば、劇場でぼくのまえの席に座っていた10代の女の子が、一緒に来た母親に「金田一を演っているひとって、<strong>武田鉄矢</strong>？」と訊いていた。確かに、そう見えなくもない。おそらく1976年版は未見であろう彼女にとって、2006年版『犬神家の一族』は果たして面白い映画だったのだろうか。訊いてみたくなる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc4">1976年版のフィルムスコアリング手法で録音したトラックの一部を収録</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　むろんぼくが『犬神家の一族』のリメイクが失敗と捉えるのは、キャスティングのミス以外にも理由はある。ここでそれをいちいち列挙する余地はないが、これだけは云っておきたい。それはラストシーンの違いについてだが、事件を解決した金田一が皆から見送られることを厭い発車寸前の汽車に飛び乗るという、旧作の潔い幕切れがいかにも市川作品らしくて、ぼくは大好きなのだ。ところが新作は、金田一が田園風景のなかを徒歩で去っていく場面で終わる。おまけに彼は一度振り返り、あたかも観客へ向けて別れの挨拶をするかのごとくお辞儀をする。これは、甚だ野暮ったく感じられた。そしてこのときぼくは、監督の公私にわたるパートナー、脚本家、そして演出に対する生産的な助言者でもあった<strong>和田夏十</strong>亡きあとの市川作品が、ことごとく精彩を欠いていることを、あらためて実感したのだった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　市川崑は日本映画においてぼくのもっとも敬愛する監督だが、結局のところ91歳の視点で修正された『犬神家の一族』については、結果的に趣味の域を出ることができなかった作品と捉えられた。ただブラッシュアップされた箇所もある。それはオープニング・クレジットで流れる「愛のバラード」についてなのだが、1976年版では不自然というより無惨と云うべき編集が施されていたのに対し、2006年版ではスムースなトリミングが講じられていた。この新作における<strong>大野雄二</strong>のクレジットは、“テーマ音楽”となっているが、実際は「愛のバラード」以外にも、映画の序盤にあたる珠世が湖で危機に瀕するシーンで大野さんのスコアがそのまま使用されている。また、それよりまえの金田一が那須市に現れるシーンで流れるトラックは、本人のアレンジではないが大野さんの曲のモティーフが採用されている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　きっと市川監督も30年のときを経て、比類なき旧作の音楽が映画本編だけでなく映画史にさえ及ぼした波及効果を実感し、大野サウンドを是認するに至ったのではなかろうか。とはいっても2006年版の音楽は、作曲家でピアニストの<strong>谷川賢作</strong>が担当している。谷川さんは『鹿鳴館』(1986年)以降『かあちゃん』(2001年)を除く、すべての市川作品の音楽を手がけたひと。ジャズ・ピアニストの<strong>佐藤允彦</strong>に師事したということだが、氏の音楽にジャズっぽさはあまり感じられない。どちらかというと、ニューエイジ・ミュージック系のミュージシャンと云えるかもしれない。シンセサイザーを主軸とした、ある意味で背景音楽あるいは環境音楽のような谷川さんのスコアは、アートオリエンテッドな市川監督にとって、理想の映画音楽なのだろう。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-9657 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/09/inugami3.png" alt="犬神家の一族のワンシーン・イラスト(湖面から突き出した逆立ち死体の脚)" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/09/inugami3.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/09/inugami3-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　ただ谷川さんのアンダースコアは、飽くまで情景描写および心理描写に徹しており、ハッキリ云って大野サウンドのような推進力をもたない。それでもエピックレコードジャパンからリリースされた2006年版『犬神家の一族』のサウンドトラック・アルバムは、十二分に購入する価値のある音盤である。この２枚組CDアルバムは、DISC 1には谷川さんによる2006年版のスコアが、DISC 2には既発の大野さんによる1976年版のトラックが、それぞれ収録されている。なおこの商品化にあたり、DISC 2には新たに８曲のボーナス・トラックが追加されたのだが、実はこの点がもっとも意義深い。この件に関しては後述するので、まずは「愛のバラード」のメロディが音楽全体の軸に据えられ構築された、谷川さんのスコアについて触れておく。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　DISC 1に収録されている谷川さんによるスコアは、全部で46曲。よってどのトラックも短尺であり、飽くまで背景音楽としてシーンごとの雰囲気を醸成する役割を果たすことに終始。いわば典型的かつ及第点のサウンドトラックではあるが、鑑賞用音楽の水準には達していない。谷川さんのソロ・ピアノで演奏された「松子のテーマ (ピアノスケッチ)」と「珠世のテーマ (ピアノスケッチ)」は、比較的長めのリリカルなトラックだが、フィルムスコアではなくアルバムの体裁を整えるために用意されたものだろう。このピアノ演奏は新宿区西早稲田のアバコクリエイティブスタジオにて録音された。それ以外のほとんどのトラックは、杉並区成田東に所在する谷川さんのアトリエ、TAMスタジオで吹き込まれた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　粛々と演出意図を効果的に補完するような楽曲がつづくなかにも、疾走感に富んだ「金田一走る」緊張感が漂う「車中にて」瞑想的な「碧瑠璃の湖面」透きとおるような色彩感をもつ「国破れて山河あり」形而上的な静謐を湛えた「観音岬の朝」牧歌的な「事件解決」飄逸な「一本道」といった、印象的なトラックもいくつかあるのだが、なぜか映画本編では積極的に使用されていない。そんななか「金田一の休日」では、大野さんの「愛のバラード」のメロディが正弦波のシンセ・サウンドによって静かに奏でられる。いちばんの聴きどころは、ラストシーンからエンドクレジットにかけて使用された「エンディング」で、大野さんの「愛のバラード」や「怨念」に谷川さんの「松子のテーマ」が挟み込まれたアレンジの妙味、そして生演奏の臨場感が際立つ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　この「エンディング」は、かつて渋谷区桜丘町にあったYAMAHAの伝説的なレコーディング・スタジオ、渋谷エピキュラスで録音された。なお、DISC 1の掉尾には、女性シンガーソングライター、<strong>アンジェラ・アキ</strong>の作詞作曲および歌唱による「On&amp;On (サウンドトラックversion)」が収録されている。いい曲なのだけれど、飽くまでイメージソングであって、映画本編とはなんの関連性ももたない。そしてなんといっても、この２枚組CDの最大の目玉といえば、DISC 2に新たに追加された８曲のボーナス・トラックだろう。これらはさきにも触れたとおり、大野さんが市川監督の意向に沿って、あらためてフィルムスコアリング手法で録音したトラックの一部。レコーディングは1976年９月16日、18日に、前述のアオイスタジオにおいて行われた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　まず「愛のバラード (Movie Version~Main Title)」は、オープニング・クレジットの尺に合わせて演奏されたせいか、原曲よりテンポが微妙に速い。アレンジのエラボレートネスとサウンドのダイナミクスという点でも、きわめて劣る。結果的に本編では、EPレコードのヴァージョンがトリミングされ使用された。つづく「那須の金田一耕助」は、劇中で金田一耕助のライトモティーフとして使われた曲、未使用のアップビートな曲、そして金田一が那須ホテルから湖を眺めるシーンなどで使用された曲のメドレーとなっている。３曲目の「惨劇」では、不穏な空気を生み出すいくつかの背景素材に交じって「愁いのプロローグ」「呪い住みし館」の別ヴァージョン、さらに犬神佐清の帰還シーンのショッキングなキューなどが展開される。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　さらに「愛と憎しみの狭間」は「瞑想」の別ヴァージョンだが、映画の後半で犬神松子と佐清とが対面するシーンで使われた。５曲目の「憎しみのテーマ (Movie Version)」は、青沼静馬が松子に正体を明かすシーンで使用された。ロッキッシュなテーマ部は未使用である。後半は佐清が珠代に別れを告げにくるシーンで使用された主題曲のヴァリエーション。短いながら、チェロのソロとストリングスとによるドラマティックな展開に胸が熱くなる。６曲目の「祈り (「愛のバラード」より・Movie Version)」は、金田一が那須市を去る日のシーンで使用された曲。哀愁を帯びながらも爽やかさを感じさせる。７曲目の「妄執の果て」では、冒頭の犬神佐兵衛の臨終シーンをはじめ随所で使われた重厚で緊迫感のある曲から、終盤の松子と珠世との会話シーンで使用された「湖影」の別テイクへ──。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　さらにこのトラック、ソロ・ピアノによる「愁いのプロローグ」へとつづくのだが、なぜかこの曲は、シンプルかつトランスペアレントな印象深いナンバーであるのにもかかわらず、LPレコードのヴァージョンともどもまったくの未使用となっている。８曲目の「孤独 (「愛のバラード」より・Movie Version-Finale)」は一部分だけだが、さきの「祈り (「愛のバラード」より・Movie Version)」とミックスされて、エンディングで使用された。以上は、1976年版『犬神家の一族』の音楽を立体的に楽しむための非常に貴重な音源と云えるが、2006年版でも使用された珠世が湖で危機に瀕するシーンで流れる音楽をはじめ、いまだ日の目を見ない曲もある。不世出の音楽家、<strong>大野雄二</strong>の出世作品ということもあり、今後の掘り起こしを期待する次第である。</p>
<p>&nbsp;</p>
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<p class="wp-block-paragraph">最後まで読んでいただき、ありがとうございました。</p>
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		<title>大野雄二 = Yuji Ohno, You &#038; Explosion Band / Made In Y.O. (2005年)</title>
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		<dc:creator><![CDATA[kimama]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 24 May 2026 06:55:06 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[Soundtrack]]></category>
		<category><![CDATA[Yuji Ohno (大野雄二)]]></category>
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					<description><![CDATA[追悼 大野雄二──日本が生んだミュージック・シーンの至宝による珠玉の名曲の数々が本人の手によって新録音されたアルバム『Made In Y.O.』]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h2><span id="toc1">追悼 大野雄二──日本が生んだミュージック・シーンの至宝による珠玉の名曲の数々が本人の手によって新録音されたアルバム『Made In Y.O.』</span></h2>

<div class="wp-block-cocoon-blocks-label-box-1 label-box block-box has-border-color has-ex-a-border-color">
<div class="label-box-label block-box-label box-label"><span class="label-box-label-text block-box-label-text box-label-text">recommendation</span></div>
<div class="label-box-content block-box-content box-content">
<p class="wp-block-paragraph"><img loading="lazy" decoding="async" class="wp-image-703 alignleft" style="margin-bottom: 0px;" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png" alt="" width="101" height="92" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-300x274.png 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records.png 640w" sizes="(max-width: 101px) 100vw, 101px" /><em>大野雄二 = Yuji Ohno, You &amp; Explosion Band / Made In Y.O. (2005)</em></p>
<p style="text-align: right;"><em>Today&#8217;s Tune : LOVE SAVES THE EARTH</em></p>
</div>
</div>

  <div id="toc" class="toc tnt-disc toc-center tnt-disc border-element"><input type="checkbox" class="toc-checkbox" id="toc-checkbox-4" checked><label class="toc-title" for="toc-checkbox-4">目次</label>
    <div class="toc-content">
    <ol class="toc-list open"><li><a href="#toc1" tabindex="0">追悼 大野雄二──日本が生んだミュージック・シーンの至宝による珠玉の名曲の数々が本人の手によって新録音されたアルバム『Made In Y.O.』</a><ol><li><a href="#toc2" tabindex="0">ジャズ・ピアニストとしてプロの道を歩み出すが、ほどなく作曲家へ転身</a></li><li><a href="#toc3" tabindex="0">2000年代に入ってから本格的にジャズ・プレイヤーとして復帰する</a></li><li><a href="#toc4" tabindex="0">大野さん自身の意向により、単なるベスト・アルバムにはなっていない</a></li></ol></li></ol>
    </div>
  </div>

<h3><span id="toc2">ジャズ・ピアニストとしてプロの道を歩み出すが、ほどなく作曲家へ転身</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　音楽家、<strong>大野雄二</strong>がこの世を去った。ついにこのときが来てしまったのか──。突然の訃報は去る５月13日、大野さんの公式Xなどを通じて伝えられた。発表によると、大野さんは2026年５月４日午前６時８分、老衰のため東京都の自宅で永眠された。直前まで普段と変わることなく過ごされていて、就寝中に苦しむことなく安らかに旅立たれたとのこと。享年84歳だった。葬儀および告別式は近親者で行われ、喪主はお姉さんの<strong>栗田和子</strong>さんが務められたが、後日、お別れの会が開かれるという。さらに同月14日、大野さんの公式Xが更新され、その内容が反響を呼んでいる。そこには「では又、バイビー」と綴られ、笑顔でカメラに向かって手を振る大野さんの写真が掲載されている。気さくな大野さんらしいメッセージだが、なぜかぼくのこころは和むことはなかった。いまはただ、謹んで哀悼の意を表するばかりである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　大野さんは間違いなく、ぼくがもっとも影響を受けた日本の音楽家だ。このブログでも大野さんの作品を何度となく採り上げさせていただいた。云うまでもなく大野さんは、ジャズ・ピアニストとしてキャリアをスタートさせ、その後、映画『犬神家の一族』(1976年)やテレビアニメ『ルパン三世』第２シリーズ(1977年 – 1980年)の音楽を手がけ、作曲家として広く知られるようになった音楽家。1941年５月30日、スタジオジブリのアニメ映画『おもひでぽろぽろ』(1991年)の舞台となったローマ風呂で知られる、静岡県熱海市のホテル大野屋の次男坊として生まれた大野さんは、中学時代にジャズに目覚め、高校時代にはバンド演奏を開始。さらに<strong>慶應義塾大学ライト・ミュージック・ソサイェティー</strong>で活躍し、<strong>鈴木宏昌</strong>、<strong>佐藤允彦</strong>とともに“慶應三羽烏”として勇名を馳せた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　大学卒業後はクラリネット奏者、<strong>藤家虹二</strong>のクインテットに加入、プロ・ミュージシャンとしての道を歩み出す。しかしながら、モダン・ジャズのみに集中することを決意した大野さんは、１年ほどでこのスウィング系バンドを脱退。しばらくフリーのプレイヤーとして活動したのち1965年、今度は<strong>白木秀雄クインテット</strong>に加入。同バンドにおいて大野さんはプレイヤーにとどまらず、すでにアレンジャーとしても活躍した。その後、<strong>大野雄二トリオ</strong>、<strong>日野皓正クァルテット</strong>、<strong>富樫雅彦=鈴木弘クインテット</strong>などで演奏するとともに、<strong>マーサ三宅</strong>、<strong>笠井紀美子</strong>、<strong>弘田三枝子</strong>らのアカンパニストを務め、ジャズ・ミュージシャンとしての地位を確立。1971年には<strong>池田芳夫</strong>(b)、<strong>岡山和義</strong>(ds)をサイドに据えたトリオでレコーディングを行ったが、その音源こそ<strong>大野雄二</strong>の初リーダー作『<em>ミスター・ハピゴン</em>』(1973年)である。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-9191 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/05/yo1.png" alt="グランドピアノとユリの花束" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/05/yo1.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/05/yo1-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　奇しくもこのアルバムの吹き込みが行われたころから、大野さんはジャズ・プレイヤーと作曲家との二足の草鞋を履くようになり、次第にジャズ・シーンから遠ざかっていく。氏は初リーダー作をものする以前に、すでにNHKのドキュメンタリー風ドラマ『ナタを追え～朝日新聞東京版“捜査員”より～』(1970年)の音楽を手がけていたが、広く知られる大野サウンドのはじまりは、なんといっても<strong>石立鉄男</strong>主演による、日本テレビ系列で1970年代に放映されたホームコメディドラマ・シリーズの第１作『おひかえあそばせ』(1971年)だろう。さらにそれは、日本テレビ系列の『火曜日の女』(1969年11月４日 – 1972年3月27日)、同系列の昼ドラ『愛のサスペンス劇場』(1975年３月31日 – 1977年３月４日)、NHKの『少年ドラマシリーズ』(1972年１月１日 – 1983年10月11日)といったドラマシリーズで、お茶の間に浸透した。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　大野さんが圧倒的な存在感を放ったのは、1970年代の後半のこと。大ブームとなった角川映画の第１作『犬神家の一族』および第２作『人間の証明』(1977年)、そしてテレビアニメ『ルパン三世』の音楽を手がけたことにより一躍脚光を浴びた。ことに1978年は、スゴいことになっている。サウンドトラック・アルバムだけでも『<em>ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック</em>』『<em>大追跡</em>』『<em>24時間テレビ 愛は地球を救う</em>』『<em>野性の証明</em>』と立てつづけにリリースされていき、クリスマスまえには早くも『<em>ルパン三世・２</em>』が発売された。しかもその間隙を縫って、大野さんにとってはじめての本格的フュージョン・スタイルのリーダー作『<em>スペース・キッド</em>』が制作され、氏とは長年コンビを組んだブラジル、サンパウロ出身のシンガー、<strong>ソニア・ローザ</strong>の4thアルバム『<em>サンバ・アモール</em>』のレコーディングも行われている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　サウンドトラック・アルバムこそリリースされなかったものの、テレビや映画を賑わせた大野さんの音楽はまだまだある。1978年はほんとうに、<strong>大野雄二</strong>一色の年だった。ご当人は寝食を忘れるほど仕事に没頭していたのだろう、どれもクオリティの高い作品ばかりだ。テレビドラマだと、日本テレビ系列では「土曜グランド劇場」の１本『貝がらの街』(２月18日〜４月22日)、「金曜劇場」の１本、<strong>西村寿行</strong>原作『犬笛 – 娘よ、生命の笛を吹け -』(７月７日〜８月25日)、またNHK「銀河テレビ小説」の１本、<strong>森村誠一</strong>原作『凶水系』(３月13日〜３月24日)、そしてTBS系列で放送された3時間ドラマ、<strong>松浦行真</strong>原作の『風が燃えた』(８月29日)などがある。なおこれらのテレビドラマのうち『貝がらの街』と『犬笛 – 娘よ、生命の笛を吹け -』は、主題曲のシングル・レコードが発売された。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　個人的には1978年を“ニッポン<strong>大野雄二</strong>年”と定めたい。補筆すると映画では、<strong>松田優作</strong>主演、<strong>村川透</strong>監督による“遊戯”シリーズのうち『最も危険な遊戯』(4月８日)と『殺人遊戯』(12月２日)が公開されている。ともに<strong>小林旭</strong>主演、<strong>鈴木則文</strong>監督による『多羅尾伴内』<strong>舘ひろし</strong>主演、<strong>長谷部安春</strong>監督による『皮ジャン反抗族』が併映された、東映セントラルフィルム製作のいわゆるプログラムピクチャー。“遊戯”シリーズは3000万円の予算枠で製作された作品ではあったが、思いのほか高評価を得た。当然のごとく公開当時にはサウンドトラック・アルバムなどは発売されなかったけれど、即興演奏が活かされたりオケの代わりにソリーナ・ストリング・アンサンブルが上手く使われたりしたハードボイルドなサウンドは、各方面から称賛された。そして音源は結局、1993年にCD化された。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　以上は飽くまで、大野ワークスの一部である。際限がないので、これ以上はその作品を枚挙することは控えさせていただくが、当時、<strong>大野雄二</strong>という音楽家がいかにときのひとだったかはおわかりいただけたであろう。かく云うぼくも、おそらく盆と正月が一緒に来たような状況にあったであろう大野さんに、あらためて「おつかれさまでした」と云いたい気分になってくる。ここではテレビドラマと映画音楽にしか触れなかったが、大野さんは、明治乳業「レディーボーデン」や明治製菓の「きのこの山」をはじめとするCM音楽を星の数ほど作曲しているし、シティ・ポップや歌謡曲、ゲーム音楽、ユニークな例としてはプロレスや競輪のテーマ曲なども手がけている。この場でそれらを列挙することは不可能だが、大野さんは間違いなく日本を代表するオールラウンドな音楽家と云える。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc3">2000年代に入ってから本格的にジャズ・プレイヤーとして復帰する</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　1970年代から長らくサウンド・クリエイターとして大いに腕を振るった大野さんだが、ときおりクラブに姿を現しジャズ・スタンダーズを弾いたりもしていた。1990年代のことだが、ぼくは銀座にあったサテンドールという小規模なクラブで、ピアノ・トリオで出演していた大野さんと、おハナシする時間をいただいたことがある。タオルを首からさげたポロシャツ姿の大野さんは、セットの合間にトマトジュースやオレンジジュースを飲みながら、さばさばした感じで音楽のハナシをされていた。そのざっくばらんな語り口も然ることながら、音楽に対する博覧強記ぶりに驚かされた。自然体で接していただいているのにもかかわらず、青二才のぼくは大野さんに一種、畏怖の念すら覚えたもの。ほんとうに、いい思い出である。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それはさておき、大野さんは2000年代に入ってから本格的にジャズ・プレイヤーとして復帰する。そのキッカケとなったのは、1999年にスタートした“LUPIN THE THIRD「JAZZ」”と銘打たれたジャズ・アルバムのシリーズだった。どのアルバムもハード・バップ系のピアニスト、<strong>レッド・ガーランド</strong>へのリスペクトを感じさせる、<strong>大野雄二トリオ</strong>が主幹をなす作品だった。このころの大野さんのピアノ・プレイには、ブロックコード奏法をはじめとする、まさにガーランドを彷彿させる展開が垣間見えるようになった。なによりもアドリブが、依然としてファンキーではあるものの、前述の『<em>ミスター・ハピゴン</em>』のそれと比べるとずいぶんシンプルになった。あたかも即興演奏の道理、ひいては音楽の真理みたいなものを見極めたかのごとく、ひとつひとつの音を丁寧に弾いていたのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　大野さんが、この“LUPIN THE THIRD「JAZZ」”のシリーズで自己の音楽性のルーツを辿っていったとき、次に行き着いたのは<strong>ホレス・シルヴァー</strong>が統率していたころの<strong>ザ・ジャズ・メッセンジャーズ</strong>と思われる。むろん2006年に結成された<strong>Yuji Ohno &amp; Lupintic Five</strong>の演奏では、ハード・バップのスタイルがそのまま再現されるのではなく、大野さんが影響を受けたあらゆる音楽の要素が盛り込まれた、新しい感覚のコンボ・スタイルが展開された。現にこのバンドのレパートリーには、４ビートのみならず、ジャズ・ロックやフュージョンが盛んに飛び出してくる。その点、現代のジャズ・シーンにおいて稀有なバンドと云える。このバンドは2016年、メンバーチェンジが行われるとともに、新たにハモンド・オルガン奏者が加えられ、<strong>Yuji Ohno &amp; Lupintic Six</strong>へと進化した。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-9192 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/05/yo2.png" alt="グランドピアノとストップウォッチ" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/05/yo2.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/05/yo2-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　結局このバンドは、<strong>Yuji Ohno &amp; Lupintic Five</strong>時代も含めると18年と半年もの間、活動が継続された。ただその間、2022年３月に大野さんが体調不良により入院し、しばらく療養に専念することになり、バンドは活動休止状態となった。しかしながら、2024年５月30日(大野さんの誕生日)に活動を再開。大野さんのオンステージはないものの、バンドは<strong>Lupintic Six with Fujikochans Produced by YUJI OHNO</strong>として、港区赤坂のビルボードライヴ東京において２セットの公演を果たした。バンドは同年の10月14日、恵比寿ザ・ガーデンホールにて開催されたEBISU JAM 2024にも出演した。大野さんは、復帰後は演奏に参加せず、アレンジとプロデュースに専念していたが、氏の音楽を創造することへの並々ならぬ情熱が感じられた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ということで、大野さんの来歴を駆け足でお伝えしてきたが、まったく語り切れていない。その仕事量の多さから、このブログではどうコトバを尽くしても一部始終をお伝えすることは不可能と云える。もしこの拙文から、<strong>大野雄二</strong>という音楽家の奥深さや素晴らしさが伝わらなかったら、それはひとえに筆者であるぼくの責任である。大野さんは間違いなく、日本が生んだミュージック・シーンの至宝なのだから──。そんな思いもあって、今回は大野さんの珠玉の名曲の数々が、ご本人の手によって新録音されたアルバム『<em>Made In Y.O.</em>』(2005年)をご紹介させていただき、こころから氏へ哀悼の意を捧げたいと思う。むろんこれが大野サウンドのすべてではないけれど、一面の真実として極上の音楽であることは間違いない。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　このアルバムでは、大野さんの歴代の楽曲はもちろんのこと、書き下ろしの新曲も２曲収録されており、計20曲が10曲ずつに分けられた２枚組CDの豪華ボックス仕様となっている。CD盤とともにデータブックおよびフォトブックも同梱されており、往年の大野サウンドのファンだけでなく、はじめて大野さんの音楽に触れるかたでも手軽に楽しめる作りなので、ぜひ手にとっていただきたい。演奏は<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>となっているが、このクレジット、大野さんがその全盛期に関わった諸々の音盤で散見されたので、懐かしく思う向きも多いだろう。このバンド名義はもともと、NTVM(日本テレビ音楽)の<strong>飯田則子</strong>(故人)がエグゼクティヴ・プロデューサーを務める作品にのみ使用されていたものなのだが、めでたく復活の運びとなった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　レコーディングの正確な年月日は不明だが、大野さん自身が３か月レコーディングに没頭したと語っていること、アルバムの発売が2005年７月21日であることなどを勘案すると、アルバム制作は2005年の春から初夏にかけて行われたものと思われる。レコーディング・スタジオは『ルパン三世』第２シリーズのサウンドトラックなどの吹き込みでお馴染みの、港区麻布台のサウンド・シティ・スタジオ、千代田区四番町のサウンドインスタジオ。レコーディング・エンジニアを務めたのは、音楽制作プロダクション、ジェニュインの代表者である<strong>三浦克浩</strong>。三浦さんはもと日本コロムビアのミキサーで、大野さんの作品では、その昔『<em>スペースコブラ オリジナル・サウンドトラック</em>』(1982年)のレコーディングとミキシングを担当。2000年代以降、大野サウンドにおいてなくてはならない存在となった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　レコーディングには数え切れないほどのミュージシャン(総勢100名を超えるとのこと)が参加しているが、一応、ゲストアーティストも含めて可能な限り列挙してみようと思う。抜けや漏れがあったら、お許しいただきたい。リズム・セクションは、<strong>大野雄二</strong>(key)、<strong>永田一郎</strong>(org)、<strong>吉田潔</strong>(synth)、<strong>梶原順</strong>(g, ukl)、<strong>杉本喜代志</strong>(g)、<strong>俵山昌之</strong>(b)、<strong>渡辺直樹</strong>(b)、<strong>市原康</strong>(ds)、<strong>則竹裕之</strong>(ds)、<strong>川瀬正人</strong>(perc)、<strong>仙道さおり</strong>(perc)、<strong>矢坂順一</strong>(perc)、<strong>大井貴司</strong>(vib)、<strong>西脇辰弥</strong>(hmc)、<strong>上妻宏光</strong>(shamisen)となっている。つづいてサクソフォーン以外のウッドウィンズは、<strong>旭孝</strong>(fl, Ocarina)、<strong>田部井雅世</strong>(fl)、<strong>木津芳夫</strong>(fl)、<strong>斎藤寛</strong>(fl)、<strong>篠原猛</strong>(fl)、<strong>中川昌三</strong>(fl, afl, bfl)、<strong>西沢幸彦</strong>(fl)、<strong>比護いずみ</strong>(fl, afl)、<strong>星野正</strong>(cl)、<strong>庄司知史</strong>(ob)である。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　サックス・セクションは、<strong>山口真文</strong>(ss, ts)、<strong>近藤和彦</strong>(as, ts)、<strong>ロバート・ザング</strong>(as)、<strong>山田穣</strong>(as)、<strong>平原まこと</strong>(as, ts, bs)、<strong>アンディ・ウルフ</strong>(ts)、<strong>近藤淳</strong>(ts)、<strong>吉田治</strong>(ts)、<strong>宮本剣一</strong>(ts)、<strong>つづらの敦司</strong>(bs)、<strong>原田忠幸</strong>(bs)、<strong>宮本大路</strong>(bs)。ブラス・セクションは、<strong>奥村晶</strong>(tp)、<strong>岸義和</strong>(tp)、<strong>数原晋</strong>(tp, flh)、<strong>寺島基文</strong>(tp)、<strong>横山均</strong>(tp, flh)<strong>萩原顕彰</strong>(hr)、<strong>藤田乙比古</strong>(hr)、<strong>片岡雄三</strong>(tb)、<strong>佐藤洋樹</strong>(tb)、<strong>鹿討奏</strong>(tb)、<strong>中川英二郎</strong>(tb)、<strong>野々下興一</strong>(tb)、<strong>パトリック・ハララン</strong>(tb)、<strong>広原正典</strong>(tb)、<strong>フレッド・シモンズ</strong>(tb)、ストリング・セクションは、<strong>小林陽一郎グループ</strong>、<strong>篠崎正嗣グループ</strong>が担当。さらに、<strong>朝川朋之</strong>(hp)、<strong>中谷勝昭</strong>(cond)が加わる。余談になるが、ハープは調律費や運搬費で高くつく楽器。つまり本作の吹き込みは、贅が尽くされているのだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc4">大野さん自身の意向により、単なるベスト・アルバムにはなっていない</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　またバック・コーラスは、<strong>伊集加代子</strong>、<strong>斉藤妙子</strong>、<strong>佐々木久美</strong>、<strong>広谷順子</strong>が担当。そしてフィーチュアリング・ヴォーカリストとして、<strong>石井竜也</strong>、<strong>サーカス</strong>、<strong>タケカワユキヒデ</strong>、<strong>トミー・スナイダー</strong>、<strong>DOUBLE</strong>が参加している。この錚々たる顔ぶれには、大御所から若き実力派まで、とにかく日本のトップアーティストが集結したという印象を受ける。プロデュースとアレンジは、すべて大野さんが手がけている。云うまでもなく、このCDに収録されている20曲はすべて氏のペンによるものである。アレンジの特色としては、比較的有名な曲では敢えてオリジナルとは異なるアプローチがなされていること、それに反して当時音盤ではなかなか聴くことができない楽曲はオリジナルに近いスタイルがとられていることが挙げられる。単なるベスト・アルバムにはしないという、大野さん自身の意向によるものだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　では簡単ではあるが、各曲について触れていこう。アルバムは、お馴染みのテレビアニメ『ルパン三世』オープニング・テーマ 「ルパン三世のテーマ &#8217;80」(2005 version)からスタート。オリジナルは、アルバム『<em>ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック３</em>』(1979年)に収録されているが、あの有名なテーマ曲のビッグ・バンド・ジャズ・ヴァージョンである。昔とった杵柄で、大野さんのフルバンドのアレンジは見事のひとこと。ここでは原曲のスウィング感がキープされながら、さらにシンセやストリングスが加えられ、よりダイナミックなサウンドが展開されている。オリジナル版の<strong>松石和宏</strong>によるマレット捌きも鮮やかだったが、ニュー・ヴァージョンにおける<strong>大井貴司</strong>のプレイもなかなかのものだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　角川映画第３弾『野性の証明』(1978年)の主題歌「戦士の休息」では、もと<strong>ズー・ニー・ヴー</strong>の<strong>町田義人</strong>が歌った、ロッキッシュかつリフレッシングなバラードを、ここではもと<strong>米米CLUB</strong>の<strong>石井竜也</strong>が熱唱する。原曲よりいくぶんポップでゴージャスなアレンジが、石井さんのエモーショナルなヴォーカル・パフォーマンスによくマッチしている。オンワードのファッションブランド、ジェーンモアのCF曲 「ミスティ・トワイライト」は、シティ・ポップ・シンガー、<strong>麻倉未稀</strong>のデビュー曲でもある。オリジナルは、彼女のファースト・アルバム『<em>SEXY ELEGANCE</em>』(1981年)に収録されている。ここでは大野さんのピアノが主軸に据えられた、ボサノヴァ・インストゥルメンタルとなっている。メロディアスなピアノのアドリブが、実に軽妙である。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-9193 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/05/yo3.png" alt="グランドピアノと大野雄二の肖像画" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/05/yo3.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/05/yo3-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　アルバム『<em>ルパン三世・２</em>』に収録されている、<strong>サンディー＆ザ・サンセッツ</strong>の<strong>サンドラ・ホーン</strong>が歌った「ラヴ・スコール」は、R&amp;B系女性シンガー、<strong>DOUBLE</strong>がカヴァー。ゆったりしたテンポ、転調が活かされたソングストラクチュアによって、原曲よりビルドアップする。ソウルフルなヴォーカル・パフォーマンスが感動的だ。<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>のオリジナル・アルバム『<em>フル・コース</em>』(1983年)からの「ROUTE 246」は、バウンシーなグルーヴは原曲どおりだが、ここではホーン・セクションが加えられている。ピアノとソプラノ・サックスとがジャジーなソロを展開する。なおこの曲、ブラジル出身のフュージョン・バンド、<strong>アジムス</strong>の「ディア・リマーツ」という曲からの影響が強い。興味のあるかたは、ぜひお試しあれ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　角川映画『犬神家の一族』の主題曲「愛のバラード」は、原曲の骨格や雰囲気はそのまま活かされているが、<strong>上妻宏光</strong>の三味線によるテーマ部とソロが繰り広げられるダブル・タイムが、なんともユニーク。オリジナル版で印象的な打弦楽器ハンマード・ダルシマーは、ここでは使用されていない。シングル盤のみが発売された、日本テレビ系アニメ『海底超特急マリンエクスプレス』(1979年)の主題歌「THE MARINE EXPRESS」は、16ビートのディスコ・フュージョン。ここでは原曲のヴォーカリスト、<strong>トミー・スナイダー</strong>、そして<strong>タケカワユキヒデ</strong>といった<strong>ゴダイゴ</strong>のコンビによるデュエットが楽しい。映画『最も危険な遊戯』からの「メインテーマ」は、低予算故のコンボ・スタイルから、ここではメインのミュート・トランペットにホーンズ＆ストリングスが加えられた、贅沢なアレンジのジャズ・ナンバーに様変わりしている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　NHK連続テレビ小説『マー姉ちゃん』(1979年)の主題曲「マー姉ちゃん」は、巧みなコード進行と跳ねるようなリズムが<strong>バート・バカラック</strong>の曲を彷彿させる。口笛風のシンセ、ウクレレ、クラリネットなどが効果的に使われたハッピーなナンバー。嬉しいエクステンデッド・ヴァージョンである。書き下ろしの新曲「Made In Y.O.」は、３部構成の大野版シンフォニック・ジャズ。知的で陰影に富んだ雰囲気は、<strong>クラウス・オガーマン</strong>の「神々の出現そして不在」という曲を連想させる。そして以下は、２枚目のCDとなる。フジテレビ系アニメ『スペースコブラ』(1982 &#8211; 1983)のエンディング・テーマ「シークレット・デザイアー」では、<strong>前野曜子</strong>に替わって<strong>サーカス</strong>がヴォーカルをとっている。よりジャジーなアレンジ、秀逸なコーラス・ワークを楽しむことができる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　日本テレビ系ドラマ『大追跡』(1978年)の主題曲「大追跡のテーマ」は、ブラスによるテーマとストリングスによるコーラスとのコントラストが映えるアップテンポの曲。キャッチーなサウンドの元ネタは、大野さんが敬愛するピアニスト、<strong>ラムゼイ・ルイス</strong>の「スリック」という曲。NHKアニメ『キャプテン・フューチャー』の主題歌「夢の舟乗り」は、オリジナルと同様に<strong>タケカワユキヒデ</strong>が歌っている。フィリー・ソウル風のディスコ・チューンが、ここではヴォーカルも含めてよりソウルフルになっている。アルバム『<em>スペース・キッド</em>』からの「クリスタル・ラヴ」は、原曲どおりやはりフェンダー・ローズのルバート演奏が印象的。ピアノやストリングスによるシネマティックなメロディック・ラインがいかにも大野さんらしい、まさにマスターピースと呼ぶべき１曲だ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　角川映画『人間の証明』の主題歌「人間の証明のテーマ」では、<strong>ジョー山中</strong>に替わって<strong>トミー・スナイダー</strong>がヴォーカリストを務めている。次曲の劇場アニメ『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)の主題歌「炎のたからもの」そしてそのあとのNHKの紀行番組『小さな旅』(1983年 &#8211; 放送中)の主題曲「小さな旅」とともに、もっとも原曲と異なるアレンジが施されている。まず「人間の証明のテーマ」はロック色が薄くなり、どちらかというとメロウ・ソウル調。<strong>西脇辰弥</strong>のハーモニカも新鮮だ。次の「炎のたからもの」は<strong>ボビー</strong>のR&amp;Bテイストのフロウが特徴的なヴォーカル・ナンバーからビッグ・バンド・ジャズのインストゥルメンタルに、さらに「小さな旅」はオーボエが主旋律を奏でるノスタルジックな曲からトロンボーンやアコースティック・ギターがフィーチュアされたボサノヴァ・チューンにアレンジされている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　<strong>石立鉄男</strong>主演によるホームコメディドラマ・シリーズの第５作「水もれ甲介」(1974年 &#8211; 1975年)の主題歌でシングル盤も発売された「水もれ甲介」では、ほぼオリジナルのムードがキープされている。洗練されたポップスの作風は、バカラック・マナーを感じさせる。原曲を歌った、<strong>シンガーズ・スリー</strong>の<strong>伊集加代子</strong>の参加が嬉しい。新曲のビッグ・バンド・スタイルのジャズ・バラード「Jiggy Beans」を挟んで、アルバム『<em>24時間テレビ 愛は地球を救う</em>』収録の「LOVE SAVES THE EARTH」が、アルバムを締めくくる。<strong>アレクサンダー・カレッジ</strong>の「宇宙大作戦のテーマ」を彷彿させる、スペクタクルな曲調が爽快。ここではサンバ・ジ・エンヘード風にリアレンジされているが、ぼくはこのヴァージョンのほうが好き。ということでざっくりとお伝えしたが、本作は<strong>大野雄二</strong>という偉大なる音楽家の足跡を辿る上で格好のアルバムとなっている。ぜひ多くのかたに、手にとっていただきたいものである。</p>
<p>&nbsp;</p>
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<p class="wp-block-paragraph">最後まで読んでいただき、ありがとうございました。</p>
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		<title>大野雄二 / Space Kid (1978年)</title>
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		<dc:creator><![CDATA[kimama]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 15 Mar 2026 07:29:17 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[Fusion]]></category>
		<category><![CDATA[Yuji Ohno (大野雄二)]]></category>
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					<description><![CDATA[ジャズ・ピアニストから作曲家に転身した大野雄二がサウンド・クリエイターとしてはじめて制作した本格的なリーダー・アルバム『スペース・キッド』]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h2><span id="toc1">ジャズ・ピアニストから作曲家に転身した大野雄二がサウンド・クリエイターとしてはじめて制作した本格的なリーダー・アルバム『スペース・キッド』</span></h2>

<div class="wp-block-cocoon-blocks-label-box-1 label-box block-box has-border-color has-ex-a-border-color">
<div class="label-box-label block-box-label box-label"><span class="label-box-label-text block-box-label-text box-label-text">recommendation</span></div>
<div class="label-box-content block-box-content box-content">
<p class="wp-block-paragraph"><img loading="lazy" decoding="async" class="wp-image-703 alignleft" style="margin-bottom: 0px;" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png" alt="" width="101" height="92" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-300x274.png 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records.png 640w" sizes="(max-width: 101px) 100vw, 101px" /><em>Album : 大野雄二 / Space Kid (1978)</em></p>
<p style="text-align: right;"><em>Today&#8217;s Tune : Mayflower</em></p>
</div>
</div>

  <div id="toc" class="toc tnt-disc toc-center tnt-disc border-element"><input type="checkbox" class="toc-checkbox" id="toc-checkbox-6" checked><label class="toc-title" for="toc-checkbox-6">目次</label>
    <div class="toc-content">
    <ol class="toc-list open"><li><a href="#toc1" tabindex="0">ジャズ・ピアニストから作曲家に転身した大野雄二がサウンド・クリエイターとしてはじめて制作した本格的なリーダー・アルバム『スペース・キッド』</a><ol><li><a href="#toc2" tabindex="0">そのジャズ・ピアニスト時代と作曲家への転身</a></li><li><a href="#toc3" tabindex="0">サウンドトラック・アルバムを除くオリジナル・アルバム</a></li><li><a href="#toc4" tabindex="0">サウンド・クリエイターとしての本領が遺憾なく発揮されたアルバム</a></li></ol></li></ol>
    </div>
  </div>

<h3><span id="toc2">そのジャズ・ピアニスト時代と作曲家への転身</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　久々に<strong>大野雄二</strong>のアルバムを採り上げる。云うまでもなく大野さんは、ジャズ・ピアニストとしてキャリアをスタートさせ、その後、映画『犬神家の一族』(1976年)やテレビアニメ『ルパン三世』第２シリーズ(1977年 &#8211; 1980年)の音楽を手がけ、作曲家として広く知られるようになった音楽家。1941年５月30日、スタジオジブリのアニメ映画『おもひでぽろぽろ』(1991年)の舞台となったローマ風呂で知られる、静岡県熱海市のホテル大野屋の次男坊として生まれた大野さんは、中学時代にジャズに目覚め、高校時代にはバンド演奏を開始。さらに慶應義塾大学ライト・ミュージック・ソサイェティーで活躍し、<strong>鈴木宏昌</strong>、<strong>佐藤允彦</strong>とともに“慶應三羽烏”として勇名を馳せた。卒業後はクラリネット奏者、<strong>藤家虹二</strong>のクインテットに加入、プロ・ミュージシャンとしての道を歩み出す。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　モダン・ジャズのみに集中することを決意した大野さんは、１年ほどで<strong>藤家虹二クインテット</strong>を脱退。しばらくフリーのプレイヤーとして活動したのち1965年、今度は<strong>白木秀雄クインテット</strong>に加入。同バンドのレコーディングにおいて大野さんはプレイヤーにとどまらず、すでにアレンジャーとしても活躍したが、ファンキー・ジャズからボサノヴァまで、そのモダンなセンスを発揮した。ピアノのプレイ・スタイルのほうもファンキーかつソウルフルで、そのパフォーマンスはいささか<strong>ホレス・シルヴァー</strong>や<strong>ラムゼイ・ルイス</strong>を彷彿させる。その後、<strong>大野雄二トリオ</strong>、<strong>日野皓正クァルテット</strong>、<strong>富樫雅彦=鈴木弘クインテット</strong>などで演奏するとともに、<strong>マーサ三宅</strong>、<strong>笠井紀美子</strong>、<strong>弘田三枝子</strong>らのアカンパニストを務め、ジャズ・ミュージシャンとしての地位を確立した。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そんな大野さんは、1971年ごろからジャズ・プレイヤーと作曲家との二足の草鞋を履くようになり、次第にジャズ・シーンから遠ざかっていくのだった。1971年といえば、氏が音楽を手がけたテレビドラマ『おひかえあそばせ』の放送が開始された年。<strong>石立鉄男</strong>主演、<strong>松木ひろし</strong>脚本による、日本テレビ系列で1970年代に放映されたホームコメディドラマ・シリーズの第１作だ。ぼくが大野サウンドにはじめて触れたのは、おそらくこのドラマにおいてだろう。その後やはり日本テレビ系列のドラマシリーズ『火曜日の女』(1969年11月４日 – 1972年3月27日)において、ぼくは大野さんの音楽に再会。そのころにはまだ氏の名前を覚えていなかったかもしれないが、そのサウンドに強く惹かれたことはハッキリ覚えている。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-8882 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/03/Spacekid1.png" alt="青空に浮かぶヤギの子ども" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/03/Spacekid1.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/03/Spacekid1-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　ぼくが大野さんの実像についてはじめて知り得たのは、その後大ブームとなった角川映画の第１作『犬神家の一族』(1976年)を劇場で観たときのこと。鑑賞後に購入したパンフレットの巻末に、サウンドトラック・シングルの宣伝広告のページがあった。そこにはレコーディング中の大野さんと、それを訪ねた主演俳優の<strong>石坂浩二</strong>とのツーショットとともに、氏のプロフィールが掲載されていたのである。いまでは信じられないだろうけれど、自宅の住所まで明らかにされていたりして、平和なというかちょっと不用心な時代だったと思い返される。それはともかく、大野さんをジャズ・ピアニストと知ったぼくがときを移さず手にとったのは、<strong>大野雄二トリオ</strong>の『<em>ミスター・ハピゴン</em>』(1973年)というレコードだった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　このレコードが発売されたのは1973年のことだが、<strong>池田芳夫</strong>(b)、<strong>岡山和義</strong>(ds)をサイドに据えたトリオによるレコーディングが行われたのは1971年のことだから、本盤は正真正銘、大野さんの初リーダー・アルバムということになるのだろう。ちなみに、同一のトリオで吹き込まれたレコードといえば、不遇のクラブ・シンガー、<strong>アン・ヤング</strong>の『<em>春の如く</em>』(1975年)くらいのものである。いずれにしても『<em>ミスター・ハピゴン</em>』は、大野さんがジャズ・ピアニストとしてもっとも脂が乗っていた時期の吹き込み。しかしながら皮肉なことに、大野さんは間もなくもちまえの作曲、編曲の才能を活かしてテレビCM、テレビ番組や映画の音楽、ポップ・ミュージックにおける、サウンド・クリエイターとしての活動に専念するようになる。ジャズ・ピアニストとしては、このアルバムに止めを刺した感が強い。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　念のために云っておくと、この『<em>ミスター・ハピゴン</em>』はあっという間に廃盤になってしまったのだが、幸いなことにRCAの“日本のJAZZ 1500”と銘打たれた定価1,500円の廉価盤シリーズの１枚としてリイシューされた。ただその盤は、ジャケットのデザインや曲順はそのままだったが、なぜかアルバム・タイトルが『<em>マイ・リトル・エンジェル</em>』(1976年)に変更された。もしかすると、ジャズ評論家の<strong>岩波洋三</strong>による本作のライナーノーツに、“ハピゴン”がベーシストの<strong>水橋孝</strong>のニックネームであるという記述があるのにもかかわらず、アルバム・タイトルに堂々と掲げられた“ミスター・ハピゴン”を大野さんのことと勘違いする向きが、案外多くあったのかもしれない。いずれにせよ本盤は、それ以降のCD化などにおいて『<em>マイ・リトル・エンジェル</em>』として定着した。 　</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ところで、大野さんは『<em>ミスター・ハピゴン</em>』をレコーディングする以前に、NHKのドキュメンタリー風ドラマ『ナタを追え～朝日新聞東京版“捜査員”より～』(1970年)の音楽を手がけている。おそらく本作が、氏が音楽を担当した最初の映像作品になるのだろう。本格的にこの分野を深めるようになるのは、やはり前述の『おひかえあそばせ』をはじめとする、<strong>石立鉄男</strong>主演によるホームコメディドラマのシリーズからだ。さらに大野さんは同時期に、さきに挙げた『火曜日の女』のほか、日本テレビ系列の昼ドラ『愛のサスペンス劇場』(1975年３月31日 &#8211; 1977年３月４日)や、NHKの『少年ドラマシリーズ』(1972年１月１日 &#8211; 1983年10月11日)といったドラマシリーズの作品に楽曲を提供していた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　当時のぼくは、それらのテレビ番組で大野さんのクレジットを発見するたびにひとりでニヤニヤしながら「やっぱり」と思っていたのである。なかでもフジテレビ系列で放映された時代劇『戦国ロック はぐれ牙』(1973年８月４日 – 1973年９月29日)の、<strong>丹阿弥谷津子</strong>のナレーションが入るオープニング・テーマをはじめて聴いたときは、なんてカッコいい曲なのだろうと思ったもの。なおこの曲は部分的に『ルパン三世』のサブタイトルや第１話の劇中などで流用された。とにもかくにも、寡聞にして恥ずかしい限りだが、そのころのぼくは大野さんがどういう人物かはまったく知らなかった。それでもすでに大野サウンドのファンだったわけで、その後『犬神家の一族』でそのプロフィールを知ったぼくは、氏が関わったレコードを探すようになった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　繰り返しになるけれど、大野さんは1970年代の前半からジャズ・ピアニストを休業し、作曲家活動に専念するようになったので、サウンドトラック・アルバムを除く氏のオリジナル・アルバムを見つけるのはなかなか困難だった。ぼくが『<em>ミスター・ハピゴン</em>』のつぎに手に入れた大野さんのアルバムといえば、テイチクレコードからリリースされた『<em>パーフェクト・サウンド/スクリーン・テーマ</em>』(1972年)である。映画音楽やポップ・ナンバーばかりがセレクトされたイージー・リスニング・アルバムとして企画されたものだから、厳密には大野さんのリーダー作とは云えないが、レコードのジャケットにはしっかり「<strong>大野雄二</strong> 編曲・指揮のオーケストラ」というクレジットを見出すことができる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc3">サウンドトラック・アルバムを除くオリジナル・アルバム</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　このアルバム、当時のオーディオ技術の歴史的遺産として知られる、ディスクリート方式の４チャンネル・ステレオ・レコード規格、CD-4方式で制作されたアナログ・ディスクである。いかにも企画モノといった風情だが、音のよさも然ることながら、原曲をなぞるだけのイージー・リスニング作品とは趣きを異にする大野さんのアレンジが独特。フィリー・ソウル風のストリングスを擁した華麗でメロウなサウンド、グルーヴィーなリズムとアンサンブルのヒットは、一聴で大野サウンドとわかるものだ。逆に当時のトレンドだったムード音楽としては、かなり異色の作品と思われる。おそらくオーディオファイルに向けて制作されたレコードなのだろうが、あのころは、ぼくのように大野さんのクレジットにつられて手にとった向きは少数だったろう。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　つづいてぼくが手にしたレコードは、日本コロムビアからリリースされた『<em>エレクトロ・キーボード・オーケストラ</em>』(1975年)というアルバム。ただしこれは、大野さん単独のリーダー作ではない。この作品では、前述の“慶應三羽烏”である<strong>鈴木宏昌</strong>、<strong>佐藤允彦</strong>、<strong>大野雄二</strong>をはじめ、<strong>八木正生</strong>、<strong>羽田健太郎</strong>、<strong>市川秀男</strong>、<strong>大原繁仁</strong>、<strong>藤井貞泰</strong>といった８人の鍵盤奏者が20台のシンセサイザーをプレイするという、現代ではあり得ないプロジェクトが実現されているが、そこで作曲やアレンジ、それにシンセサイザーの操作にもっとも意匠を凝らしていたのは、やはり“慶應三羽烏”。大野さんをはじめとするこの３人は、当時から単なるジャズ・ピアニストではなく実にクリエイティヴな音楽家だった。のちの各々の活躍を考慮すれば、容易に想像がつくだろう。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　このアルバムに大野さんは「メイフラワー」「海猫」という、２曲のオリジナル・ナンバーを提供している。両曲はそれ以降、大野さんのリーダー作や氏が参加した他のアーティストの作品などで、しばしば採り上げられることになる。その点で、大野さんの代表曲と云っていいだろう。また、ここで使用されているコルグの700Sと800DVとはそれぞれ、単音発声機能のみを有するいわゆるモノフォニック・シンセサイザー、独立した２系統のヴォイスを搭載したデュオフォニック・シンセサイザーだったため、大野さんはストリングスによるアンサンブルの雰囲気を醸成するのにかなり苦労したという。氏はこの取り組みで電子楽器に対するアレルギーを克服したとさえ述べているので、本作はその後の大野サウンドにつながる重要なプロジェクトだったと云える。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-8883 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/03/Spacekid2.png" alt="青空に浮かぶ宇宙服を着た男の子" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/03/Spacekid2.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/03/Spacekid2-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　さらにもう１枚、大野さんのリーダー作にレコード会社のCBS・ソニーレコードではなく、総合電機メーカーのソニーからリリースされた『<em>サウンド・アドヴェンチャー・アクト・１</em>』(1975年)というアルバムがある。サブタイトルに「AN EVENING WITH YUJI OHNO」とあるように、1975年８月５日に新宿の東京厚生年金会館大ホール(2010年３月31日に閉館)で行われたコンサートが実況録音されたもの。大野さんのキーボードを中心としたリズム・セクションに、ホーンズ＆ストリングス、さらに<strong>LOVE</strong>と銘打たれた女性コーラス・グループが加えられた、贅沢な編成によるライヴ・パフォーマンスの記録である。そのプログラムは、オリジナル・ナンバーをはじめ、映画音楽、ジャズ・スタンダーズ、ソウル・ミュージックと幅広く採り上げられている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　このアルバムでもっとも気になるのは、<strong>スティーヴィー・ワンダー</strong>、<strong>パティ・ラベル</strong>、<strong>チャカ・カーン</strong>、<strong>ボビー・ヘブ</strong>らのレパートリーが採用されていること。トータル・サウンドは『ルパン三世』のテーマ曲に代表されるクロスオーヴァー風なのだが、このころの大野サウンドはよりリズム・アンド・ブルースやソウル・ミュージックからの影響を色濃く感じさせる。そのファンキーかつグルーヴィーなサウンドは、いまも輝きを失ってはいない。なおこのライヴでは、さきに挙げた「メイフラワー」と「海猫」(CD盤のみ収録)も演奏された。さらに云えば、この「海猫」と本作の冒頭に収録されている<strong>スティーヴィー・ワンダー</strong>の「トゥー・ハイ」は、<strong>原信夫とシャープス＆フラッツ</strong>の『<em>結成25周年記念リサイタル</em>』(1976年)でも再演された。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　思えばこの『<em>結成25周年記念リサイタル</em>』もまた、東京厚生年金会館大ホールでのライヴ・レコーディングが収録されたものだった。このリサイタルが開催されたのは、大野さんのコンサートよりおよそ７か月あとの1976年３月19日のこと。２部構成で行われたコンサートの第１部は、バンドのOBたちをゲストに迎えシャープス＆フラッツの歴史を辿る趣向となっていたが、第２部では当時、新進気鋭のミュージシャンとして注目を集めていた大野さんと、キーボーディストかつシンセシストの<strong>深町純</strong>とによるアレンジとコンポジションが大胆にフィーチュアされる。結果、主にスウィング・ジャズを演奏するこのビッグ・バンドにしてはごく稀な、当時のコトバで云うところのクロスオーヴァー・サウンドが繰り広げられた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それはさておき『<em>サウンド・アドヴェンチャー・アクト・１</em>』は、もともとソニーのオーディオ製品のデモンストレーション・リファレンス用として制作、頒布された非売品レコードだった。それでも当時、ぼくは中古ショップでほぼ新品状態の本盤を度々見かけたもの。そんな本作はオーディオ機器の音質チェック用として制作されたため、ライヴ盤でありながらカッティングやサウンド・クオリティーが非常に素晴らしい。当然、限定プレスということで入手困難な状態がつづいたようだが、そのコンテンツの秀逸さからもDJやコレクターのあいだで幻の名盤として注目されてきた。しかしながら2015年、ついにソニー・ミュージックエンタテインメントが開発したBlu-spec CD2規格で、しかもボーナス・トラックが追加されCD化された。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それはそうと1970年代の後半といえば、大野さんにとっては、映画『犬神家の一族』さらに『人間の証明』(1977年)、そしてテレビアニメ『ルパン三世』の音楽を手がけたことにより一躍脚光を浴び、その後一気に仕事が舞い込むようになった時期。おそらく盆と正月が一緒に来たような状況にあったであろう大野さんに、リーダー作を期待するのは無理というものだが、驚くべきことに非の打ちどころのないスタジオ・レコーディング作品を発表している。それが今回ご紹介する『<em>スペース・キッド</em>』(1978年)なのだが、ジャズ・ピアニストとして決定的な一打を与えるような『<em>ミスター・ハピゴン</em>』に対して、氏のサウンド・クリエイターとしての本領が遺憾なく発揮されたのがこのアルバム。紛うかたなき傑作である。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　実は大野さんは、この『<em>スペース・キッド</em>』を制作するちょっとまえに、おなじCBS・ソニーレコードに『<em>永遠のヒーロー/ジェームズ・ディーン</em>』(1977年)というアルバムを吹き込んでいる。タイトルからもわかるように本盤は、夭逝した銀幕のスター、<strong>ジェームズ・ディーン</strong>の映画の世界観が、主演映画のテーマ曲やオリジナル・ナンバーで表現されたもの。これまた<strong>淀川長治</strong>と<strong>片岡義男</strong>の解説、<strong>谷川俊太郎</strong>のポエムが添えられた企画モノなのだが、大野さんによるジャズ/フュージョンを基調としたノスタルジックでスタイリッシュなそのサウンドは、いささかサウンドトラック調とはいえ独立した音楽作品として十二分に楽しむことができるもの。レコーディングやパフォーマンスの面でも、いわば『<em>スペース・キッド</em>』の前哨戦的なセッションだった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc4">サウンド・クリエイターとしての本領が遺憾なく発揮されたアルバム</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ということで、ここからはアルバム『<em>スペース・キッド</em>』についてお伝えしていくが、レコーディング、ミックスダウン、そしてマスタリングは、1978年の３月１日から４月８日にかけて、港区麻布台のサウンド・シティ・スタジオにおいて行われた。なおレコーディング・エンジニアは、大野作品ではおなじみの<strong>伊豫部富治</strong>が務めている。収録曲はすべて、大野さんのペンによるものだ。ところで1978年といえば、ぼくはかねてから、大野サウンドが洗練された華麗な様式美を極めるに至った年と観ている。もともとジャズ・ピアニストでありながら、アメリカン・ポップ、フィリー・ソウル、ブラジリアン・ミュージックなどから影響を受けてきた大野さんは、ちょうどこのころ、ついに自己の音楽をおなじみのフュージョン・スタイルに昇華させたのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そんな大野さんのクールな音楽は、この年にレコードとして矢継ぎ早に世に送り出された。サウンドトラック・アルバムだと『<em>ルパン三世</em>』『<em>大追跡</em>』『<em>24時間テレビ「愛は地球を救う」</em>』『<em>野性の証明</em>』とリリースされていき、クリスマスまえには早くも『<em>ルパン三世・２</em>』が発売された。なお『<em>24時間テレビ「愛は地球を救う」</em>』と『<em>野性の証明</em>』とは、同時進行で吹き込まれたという。それらのレコードのリリースの間隙を縫って制作されたのが、大野さんにとってはじめての本格的フュージョン・スタイルのリーダー作『<em>スペース・キッド</em>』だ。ちなみに、本作にも参加しているブラジル、サンパウロ出身で1969年から活動の拠点を日本に置いていたシンガー、<strong>ソニア・ローザ</strong>の４枚目のアルバム『<em>サンバ・アモール</em>』(1979年)の吹き込みもこの年。むろん大野さんがプロデュース、作編曲、キーボードを担当している。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ときに『<em>スペース・キッド</em>』のレコーディング・メンバーだが、大野さんの作品ではおなじみの顔ぶれがズラリ並ぶ。列挙すると、<strong>大野雄二</strong>(key)、<strong>松木恒秀</strong>(g)、<strong>岡沢章</strong>(b)、<strong>高水健司</strong>(b)、<strong>市原康</strong>(ds)、<strong>穴井忠臣</strong>(perc)、<strong>ラリー寿永</strong>(perc)、<strong>斎藤不二男</strong>(perc)、<strong>衛藤幸雄</strong>(fl)、<strong>篠原猛</strong>(fl)、<strong>相馬充</strong>(fl)、<strong>ジェイク H. コンセプション</strong>(as)、<strong>鈴木武久</strong>(flh)、<strong>中沢健次</strong>(flh)、<strong>鈴木稔グループ</strong>(Str)、<strong>山川恵子</strong>(hp)、<strong>伊集加代子グループ</strong>(Chor)、<strong>ソニア・ローザ</strong>(vo)、<strong>杉原和司</strong>(synth prog)といった具合。ちなみにリズム・セクションの松木、岡沢、市原、穴井(敬称略)の４人は当時、<strong>鈴木宏昌</strong>率いる<strong>コルゲン・バンド</strong>(のちの<strong>ザ・プレイヤーズ</strong>)のメンバー。みな日本のスタジオ・ミュージシャンとしては、トップクラスのひとたちだ。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-8884 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/03/Spacekid3.png" alt="青空に浮かぶキーボードとつり革" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/03/Spacekid3.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2026/03/Spacekid3-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　また、アルバムにクレジットはないのだが「ア・シングル・トレース・オブ・ラヴ」という曲でオーボエ奏者がリードをとっている。フルート奏者がもち替えで演奏しているのか、あるいはノンクレジットのオーボエ奏者が存在するのか、定かではない。もしかすると大野作品ではおなじみの<strong>石橋雅一</strong>、もしくは直近の『<em>野性の証明</em>』のレコーディングに参加した<strong>坂逸郎</strong>あたりが、オーボエを吹いているのかもしれない。いっぽう大野さんの本作での使用楽器は、アコースティック・ピアノ、フェンダー・ローズ、ヤマハ・エレクトリック・グランド、モーグ・シンセサイザー、ヤマハ・シンセサイザー CS-80。なかでも当時の大野さんは、ヤマハが開発した８音ポリフォニックの最高機種であるCS-80を好んで使用していた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　さらにつけ加えておくと、この『<em>スペース・キッド</em>』は当時、CBS・ソニーレコードによって展開されていた高品質レコード、マスター・サウンド・シリーズの１枚。通常の２倍の時間をかけたハーフスピード・マスタリングによって、繊細で広い周波数レンジが実現された。確かに、いま聴いてもいい音がする。アルバム冒頭の「プロローグ &#8211; クリスタル・ラヴ -」のフェンダー・ローズのソロでは、透明感が際立つ。その後リズム・セクションがフェードインしてくるが、そのファンキーなビート感には、<strong>デイヴ・グルーシン</strong>や<strong>ボブ・ジェームス</strong>からの影響が感じられる。ただヤマハ・エレクトリック・グランドやストリングスによるシネマティックなメロディック・ラインは、大野さんならではのもの。のちに『<em>Made In Y.O.</em>』(2005年)でも再演された、大野サウンドを象徴する名曲だ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　２曲目の「スペース・キッド」は、フィリピン出身の<strong>ジェイク H. コンセプション</strong>のアルトがフィーチュアされたディスコ・ナンバー。大野サウンドならでは女性コーラスもスタイリッシュ。シンプルな歌詞は、プロダクション・コーディネーターの<strong>砂田有子</strong>によるもの。また、イントロの「ミョ〜ン」という音は、CS-80によるもの。コードを押さえながら鍵盤の上部に付いているリボン・コントローラーというベルトを指でなぞると、こういう音が出る。このイントロのカット、劇場アニメ『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)でも印象的に使用されているので、ああ、あれかと思われる向きも多いだろう。フェードアウトしたあとはストリングスのアンサンブルによる「インタールード」が挿入される。ダイナミックかつソフィスティケーテッドなアレンジが、清涼感を与える。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　つづいて途切れることなく、次曲の「メイフラワー」がフェードイン。前述のように度々採り上げられる大野さんの代表曲だが、その後も『<em>LUPIN THE THIRD「JAZZ」Funky &amp; Pop</em>』(2001年)において、ピアノ・トリオ・ヴァージョンを聴くことができる。ここではアコースティック・ピアノとストリングスとが絡み合いながら、ドリーミーな世界を演出。コーラス部のグルーヴィーな展開も心地いい。個人的には、このアレンジが決定版と思っている。A面最後の「ネヴァー・モア」は、<strong>ソニア・ローザ</strong>のコケティッシュなヴォーカルがフィーチュアされた軽快なサンバ。パーカッシヴなフルートや、コージーなピアノ・ソロも軽妙。ソニアさん自身が恋の終わりを綴ったポルトガル語の歌詞、そして彼女のスキャット＆ヴォーカリーズと、どこまでも爽やかだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　B面の冒頭を飾る「メルティング・スポット」は、フリューゲルホーンがリードをとるファンキーなフュージョン・ナンバー。ソウル＆ファンクを基調に華麗なストリングスが配されるところはCTIサウンドを彷彿させるが、メロディアスなコーラス部は、大野節以外のなにもでもない。つづく「ソーラー・サンバ」は、サンバ・テイストのラテン・フュージョン。開放感のあるパーカッション群と煌びやかなホーン・セクションをバックに、大野さんによるエレクトリック・グランドが跳ねまくる。さらにリズミカルかつプレイフルな「ダンシング・ラクーン」では、ソニアさんのスキャットと大野さんのモーグとのやりとりが小粋で楽しい。前述の「ア・シングル・トレース・オブ・ラヴ」は、オーボエが奏でる素朴なメロディがしっとりとした情感を与える。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　この曲などは、砂田さんによるきわめて明快な歌詞といい、<strong>伊集加代子グループ</strong>による垢抜けたコーラスといい、<strong>石立鉄男</strong>主演によるホームコメディドラマのシリーズに通じるハートウォーミングな響きをもっている。大野さんのアルバムが、常に他のフュージョン系の作品では味わうことのできないメロウなサウンドに仕上がっているのは、やはり氏の映像世界での経験が活かされているからだろう。また、それを逡巡することなくまえに押し出すところが、<strong>大野雄二</strong>という音楽家の懐の深さでもある。氏が単なるジャズ・ピアニストで終わっていたら、こうはいかなかっただろう。アルバムのラストをピアノとローズのみによる「エピローグ &#8211; クリスタル・ラヴ -」で締めくくり、余韻を残しながらアルバムの物語性を強めているところもさすが。非の打ちどころのない傑作である。</p>
<p>&nbsp;</p>
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<p class="wp-block-paragraph">最後まで読んでいただき、ありがとうございました。</p>
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		<title>大野雄二〜ユー＆エクスプロージョン・バンド / ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック２ (1978年)</title>
		<link>https://kimama-music.com/you-and-the-explosion-band-lupin-the-3rd-original-soundtrack-2/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=you-and-the-explosion-band-lupin-the-3rd-original-soundtrack-2</link>
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		<dc:creator><![CDATA[kimama]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 21 Dec 2025 07:15:38 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[Soundtrack]]></category>
		<category><![CDATA[Yuji Ohno (大野雄二)]]></category>
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					<description><![CDATA[いまもってクレート・ディガーたちから熱い視線を注がれているアニメ『ルパン三世』テレビ第２シリーズのサウンドトラック・アルバム、大野雄二〜ユー＆エクスプロージョン・バンドの『ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック２』]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h2><span id="toc1">いまもってクレート・ディガーたちから熱い視線を注がれているアニメ『ルパン三世』テレビ第２シリーズのサウンドトラック・アルバム、大野雄二〜ユー＆エクスプロージョン・バンドの『ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック２』</span></h2>

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<div class="label-box-label block-box-label box-label"><span class="label-box-label-text block-box-label-text box-label-text">recommendation</span></div>
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<p class="wp-block-paragraph"><img loading="lazy" decoding="async" class="wp-image-703 alignleft" style="margin-bottom: 0px;" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png" alt="" width="101" height="92" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-300x274.png 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records.png 640w" sizes="(max-width: 101px) 100vw, 101px" /><em>Album : You &amp; The Explosion Band / Lupin The 3rd Original Soundtrack 2 (1978)</em></p>
<p style="text-align: right;"><em>Today&#8217;s Tune : Love Squall</em></p>
</div>
</div>

  <div id="toc" class="toc tnt-disc toc-center tnt-disc border-element"><input type="checkbox" class="toc-checkbox" id="toc-checkbox-8" checked><label class="toc-title" for="toc-checkbox-8">目次</label>
    <div class="toc-content">
    <ol class="toc-list open"><li><a href="#toc1" tabindex="0">いまもってクレート・ディガーたちから熱い視線を注がれているアニメ『ルパン三世』テレビ第２シリーズのサウンドトラック・アルバム、大野雄二〜ユー＆エクスプロージョン・バンドの『ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック２』</a><ol><li><a href="#toc2" tabindex="0">大幅なイメージチェンジが図られたテレビ第２シリーズ</a></li><li><a href="#toc3" tabindex="0">サントラ盤は商品化を目的としたオリジナル・レコーディング</a></li><li><a href="#toc4" tabindex="0">ヴァラエティに富んでいながら音楽作品として調和がとれている</a></li></ol></li></ol>
    </div>
  </div>

<h3><span id="toc2">大幅なイメージチェンジが図られたテレビ第２シリーズ</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　アニメ『ルパン三世』のいわゆるテレビ第２シリーズのサウンドトラック・アルバムをご紹介する。意外なことにこのブログで、このシリーズのサントラ盤を採り上げるのははじめてである。この第２シリーズは、日本テレビ系列において1977年10月３日から1980年10月６日まで、およそ３年間にわたり放送された。そのエピソードは155話に及び、全テレビシリーズのなかでももっとも放送期間が長い。原作は云うまでもなく、漫画家<strong>モンキー・パンチ</strong>によるコミック作品。怪盗アルセーヌ・ルパンの孫と称する神出鬼没の大泥棒、ルパン三世を主人公としたある種のクライム・サスペンスだが、見かたによってはお色気アクション・ギャグ・コメディと捉えることもできるだろう。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　個人的にはテレビ第１シリーズのほうが好きなのだけれど、主人公のルパン三世の赤いジャケットやだれもが知る「ルパン三世のテーマ」が生み出されたことを考慮に入れると、一般的に『ルパン三世』のイメージを定着させたのはテレビ第２シリーズと云わざるを得ない。ちなみに緑のジャケットを着用したルパン三世が活躍する第１シリーズは、1971年10月24日から1972年３月26日まで放送された。<strong>大隅正秋</strong>をはじめ、<strong>出崎統</strong>、<strong>高畑勲</strong>、<strong>宮崎駿</strong>といった錚々たる顔ぶれが演出を手がけているが、視聴率は低迷しつづけ放送は全23話で打ち切りとなった。おそらくおなじ轍を踏まないようにということなのだろう、第２シリーズでは大幅なイメージチェンジが図られた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　テレビ第１シリーズとテレビ第２シリーズとの違いでぼくがもっとも気になったのは、実はルパン三世とその仲間たちの顔。キャラクター・デザイナーが<strong>大塚康生</strong>から<strong>北原健雄</strong>に替わったことが大きい。実は第２シリーズは、現実の時間経過に合わせて第１シリーズの最終話の５年後として描かれている。第２シリーズ第１話では、メイン・キャラクターたちの第１シリーズ終了からの５年間の動向が、簡単ではあるが語られる。加えて第１シリーズ第１話の敵役、犯罪組織スコーピオンのコミッショナー、ミスターXが超人間に生まれ変わって再登場する。おまけにミスターXの回想という形で、第１シリーズ第１話の映像がそのまま流用されてもいる。つまるところ、ふたつのシリーズは地つづきになっているのだ。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-8529 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/12/lupinred2-1.png" alt="コルコヴァードのキリスト像" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/12/lupinred2-1.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/12/lupinred2-1-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　でもテレビ第２シリーズが放送開始された当初、ぼくはルパン三世とその仲間たちの顔に、違和感を覚えざるを得なかった。果たしてふたつのシリーズに関連性をもたせることがほんとうに必要だったのか、いまも疑問に感じている次第。いっそのことパラレルワールド的な描かれかたをされたほうが、しっくりきたかもしれない。ところがどっこい、そんな苦言を呈するぼくも、実はいつの間にか第２シリーズの水に慣れてしまっていた。よくよく考えると、その最大の要因は音楽にあったと気がつく。ふたつのシリーズの音楽を比較すると、推進力のある多様なリズム・パターンが展開されるところは共通するのだが、そこから生まれる各々のテクスチュアには大きな隔たりが感じられるのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　テレビ第１シリーズの音楽を手がけたのは、唯一無二のスタイリスト、ヤマタケの愛称で親しまれる<strong>山下毅雄</strong>。映画、テレビドラマ、アニメ、CMなどの音楽を数多く手がけた作曲家だ。ヤマタケ・サウンドは、ジャズ、ロック、ソウル、ラテンなど、多彩なジャンルの音楽がクロスオーヴァーするのも然ることながら、スキャット、口笛、かけ声などが頻繁に登場するという実にユニークなものである。その解き放たれたような晴々したフィーリングは、大人向けのアニメを制作するという『ルパン三世』に掲げられた当時としては実に画期的なコンセプトに、よくマッチしていると思われる。いっぽう<strong>チャーリー・コーセイ</strong>が歌うエンディング・テーマなどは、デカダンスな印象さえ与える。いずれにしても、第１シリーズの音楽は斬新だった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それに対してテレビ第２シリーズの音楽では　ジャズ・ピアニストの<strong>大野雄二</strong>が起用された。とはいっても当時の大野さんといえば本業のほうは開店休業中で、もっぱら作曲家活動に専念していた。すでにポップ・ミュージックのプロデューサーやアレンジャーを務めるかたわら、CM音楽をはじめ、テレビドラマや映画のアンダースコアなどを数多く手がけていたが、一般的にはなんといっても角川春樹事務所製作第１回作品の映画『犬神家の一族』(1976年)の音楽を担当したのを機に、広くその名を轟かせた。そのサウンドにはジャズをはじめ、ロック、ソウル、ラテンなどのエッセンスが含まれており、どちらかというとそれまで日本の映画音楽で主流だったヨーロッパの伝統的な作曲技法や演奏法によるスコアとは、ひと味もふたも違う心地よさがあった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ちょうど『ルパン三世』テレビ第２シリーズの放送がスタートした直後(1977年10月８日)に劇場公開された、角川映画第２弾『人間の証明』(1977年)の音楽も大野さんが手がけたものだが、ロック・シンガーの<strong>ジョー山中</strong>を起用した主題歌「人間の証明のテーマ」は、映画公開まえからテレビやラジオのスポット広告で頻繁に流されたことも手伝って大ヒットとなった。山中さんにとっても、初のオリコン・チャート入りで２位を記録した生涯最大のヒット曲である。劇伴のほうも、1970年代前半からアメリカでブームとなっていたクロスオーヴァー・ミュージックに倣ったスタイルがフレッシュな印象を与え、たいへんな人気を博した。そしてそのサウンドは『ルパン三世』の新しい音楽に直結するものでもあった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　いまから考えると、映画公開のおよそ２週間まえ(1977年９月25日)にリリースされた『人間の証明』のサウンドトラック・アルバムは、映像と切り離して聴いても、こころ行くまで深く味わい尽くすことのできるクロスオーヴァー・アルバムだった。たとえば、このアルバムに収録されているいくつかの楽曲には、海外のクロスオーヴァー作品からの影響が顕著に窺える。主旋律がアープ・オデッセイの口笛のような音色で奏でられる「我が心の故郷へ」では、躍動感のあるイントロが<strong>デイヴ・グルーシン</strong>の「フライ・バイ・ナイト」という曲のそれを彷彿させる。ギターのヴァイオリン奏法がリラクゼーションを促す「夜明けのコーヒー・ショップ」は、<strong>リー・リトナー</strong>の「ドルフィン・ドリームス」をイメージさせる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc3">サントラ盤は商品化を目的としたオリジナル・レコーディング</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　さらにミステリアスなムードを醸し出す「謎のキーワード」に至っては、<strong>クラウス・オガーマン</strong>の「夜のおとずれ」という曲が手本にされているとしか思えない。これらをオマージュととるかパクりととるかはさておき、そのサウンドがいまの時代においてもDJたちのあいだで国産レア・グルーヴとして重宝されるように、きわめてクールなものであることは間違いない。まして当時の日本映画の音楽としては、紛れもなく先進的だった。このレコードをはじめて聴いたときのぼくといえば、それこそ<strong>デイヴ・グルーシン</strong>、<strong>ボブ・ジェームス</strong>、<strong>エウミール・デオダート</strong>などのアルバムに手を出すほんの少しまえ。そういう意味では、ぼくにとって<strong>大野雄二</strong>という音楽家は、クロスオーヴァーあるいはフュージョンへの水先案内人だったとも云える。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ところで『ルパン三世』テレビ第２シリーズの音楽は、映画『人間の証明』のクロスオーヴァー・サウンドが直線的に引き継がれたものだ。さきに挙げた楽曲を含む『人間の証明』のアルバム用音源のレコーディングは、1977年の５月に港区麻布台のサウンド・シティ・スタジオと目黒のモウリ・スタジオにおいて行われた。そしてそのおよそ３か月後の８月、おなじサウンド・シティ・スタジオをはじめ、杉並区堀之内のテイチク・スタジオ、千代田区有楽町のニッポン放送内スタジオにおいて、有名な「ルパン三世のテーマ」エンディング・テーマの「ルパン三世愛のテーマ」さらにはアンダースコアからアイキャッチに至るまで『ルパン三世』テレビ第２シリーズの初期の音楽のほとんどが吹き込まれたのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　新たに生み出された『ルパン三世』テレビ第２シリーズのスコアにおける、ジャンルの垣根を超えた音楽性を孕んだスタイリッシュなサウンドは、軽妙洒脱であるところは共通するもののどちらかというと鷹揚さが際立ったテレビ第１シリーズのスコアのそれとは、かなり雰囲気が違う。映画音楽の作曲家に喩えるなら、音楽の担当が<strong>アルマンド・トロヴァヨーリ</strong>から<strong>デイヴ・グルーシン</strong>に替わったような感じといったところだ。いずれにしても第２シリーズの音楽には、第１シリーズの音楽においてある程度定着していたイメージを払拭するような勢いがあった。そんな<strong>大野雄二</strong>によるニュー・サウンドを歓迎するとともに、キャラクター・デザインを筆頭に当初違和感を覚えた第２シリーズの世界に、ぼくはいつのまにか順応していたのである。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-8530 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/12/lupinred2-2.png" alt="エジプトのスフィンクスやピラミッド" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/12/lupinred2-2.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/12/lupinred2-2-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　むろん番組を制作する側にそんな思惑はなかったのだろうけれど、結局のところぼくは<strong>大野雄二</strong>の音楽に上手くごまかされてしまい、テレビ第１シリーズに引きつづきテレビ第２シリーズもなんとなく最後まで観てしまったのだ。裏を返せば、それだけ大野さんの音楽が素晴らしかったということになる。素晴らしいといえば、当初発売されていたこのシリーズのサウンドトラック・アルバムの収録曲が、フィルムスコアリングとは別に商品化を目的としたオリジナル・レコーディングによるものだったということが挙げられる。このマナーはアメリカの映画音楽の作曲家、<strong>ヘンリー・マンシーニ</strong>の音盤ではお決まりのようになっていたが、大野さんの初期の作品でもこの作法が採用されることが多かった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　テレビ第２シリーズのためにレコーディングされたトラックは、放送期間が長期にわたったこともあり膨大な数に上る。放送終了後に映像への使用のみを前提としたトラックもそのほとんどが商品化に至ったが、レコード化を踏まえたオリジナル・レコーディングのそれと比較すると明らかにクオリティが低い。逆から云えば、このシリーズの放送期間中に発売された３枚のサウンドトラック・アルバムのコンテンツは、どれも鑑賞用音楽として成立しているのはもちろんのこと、敢えて『ルパン三世』を意識しなくても<strong>大野雄二</strong>のクロスオーヴァー作品としてその醍醐味をたっぷり味わうことができるものとなっている。そしてこの３枚もまた『人間の証明』のサントラ盤と同様に、いまもってクレート・ディガーたちから熱い視線を注がれている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そんな『ルパン三世』のサウンドトラック・アルバムが、最初に発売されたのは1978年の１月25日。テレビ放送開始からすでに３ヶ月以上が経過したあとのリリースとなったが、レコーディングは1977年の11月から前述のサウンド・シティ・スタジオと赤坂ミュージック・スタジオとで行われた。のちに何度となくアップデートされる「ルパン三世のテーマ」のオリジナルは、<strong>ホレス・パーラン</strong>の「コンガレグレ」を彷彿させるメロディック・ライン、フィリー・ソウルばりのグルーヴィーなリズム、そして歯切れのいいブラスと華麗で柔らかなストリングスといった、洗練されたアーバン・ムードのサウンドが新鮮だった。また収録曲の「マグナム・ダンス」は、明らかに<strong>ボブ・ジェームス</strong>の「ナイト・クローラー」が意識されている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　このころの大野サウンドでは、シグマ・サウンドとも云われるフィラデルフィア発のソウル・ミュージックや、CTIレコードのブランディング戦略を象徴するポピュラライズされたジャズ・サウンド、いわゆるクロスオーヴァーなどからの影響が顕著に現れている。というかそれらのスタイルが、手本ないし規範として意識的に真似されているように感じられる。だから『ルパン三世』の楽曲にも、上記のような海外のアーティストの作品との類似性が随所に見受けられるのだ。それを剽窃と捉えて憤慨する向きもあるだろうけれど、ヒンシュクを買う覚悟で云えば、ぼくにはそれはそれで楽しいことのようにも思われる。いずれにしても当時の日本では、映像作品にそういうスタイルの音楽を提供する作曲家といえば、<strong>大野雄二</strong>をおいてほかにいなかったのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ときに『ルパン三世』のサウンドトラック・アルバムだが、１枚目の発売から11か月足らずという短いスパンで２枚目のレコードがリリースされた。ニュー・アルバムの制作は、オープニング・テーマとエンディング・テーマの変更に合わせたもの。３枚目もやはり同様のタイミングで発売された。２枚目のレコードは1978年12月10日に発売されたのだが、同年12月16日に公開された劇場映画第１作『ルパン三世 ルパンVS複製人間』(1978年)のサントラ盤としての機能も果たす仕様となっている。とはいっても全曲、音盤化が目的とされたオリジナル・レコーディングによるもの。劇場版のフィルム・スコアはのちにレコードとして発売されたが、映画公開から６年３か月ほど経った1985年３月21日のことである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　今回はこの２枚目のアルバムをご紹介するので、その詳細については後述させていただくとして、そのまえに２枚目のリリースからおよそ１年後の1979年12月１日に発売された３枚目のアルバムについて簡単に触れておく。こちらの音盤も２枚目と同様に、オープニング・テーマとエンディング・テーマの変更にともない制作されたものであるが、全編オリジナル・レコーディングとなっている。また本作は1979年12月15日に公開された、<strong>宮崎駿</strong>の劇場映画初監督作品でもある『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)のサウンドトラック・アルバムも兼ねている。吹き込みはオープニングとエンディングの両テーマのみ1979年７月31日に行われ、マスタリングが終了したのは９月６日。そのほかのトラックはすべて、同年10月の録音となっている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc4">ヴァラエティに富んでいながら音楽作品として調和がとれている</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　このアルバムの楽曲のレコーディングは、すべて千代田区四番町のサウンドインスタジオで行われたのだが、このレコーディング・スタジオは当時スタートしたばかりだった日本テレビ音楽(NTVM)のスタジオ部門によって開設された。スウィンギーなビッグバンド・ジャズにアレンジされた人気のオープニング・テーマ「ルパン三世 &#8217;80」は、ここで誕生した。なおこの曲で鮮やかなマレット捌きを披露しているのは、ジャズ・ヴィブラフォニストの<strong>松石和宏</strong>である。ただアルバム全体の印象といえば、それまでのファンキー・テイストは薄められ、そのかわりにエレガントなサウンドとトロピカルなリズムがクローズアップされたように感じられる。これは多少なりとも、ヨーロッパの架空の小国を舞台とする劇場版のムードにベクトルが向けられた結果だろう。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ちなみに映画『ルパン三世 カリオストロの城』のレコード化を前提としないスコアは、1979年10月17日に港区六本木の朝日サウンド・スタジオ501スタジオで行われた。またフィルム・スコアの音盤は、映画公開から３年半以上あとの1983年３月21日に発売された。そしてやはり３枚目のオリジナル・レコーディング・アルバムに収録されているトラックにも、海外のアーティストの楽曲にインスパイアされたものがあるので一応挙げておく。まず「そよ風の誘惑」と「悪の栄光」という曲だが、それぞれヴィブラフォニスト、<strong>マイク・マイニエリ</strong>の曲「イージー・トゥ・プリーズ」と「マジック・カーペット」によく似ている。また「ミステリアス・ジャーニー」は、ギタリスト、<strong>アール・クルー</strong>の「アコースティック・レディ・パート１」を彷彿させる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　３枚目のアルバムは、さきに述べたようにテレビシリーズのアンダースコアであると同時に映画『ルパン三世 カリオストロの城』のサントラ盤でもあるわけで、従来よりもアコースティックなサウンドが志向されている。おそらくそういう音をイメージしたとき大野さんは、ヴィブラフォン、ナイロン弦ギターといった楽器が音景のセンターに位置づけられたフュージョン作品を参酌して、スコアを書いたのだろう。繰り返しになるけれど、こういう類似性に出くわすとぼくの場合、ついクチもとを緩めてしまいながらも、そのことが妙に腑に落ちたりするのだ。というのも大野さん自身が、いっときは港区南青山の骨董通りにあった輸入レコード店、パイド・パイパー・ハウスに通い詰めるほど、音楽を聴くことがいちばんの趣味であると明言しているからだ。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-8531 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/12/lupinred2-3.png" alt="パリのシャンゼリゼ通り" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/12/lupinred2-3.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/12/lupinred2-3-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　そんなふうにして大野さんが海外の音盤から得た多種多様の音の具材によって、あたかも美味い五目炒飯のようにもっとも彩り豊かに仕上げられたのが、２枚目のオリジナル・レコーディング・アルバム『<em>ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック２</em>』 (1978年)である。私感では３枚のサウンドトラック・アルバムのなかで、楽曲がヴァラエティに富んでいながら、ひとつの音楽作品としてとりわけ調和がとれているのは本作と思われる。LPレコードは当時NTVMが提携していた英国のレーベル、サトリル・レコードからリリースされており、テレビアニメのサントラ盤とはいえ外観にも子ども向けの番組をイメージさせるところは微塵もない。アルバム・プロデュースは、大野さん自身とNTVMの<strong>飯田則子</strong>とが手がけている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　レコーディングは、エンディング・テーマの「ラヴ・スコール &lt;峰不二子のテーマ&gt;」とインサート・ソング「スーパー・ヒーロー &lt;ルパン三世のテーマ&gt;」とが1978年８月16日(歌入れは各々９月16日、８月18日)に、オープニング・テーマの「ルパン三世 &#8217;79」が９月に、そしてそれ以外の楽曲は11月２日と４日に、それぞれ定番のサウンド・シティ・スタジオ(「スーパー・ヒーロー &lt;ルパン三世のテーマ&gt;」の歌入れのみ大平スタジオ)で行われた。レコーディング・エンジニアは、大野作品ではおなじみの<strong>伊豫部富治</strong>が務めている。演奏は<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>と記載されているが、このときのメンバーは<strong>大野雄二</strong>(key)、<strong>松木恒秀</strong>(g)、<strong>長岡道夫</strong>(b)、<strong>渡嘉敷祐一</strong>(ds)、<strong>穴井忠臣</strong>(perc)となっている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そのほかの参加ミュージシャンは、<strong>中川昌三</strong>(fl)、<strong>藤山明</strong>(fl)、<strong>中谷望</strong>(fl)、<strong>村岡建</strong>(sax, cl)、<strong>斉藤清</strong>(sax)、<strong>数原晋</strong>(tp)、<strong>岸義和</strong>(tp)、<strong>中川喜弘</strong>(tp)、<strong>白山文男</strong>(tp)、<strong>新井英治</strong>(tb)、<strong>鈴木稔グループ</strong>(str)、<strong>栗林稔</strong>(org)、<strong>風間文彦</strong>(acc)、<strong>坂田宏聡</strong>(shakuhachi)、<strong>堅田啓光</strong>(tsuzumi)、<strong>平山万佐子</strong>(biwa)、<strong>伊集加代子グループ</strong>(cho)、<strong>トミー・スナイダー</strong>(vo)、<strong>サンドラ・ホーン</strong>(vo)となっている。大野さんのレコーディングでは、おなじみの顔ぶればかりである。補足しておくと、松木さん、渡嘉敷さん、穴井さんの３人は当時、<strong>コルゲン・バンド</strong>(のちの<strong>ザ・プレイヤーズ</strong>)のメンバー。長岡さんは、<strong>ワン・ライン・バンド</strong>(のちの<strong>SHŌGUN</strong>)のメンバー。そして伊集さんは、もと<strong>シンガーズ・スリー</strong>のメンバーだった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　アルバムは「ルパン三世 &#8217;79」からスタート。アップテンポのディスコ・ヴァージョンだが、メロディを奏でるオーバーハイムと随所で聴かれるポラード・シンドラムの音色が印象に残る。ストリングスの高速デタシェもキャッチーだ。哀愁を帯びたウェスタン風の「トルネイド &lt;次元大介のテーマ&gt;」は、ストレートに<strong>チャック・マンジョーネ</strong>の「サンチェスの子供たち」を思い出させる。ドライなフリューゲルホーンとソリタリーなアープ・オデッセイとのコントラストが鮮やかだ。リフレッシングなサンバ「恋はサンパウロ」では、軽やかなホーンズのアンサンブルも然ることながら華やかさを添える女性コーラスが素敵だ。ミッドテンポのアーバン・ソウル「スフィンクス」では、なんといっても<strong>スティーヴ・ガッド</strong>を想わせるドラミングがクールだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　スケールの大きなジャズ・ファンク「螺旋飛行〜黄昏のサンジェルマン」では、ダンサブルなビート感と気分を浮き立たせるようなブラス・サウンドが心地いい。スローになってからのトロンボーンとアコーディオンとの絡みが、スウィートなムードを演出する。アップ・テンポのブギー・ファンク「黒い陰謀」では、なんといってもエッジの効いたブラス・サウンドにシビレる。エキゾティックなムードの「オアシスへ…」では、トロピカルなリズムとフルートやストリングスによるアンサンブルが得も云われぬ清涼感を醸成する。粋なディスコ・ブギー「スーパー・ヒーロー &lt;ルパン三世のテーマ&gt;」では、<strong>ゴダイゴ</strong>のドラマーでもある<strong>トミー・スナイダー</strong>がスマートなヴォーカルを聴かせる。女性コーラスもファッショナブルだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　尺八、琵琶、そして鼓といった和楽器がフィーチュアされる「斬鉄剣 &lt;石川五右衛門のテーマ&gt;」は、和風メロディとロッキッシュなリズムが溶け合ったダイナミックなナンバー。エレクトリック・ギターのソロも熱い。ハンド・クラッピングが入るニューオーリンズ風の「ファニー・ウォーク」では、バウンシーなリズムと迸るブルース・フィーリングに胸がすく。ハモンドやクラリネットも効果的だ。ラストを飾る「ラヴ・スコール &lt;峰不二子のテーマ&gt;」は、もう名曲と云うしかない。サンバのビート感とソウル・ミュージックの風合いがほどよくミックスされている。のちに<strong>サンディー＆ザ・サンセッツ</strong>で知られるようになる、<strong>サンドラ・ホーン</strong>のアダルトライクだけれどキュートなヴォーカルもいい。セカンド・ヴァースでキーが半音上がるのにも、ちょっと感激。この曲も含めて、本盤は<strong>大野雄二</strong>のセンスのよさが全開した１枚と云える。ぜひご賞味あれ。</p>
<p>&nbsp;</p>
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<div class="speech-balloon has-border-color has-ex-a-border-color">
<p class="wp-block-paragraph">最後まで読んでいただき、ありがとうございました。</p>
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<p></p>]]></content:encoded>
					
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		<title>大野雄二トリオ / Mr. Happy-Gon (1973年)</title>
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		<dc:creator><![CDATA[kimama]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 17 Aug 2025 07:51:27 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[Jazz]]></category>
		<category><![CDATA[Yuji Ohno (大野雄二)]]></category>
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					<description><![CDATA[大野雄二のジャズ・ピアニストとしての実力が遺憾なく発揮された傑作、大野雄二トリオの『ミスター・ハピゴン』]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h2><span id="toc1">大野雄二のジャズ・ピアニストとしての実力が遺憾なく発揮された傑作、大野雄二トリオの『ミスター・ハピゴン』</span></h2>

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<div class="label-box-label block-box-label box-label"><span class="label-box-label-text block-box-label-text box-label-text">recommendation</span></div>
<div class="label-box-content block-box-content box-content">
<p class="wp-block-paragraph"><img loading="lazy" decoding="async" class="wp-image-703 alignleft" style="margin-bottom: 0px;" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png" alt="" width="101" height="92" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-300x274.png 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records.png 640w" sizes="(max-width: 101px) 100vw, 101px" /><em>Album : 大野雄二トリオ / Mr. Happy-Gon (1973)</em></p>
<p style="text-align: right;"><em>Today&#8217;s Tune : My Little Angel</em></p>
</div>
</div>

  <div id="toc" class="toc tnt-disc toc-center tnt-disc border-element"><input type="checkbox" class="toc-checkbox" id="toc-checkbox-10" checked><label class="toc-title" for="toc-checkbox-10">目次</label>
    <div class="toc-content">
    <ol class="toc-list open"><li><a href="#toc1" tabindex="0">大野雄二のジャズ・ピアニストとしての実力が遺憾なく発揮された傑作、大野雄二トリオの『ミスター・ハピゴン』</a><ol><li><a href="#toc2" tabindex="0">大野雄二がもともとジャズ・ピアニストだったということを知る</a></li><li><a href="#toc3" tabindex="0">『ミスター・ハピゴン』に至るまでのジャズ・ピアニスト時代</a></li><li><a href="#toc4" tabindex="0">ジャズ・ピアニストとしてもっとも脂が乗っていた時期の吹き込み</a></li></ol></li></ol>
    </div>
  </div>

<h3><span id="toc2">大野雄二がもともとジャズ・ピアニストだったということを知る</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　先週このブログで、<strong>大野雄二＆ユー・アンド・エクスプロージョン・バンド</strong>の『<em>24時間テレビ「愛は地球を救う 」</em>』(1978年)についてお伝えした。そこで云い忘れたのだけれど、このサウンドトラック・アルバムのアーティスト名の表記が、どうも釈然としない。日本テレビ音楽(NTVM)が制作した大野さんのアルバムには、たいていバンド・ネームとして<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>というクレジット表記があるということは、すでにお伝えした。ところが本作のアーティスト名は、“<strong>大野雄二＆ユー・アンド・エクスプロージョン・バンド</strong>”と記されている。ジャケットの裏面の英語表記は“<strong>You &amp; Explosion Band</strong>”となっているが、LPのタスキを観ると今度は“<strong>大野雄二とユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>”と記されていて、ちょっと統一性がない。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　まあ百歩譲って、足並みが揃わないのは受け入れるとしても、バンド名のアタマに大野さんの名前を冠するのはいかがなものだろう。なぜなら<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>の“ユー”とは大野さんのことだから、“<strong>大野雄二</strong>”のあとに“ユー”がつづくと、いわゆる重複表現のようでなんだか気持ちがわるい。それともこれはぼくの勘違いで、“ユー”というのは実のところ、大野さんのことではないのだろうか？いやいや、氏がコンポーザー、アレンジャー、キーボーディストを務めるばかりか、セリフまで喋る『<em>せ・しゃれまん</em>』(1979年)というレアなレコードがあるのだけれど、このアルバムのアーティスト名は<strong>山田康雄＆YOU</strong>となっているから、やはり<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>の“ユー”とは大野さんのことなのだろう。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　なお、いちいちお断りする必要もないと思うけれど、<strong>山田康雄</strong>とは1995年３月19日、62歳という若さでこの世を去った、俳優、声優、そして司会者として活躍したあの山田さんである。<strong>クリント・イーストウッド</strong>、<strong>ジャン・ポール・ベルモンド</strong>の吹き替えでも有名だが、なんといってもルパン三世の初代の声優として広く知られるひと。大野さんとは、氏の自宅兼スタジオに招かれて酒を酌み交わすほどの仲だったという。フランス語の“C&#8217;est charmant!(それすてきだね！)”に引っかけた洒落たアルバム・タイトルの『<em>せ・しゃれまん</em>』は、コンテンツのほうも軽妙洒脱。山田さんのルパンそのままのセリフと愛敬で聴かせるヴォーカル、女優である<strong>市毛良枝</strong>のセクシーな存在感、そして大野さんの妙味のある音楽と、どこまでもオシャレな１枚だ。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-7802 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/recordpiano.png" alt="レコードを持った女性とピアニスト" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/recordpiano.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/recordpiano-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　とにもかくにも、アルバム『<em>24時間テレビ「愛は地球を救う 」</em>』のジャケットやタスキには、さしあたり“音楽/<strong>大野雄二</strong> 演奏/<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>”とでも記しておいたほうが、スッキリと当たり障りがなかったのではないだろうか。まあこの件は、目くじらを立てるようなことでもないし、こんなことをいちいち気にするようなヤツはぼくくらいのものだろう。かねてからなんとなくモヤモヤしていたので、ちょっとブーたれてしまった。あしからず、ご容赦いただきたい。ということですっかり余談が過ぎたが、前回のぼくといえば、大野サウンドが洗練された華麗な様式美を極めるに至るのは1978年だったと確信すると、いささか不遜な云いかたをしてしまったが、むろんウソ偽りのない気持ちである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そんなことを声高に主張するいっぽうで、それ以前というかジャズ・ピアニスト時代の大野さんについては、これまであまり語っていないということに、ぼくはたまさかに気がついてしまったのである。せっかくなので引き合いに出してしまうけれど、上記の『<em>せ・しゃれまん</em>』には、曲の合間に山田さんと大野さんとのトークが挿入される箇所がある。たとえば「ユウジ、その曲は二度と弾くなと云ったはずだが──」「またー、ボギーみたいなこと云うなよー。キミの昔の思い出のために弾いているんだもん」といった具合に──。どこかのクラブでピアノを弾く大野さんに、山田さんが語りかけている──といったイメージだ。大野さんが実際に喋りながら弾いているのかは定かでないが、曲は「またひとつ恋が終った」という氏のオリジナルだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　大野さんはここで、このアルバムで山田さんが歌った曲をあらためてソロ・ピアノで弾いているのである。このメランコリックなバラード・ナンバーについてはさておき、大野さんのソロ・パフォーマンスには、かつてモダン・ジャズをプレイしていたころの氏を連想させるものがある。実際、以前の大野さんは正真正銘のジャズ・ピアニストだった。ところが大野さんは、1971年ごろからジャズ・プレイヤーと作曲家との二足の草鞋を履くようになり、次第にジャズ・シーンから遠ざかっていくのだった。1971年といえば、氏が音楽を手がけたテレビドラマ『おひかえあそばせ』の放送が開始された年。<strong>石立鉄男</strong>主演、<strong>松木ひろし</strong>脚本による、日本テレビ系列で1970年代に放映されたホームコメディドラマのシリーズの第１作だ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　おそらく、ぼくが大野サウンドにはじめて触れたのは、このドラマにおいてだろう。その後ぼくは、やはり日本テレビ系列のドラマシリーズ『火曜日の女』(1969年11月４日 – 1972年3月27日)を観るようになるのだけれど、そのころにはまだ大野さんの名前を覚えていなかったかもしれないが、氏の音楽には強く惹かれていたと思う。要するにぼくは、まだ年端もいかない子どものころから、知らず知らずのうちに大野サウンドを刷り込まれていたわけだ。それは同時に、そうと知らずにジャズという音楽に接していたことにもなる。いずれにしても、<strong>大野雄二</strong>という音楽家がもともとジャズ・ピアニストだったということを知るのは、もう少しあとのこと。具体的には1976年に公開された、あの映画を鑑賞したときである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ぼくが大野さんの実像についてはじめて知り得たのは、その後大ブームとなった角川映画の第１作『犬神家の一族』(1976年)を劇場で観たときのこと。鑑賞後に購入したパンフレットの巻末に、サウンドトラック・シングルの宣伝広告のページがあった。そこにはレコーディング中の大野さんと、それを訪ねた主演俳優の<strong>石坂浩二</strong>とのツーショットとともに、大野さんのプロフィールが掲載されていたのである。いまでは信じられないだろうけれど、自宅の住所まで明らかにされていたりして、平和なというかちょっと不用心な時代だったのだね──。まあそれはともかく、大野さんがジャズ・ピアニストと知ったぼくはときを移さず、父親に頼み込んでわざわざ銀座の山野楽器まで連れていってもらい、ついに氏のジャズ・アルバムを手に入れたのだった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そのアルバムとは、<strong>大野雄二トリオ</strong>の『<em>ミスター・ハピゴン</em>』(1973年)というレコードだった。いまでもそのときのことをよく覚えているのだけれど、象牙色のジャケットの下のほうに着色されたモノクロームの写真の大野さんがすごく小さくて、どことなく怪しくて気が許せないように感じられた。鮮やかな真紅のタスキに“RCAモダン・ジャズ・シリーズ③”と記載されているのを見たとき、小学生のぼくははじめてオトナのアイテムを手にするウレシさみたいなものを感じたりもした(バカだね)。その反面、ジャケットの裏面に写る長髪にラフな格好の大野さんからちょっと赤軍派をイメージしてしまい、恐る恐るレジにもっていった覚えがある。ちなみに、ぼくの好きな<strong>菅野光亮</strong>の『<em>詩仙堂の秋</em>』(1973年)も、このRCAのシリーズの１枚だ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p style="text-align: center;"><span style="color: #34485e;">(<strong>大野雄二＆ユー・アンド・エクスプロージョン・バンド</strong>の『<em>24時間テレビ「愛は地球を救う 」</em>』については、下の記事をお読みいただければ幸いです)</span></p>
<div class="blogcard-type bct-related">

<a href="https://kimama-music.com/yuji-ohno-and-you-and-explosion-band-love-saves-the-earth/" title="大野雄二＆ユー・アンド・エクスプロージョン・バンド / 24時間テレビ「愛は地球を救う 」(1978年)" class="blogcard-wrap internal-blogcard-wrap a-wrap cf"><div class="blogcard internal-blogcard ib-left cf"><div class="blogcard-label internal-blogcard-label"><span class="fa"></span></div><figure class="blogcard-thumbnail internal-blogcard-thumbnail"><img loading="lazy" decoding="async" width="160" height="90" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2022/12/cinema-160x90.png" class="blogcard-thumb-image internal-blogcard-thumb-image wp-post-image" alt="" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2022/12/cinema-160x90.png 160w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2022/12/cinema-120x68.png 120w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2022/12/cinema-320x180.png 320w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2022/12/cinema-376x212.png 376w" sizes="(max-width: 160px) 100vw, 160px" /></figure><div class="blogcard-content internal-blogcard-content"><div class="blogcard-title internal-blogcard-title">大野雄二＆ユー・アンド・エクスプロージョン・バンド / 24時間テレビ「愛は地球を救う 」(1978年)</div><div class="blogcard-snippet internal-blogcard-snippet">宇宙から愛をこめて、地球に住む宇宙人のあなたへ──大野雄二＆ユー・アンド・エクスプロージョン・バンドによる『24時間テレビ「愛は地球を救う 」』のサウンドトラック・アルバム──高品質を誇る演奏と録音、そして大野サウンドが満載の贅沢な１枚についてお伝えする。</div></div><div class="blogcard-footer internal-blogcard-footer cf"><div class="blogcard-site internal-blogcard-site"><div class="blogcard-favicon internal-blogcard-favicon"><img loading="lazy" decoding="async" src="https://www.google.com/s2/favicons?domain=https://kimama-music.com" alt="" class="blogcard-favicon-image internal-blogcard-favicon-image" width="16" height="16" /></div><div class="blogcard-domain internal-blogcard-domain">kimama-music.com</div></div></div></div></a>
</div>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc3">『ミスター・ハピゴン』に至るまでのジャズ・ピアニスト時代</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ときに『<em>ミスター・ハピゴン</em>』は、当時すでに廃盤だったと思われる。というのも、そのあと間もなく、RCAの“日本のJAZZ 1500”と銘打たれた定価1,500円の廉価盤シリーズの１枚としてリイシューされた本作を、とあるレコード店で見かけたからだ。ただその盤は、ジャケットのデザインや曲順はそのままだったが、なぜかアルバム・タイトルが『<em>マイ・リトル・エンジェル</em>』に変更されていた。もしかすると、ジャズ評論家の<strong>岩波洋三</strong>による本作のライナーノーツに、“ハピゴン”がベーシストの<strong>水橋孝</strong>のニックネームであるという記述があるのにもかかわらず、アルバム・タイトルに堂々と掲げられた“ミスター・ハピゴン”を大野さんのことと勘違いする向きが、案外多くあったのかもしれない。いずれにせよそれ以降、本盤は『<em>マイ・リトル・エンジェル</em>』として定着した。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　便宜上これ以降、オリジナルのタイトルでハナシを進めるが『<em>ミスター・ハピゴン</em>』は正真正銘、大野さんの初リーダー・アルバムである。しかしそれと同時に皮肉なことに、ジャズ・ピアニストとしての大野さんといえば、この作品に止めを刺した感が強い。なぜなら、このアルバムがレコーディングされたのは1971年だが、大野さんはこのあと徐々にプレイヤーとしての仕事を減らし作編曲家としての活動に専念するようになっていくからだ。<strong>大野雄二トリオ</strong>名義のアルバムはこれ１枚だし、それ以降に<strong>池田芳夫</strong>(b)、<strong>岡山和義</strong>(ds)といった本作と同一のサイドメンで吹き込まれたレコードといえば、不遇のクラブ・シンガー、<strong>アン・ヤング</strong>の『<em>春の如く</em>』(1975年)くらいのもの。そして1971年といえば前述の『おひかえあそばせ』の放送が開始された年でもある。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　では、まずは『<em>ミスター・ハピゴン</em>』に至るまでの、大野さんのジャズ・ピアニスト時代を振り返ってみよう。大野さんは1941年５月30日、スタジオジブリのアニメ映画『おもひでぽろぽろ』(1991年)の舞台となったローマ風呂で知られる、静岡県熱海市のホテル大野屋の次男坊として生まれた。中学時代にジャズに目覚め、高校時代にはバンド演奏を開始した。その後、<strong>慶應義塾大学ライト・ミュージック・ソサイェティー</strong>で活躍し、<strong>鈴木宏昌</strong>、<strong>佐藤允彦</strong>とともに“慶應三羽烏”として勇名を馳せた。卒業後はクラリネット奏者、<strong>藤家虹二</strong>のクインテットに加入、プロ・ミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせる。1963年のことだ。ところがスウィング系のバンドで演奏することに違和感を覚えた大野さんは、１年ほどで<strong>藤家虹二クインテット</strong>を脱退してしまう。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-7803 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/recordbass.png" alt="レコードを持った女性とベーシスト" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/recordbass.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/recordbass-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　その後はモダン・ジャズのみに集中することを決意し、１年ほどフリーのプレイヤーとして活動した。そして1965年、大野さんは<strong>白木秀雄クインテット</strong>に参加する。白木さんは、東京芸術大学音楽学部打楽器科において指揮者の<strong>岩城宏之</strong>と同輩で、39歳という若さでこの世を去った不世出の天才ドラマーである。大野さんはこのバンドに３年間在籍したが、その間に白木さんの２枚のリーダー作『<em>加山雄三の世界</em>』(1966年)『<em>加山雄三の世界 第２集</em>』(1967年)のレコーディングにも参加した。おそらくこれらが、氏のもっとも古い吹き込みだろう。注目すべきは、このレコーディングにおいて大野さんがプレイヤーにとどまらず、すでにアレンジャーとしても活躍しているということ。ファンキー・ジャズからボサノヴァまで、そのモダンなセンスが発揮されている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　このときの<strong>白木秀雄クインテット</strong>のメンバーは、 <strong>白木秀雄</strong>(ds)、<strong>日野皓正</strong>(tp)、<strong>稲垣次郎</strong>(ts, fl)、<strong>大野雄二</strong>(p)、<strong>稲葉国光</strong>(b)。さらに上記のアルバムのうち２枚目にはゲスト・プレイヤーとして、大野さんのレコーディングやライヴでおのじみの<strong>杉本喜代志</strong>(g)が参加している。いまから思うとみなその後、日本のジャズ・シーンを牽引するプレイヤーばかりだ。そんな猛者たちの強烈なインパクトを与える演奏のなかでも、大野さんのファンキーかつソウルフルなプレイ・スタイルのピアノの妙技は、ひときわ鮮やかに映る。ぼくはここでの氏のパフォーマンスに、いささか<strong>ホレス・シルヴァー</strong>や<strong>ラムゼイ・ルイス</strong>からの影響を感じるのだけれど、みなさんはいかが思われるだろうか。いずれにしても、それはキャッチーなプレイに相違ない。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そんな大野さんのピアニズムがよりエキサイティングかつイマジナティヴに展開されるのが、<strong>日野皓正クァルテット</strong>の『<em>アローン・アローン・アンド・アローン</em>』(1967年)である。このレコーディングは、<strong>白木秀雄クインテット</strong>に在籍中の<strong>日野皓正</strong>(tp)、<strong>大野雄二</strong>(p)、<strong>稲葉国光</strong>(b)の３人と、日野さんの実弟で当時ギタリストの<strong>澤田駿吾</strong>のグループに参加していた<strong>日野元彦</strong>(ds)とによって行われた。このアルバムにおいて、トラディショナル・ポップ、リズム・アンド・ブルース、それにモード・ジャズが強く意識されているのは明らかだが、そういった従来のハード・バップを拡大するかのごとき実験精神は、たとえば<strong>ハービー・ハンコック</strong>のブルーノート作品に通じるものがある。大野さんのプレイも、きわめてグルーヴィーだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そのいっぽうで、このアルバムのタイトル・ナンバー「アローン・アローン・アンド・アローン」から溢れるリリシズムが、なんとも奥深くはかりしれない。日野さんのオリジナル曲で、かねてからライヴでリクエストが絶えない人気曲だった。ある日銀座のクラブで日野さんがステージに立っていたところ、たまたまこの店を訪れた来日中のトランペッター、<strong>ブルー・ミッチェル</strong>が、この曲をいたく気に入り楽譜を持ち帰ったというのは、有名なハナシ。そんなバラードの名曲において、日野さんのトランペットは終始ブリリアント。そして大野さんのピアノが、圧倒的な存在感を放つ。アドリブ・パートでは、絶妙なレイドバック感覚でソロを展開。バッキングも当意即妙だ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　この「アローン・アローン・アンド・アローン」は、過去に２回レコーディングされている。ピアニストはそれぞれ異なり、<strong>ブルー・ミッチェル</strong>の『<em>ダウン・ウィズ・イット</em>』(1965年)においては<strong>チック・コリア</strong>が、<strong>白木秀雄クインテット＆スリー琴ガールズ</strong>の『<em>さくら さくら</em>』(1965年)においては<strong>世良譲</strong>が、各々独自の解釈でバッキングとソロを披露。コリアは相も変わらずやたら上手いし、世良さんのタッチはきわめて優雅だ。しかしながらぼくには、大野さんのプレイがもっとも印象に残った。そして、大野さんは副次的な演奏をするとき、ひときわセンスが光るピアニストであると、あらためて感じられたのである。そのロマンティックでドラマティックな伴奏は絶品だが、このあたりがのちのスタイリッシュな大野サウンドにつながるようにも思われる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　大野さんが優れたアカンパニストであることは、<strong>マーサ三宅</strong>の『<em>マイ・フェイヴァリット・ソングス</em>』(1970年)、あるいは<strong>笠井紀美子</strong>の『<em>ジャスト・フレンズ</em>』(1970年)といった、フィメール・シンガーのアルバムを聴いていただければ、すぐにおわかりいただけるだろう。前者はリズム・セクションに管楽器や弦楽器が加えられた、ポップなジャズ・アルバム。スコアはすべて、大野さんのペンによるものだ。演奏者としての側面がより引き立っているのは、やはりピアノ・トリオのみでサポートした後者だろう。大野さんはここでときにエレガント、ときにダイナミックな極上のピアノ・プレイを披露している。なお、このときの<strong>大野雄二トリオ</strong>は、<strong>大野雄二</strong>(p)、<strong>水橋孝</strong>(b)、<strong>小原哲次郎</strong>となっている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc4">ジャズ・ピアニストとしてもっとも脂が乗っていた時期の吹き込み</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それらのヴォーカル・アルバムより少しまえの吹き込みになるが、<strong>富樫雅彦=鈴木弘クインテット</strong>の『<em>ヴァリエイション</em>』(1969年)、そして<strong>山下洋輔トリオ</strong>、<strong>沖至トリオ</strong>、<strong>笠井紀美子</strong>とともに吹き込まれたセッション・アルバム『<em>トリオ・バイ・トリオ・プラス・ワン</em>』(1970)は、大野さんのジャズ・ピアニスト時代を語るときに外すことのできない作品である。前者において氏は、グルーヴィーなプレイはもとより意外にもフリー・ジャズを演っていたりする。映画『犬神家の一族』のフィルム・スコアにもそんな一面が窺えるが、原点はここにあった。後者では<strong>ジョゼフ・コズマ</strong>の「枯葉」や、大野さんのオリジナル「ケニーズ・ムード」において、<strong>大野雄二トリオ</strong>が迫力満点のパフォーマンスを披露している。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　興味深いのは、このときの演奏についての大野さんのコメント。氏は自己のトリオについて、<strong>シダー・ウォルトン</strong>や<strong>ハロルド・メイバーン</strong>のようなピアノ・トリオらしいトリオにしようとこころがけていると語っているのだ。実際、当時の大野さんといえば、評論家たちの間では主流派に属するジャズ・ピアニストと目されていたようだ。確かに<strong>大野雄二トリオ</strong>の演奏は、本質的な部分ではナチュラルでホットに響く。それでも決してそのスタイルは旧態依然としたものではなく、フレッシュな感覚に満ち溢れたもの。大野さん自身についても、ジャズに対するキャパシティがすこぶる大きなピアニストと、ぼくは思うのである。前述の<strong>富樫雅彦</strong>と<strong>鈴木弘</strong>との双頭コンボでの、氏のニュー・ジャズへのアプローチからもそう感じられる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　この『<em>トリオ・バイ・トリオ・プラス・ワン</em>』は、1970年５月20日に銀座ヤマハ・ホールで実況録音されたものだが、<strong>大野雄二トリオ</strong>の演奏はモダン・ジャズの本流をいくものでありながら、ライヴということもあり通常よりヴィヴィッドでラディカルなパフォーマンスとなっている。アルバムのラストを飾る大野さんのオリジナル「シーム・オブ・アンノウン・ピープル」では、<strong>沖至トリオ</strong>、そして<strong>笠井紀美子</strong>を巻き込んで、おもいきりアヴァンギャルドな演奏が展開されている。ここでの大野さんのピアノ・プレイからぼくは、ウォルトンやメイバーンよりも、<strong>ジョン・コルトレーン・クァルテット</strong>のメンバーだったころの<strong>マッコイ・タイナー</strong>をイメージしてしまった。いずれにしてもこの吹き込みは、ジャズ・ピアニスト、<strong>大野雄二</strong>を知る上で貴重なものと云える。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-7804 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/recorddrums.png" alt="レコードを持った女性とドラマー" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/recorddrums.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/recorddrums-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　このときの<strong>大野雄二トリオ</strong>は、<strong>大野雄二</strong>(p)、<strong>水橋孝</strong>(b)、<strong>岡山和義</strong>(ds)となっている。その後、水橋さんが脱退しその後釜に<strong>池田芳夫</strong>が座った。そしてその翌年に吹き込まれたのが『<em>ミスター・ハピゴン</em>』である。これまでお伝えしてきたとおり、大野さんがジャズ・ピアニストとしてもっとも脂が乗っていた時期の吹き込み。そして皮肉にも氏が、もちまえの作曲、編曲の才能を活かしてテレビCM、テレビ番組や映画の音楽、ポップ・ミュージックにおける、サウンド・クリエイターとしての活動に専念する直前のレコーディングということになる。ジャズ・ピアニスト時代の唯一の<strong>大野雄二トリオ</strong>名義のアルバムという点でも、価値のある１枚と云える。のちに大野さんは、ジャズ・プレイヤーとして本格的に復帰するけれど、それは2000年代に入ってからのことだった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ということで、肝心の『<em>ミスター・ハピゴン</em>』について、具体的にお伝えしておこう。レコーディングは1971年、渋谷区神宮前のビクタースタジオにて行われた。エンジニアは当時、日本ビクターの録音部に所属していた<strong>梅津達男</strong>。<strong>はっぴいえんど</strong>の名作『<em>風街ろまん</em>』(1971年)の録音を手がけたひとだ。プロデューサーは、やはり日本ビクターに所属していた、文化庁長官表彰の受賞者でもある<strong>井阪紘</strong>。あらためて記すが、パーソネルは<strong>大野雄二</strong>(p)、<strong>池田芳夫</strong>(b)、<strong>岡山和義</strong>(ds)となっている。アルバムは大野さんのオリジナル「ミスター・ハピゴン」からスタート。アップテンポの12小節のブルースを基調としているが、センスのいいリハーモナイズが新鮮な印象を与える。ハミングしながら弾けるベース・ソロ、そしてよく跳ねるピアノ・ソロが痛快だ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　２曲目の<strong>ヴィクター・ヤング</strong>の「マイ・フーリッシュ・ハート」では、ピアノによるインプレッショニスティクなイントロ、ウエットなルバートが味わい深い。そしてトリオのゆったりとした演奏が、極上のハートブレイキングなムードを漂わせる。<strong>ビル・エヴァンス</strong>の演奏があまりにも有名だが、大野さんのプレイはエヴァンスのように耽美的にはならず、ドラマティックな展開を見せる。氏はのちに『<em>LUPIN THE THIRD「JAZZ」PLAYS THE “STANDARDS”</em>』(2003年)で、この曲をおなじアプローチで再演している。３曲目の<strong>アーサー・シュワルツ</strong>の「アローン・トゥゲザー」では、ビートの効いたボサロック調のアレンジに意表を突かれる。三位一体のグルーヴは圧巻だが、ハイライトはなんといってもソロも含めてジャムアウトするドラムスだろう。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　４曲目のギリシャの作曲家、<strong>タキス・モラキス</strong>が書いた「イルカに乗った少年」は、映画『島の女』(1957年)において<strong>ジュリー・ロンドン</strong>が歌った知るひとぞ知る曲。大野さんの選曲へのこだわりが感じられる。氏はこの曲をライヴ・アルバム『<em>サウンド・アドヴェンチャー・アクト・１</em>』(1975年)でも採り上げている。リリカルなソロ・ピアノによる演奏は、センスのいいコード・プログレッションゆえに原曲よりモダンに響く。レコードではここからSIDE-Bとなる。大野さんのオリジナル「マイ・リトル・エンジェル」は、メロディのブレイクが愛らしいジャズ・ワルツ。ピアノのストレートノートに近いレイドバック加減が絶妙。ときにエレガント、ときにエキサイティングな展開が鮮やかだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　なおこの曲は、<strong>石坂浩二</strong>のリーディング・アルバム『<em>音楽と幻想 第１集</em>』(1971年)に収録されている「ウィとノンと黄色いブルドーザ」の背景音楽として「ミスター・ハピゴン」や「ケニーズ・ムード」とともにプレイされている。こちらは、<strong>大野雄二</strong>(p)、<strong>稲葉国光</strong>(b)、<strong>杉本喜代志</strong>(g)による、ドラムレスのトリオ演奏となっている。つづく<strong>ジミー・ウェッブ</strong>の「恋はフェニックス」は多くのアーティストによってカヴァーされているポップ・ナンバーだが、ここでは雰囲気がガラリと変わりノーブルでカジュアルなボッサとしてプレイされている。テーマに観られるペダルポイントの技法が特徴的だ。さらに<strong>ブロニスラウ・ケイパー</strong>の「オン・グリーン・ドルフィン・ストリート」では、ピアノ・トリオの真髄とも云うべき演奏が繰り広げられる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ピアノによる畳みかけるようなスウィンギーなフレージング、ベースのしなやかでよく歌うソロ、ピアノとドラムスとの疾風怒涛の４バースと、モダン・ジャズの模範的な演奏が展開される。ジャズ・ピアニスト、<strong>大野雄二</strong>の面目躍如たる演奏だ。そしてラストを飾るのは、<strong>ロバート・メリン</strong>と<strong>ガイ・ウッド</strong>共作「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」で、ソロ・ピアノによる演奏。大野さんは、この類稀なる美しいメロディをあっさりとした感じで弾いている。そのことが却って懐旧の情を誘い、いささか感傷的な気分にさせる。まるで大野さんのロマンティックな性格を垣間見るようだ。いずれにせよこの『<em>ミスター・ハピゴン</em>』は、氏のジャズ・ピアニストとしての実力が遺憾なく発揮された傑作。ぜひ手にとっていただきたい１枚である。</p>
<p>&nbsp;</p>
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		<title>大野雄二＆ユー・アンド・エクスプロージョン・バンド / 24時間テレビ「愛は地球を救う 」(1978年)</title>
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		<dc:creator><![CDATA[kimama]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 10 Aug 2025 07:33:11 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[Soundtrack]]></category>
		<category><![CDATA[Yuji Ohno (大野雄二)]]></category>
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					<description><![CDATA[宇宙から愛をこめて、地球に住む宇宙人のあなたへ──大野雄二＆ユー・アンド・エクスプロージョン・バンドによる『24時間テレビ「愛は地球を救う 」』のサウンドトラック・アルバム]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h2><span id="toc1">宇宙から愛をこめて、地球に住む宇宙人のあなたへ──大野雄二＆ユー・アンド・エクスプロージョン・バンドによる『24時間テレビ「愛は地球を救う 」』のサウンドトラック・アルバム</span></h2>

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<div class="label-box-content block-box-content box-content">
<p class="wp-block-paragraph"><img loading="lazy" decoding="async" class="wp-image-703 alignleft" style="margin-bottom: 0px;" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png" alt="" width="101" height="92" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-300x274.png 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records.png 640w" sizes="(max-width: 101px) 100vw, 101px" /><em>Album : 大野雄二＆ユー・アンド・エクスプロージョン・バンド / 24時間テレビ「愛は地球を救う 」(1978)</em></p>
<p style="text-align: right;"><em>Today&#8217;s Tune : Love Saves The Earth (愛は地球を救う)</em></p>
</div>
</div>

  <div id="toc" class="toc tnt-disc toc-center tnt-disc border-element"><input type="checkbox" class="toc-checkbox" id="toc-checkbox-12" checked><label class="toc-title" for="toc-checkbox-12">目次</label>
    <div class="toc-content">
    <ol class="toc-list open"><li><a href="#toc1" tabindex="0">宇宙から愛をこめて、地球に住む宇宙人のあなたへ──大野雄二＆ユー・アンド・エクスプロージョン・バンドによる『24時間テレビ「愛は地球を救う 」』のサウンドトラック・アルバム</a><ol><li><a href="#toc2" tabindex="0">テレビ『24時間テレビ「愛は地球を救う」』と自分とのリレーション</a></li><li><a href="#toc3" tabindex="0">リニューアルまえの『24時間テレビ「愛は地球を救う」』の音楽</a></li><li><a href="#toc4" tabindex="0">高品質を誇る演奏と録音──大野サウンドが満載の贅沢な１枚</a></li></ol></li></ol>
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<h3><span id="toc2">テレビ『24時間テレビ「愛は地球を救う」』と自分とのリレーション</span></h3>
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<p>　来たる2025年８月30日(土)から８月31(日)にかけて、日本テレビ系列および沖縄テレビ放送で『24時間テレビ「愛は地球を救う」』が生放送される。みなさんもよくご存知のとおり、日本各地でチャリティ・キャンペーン活動が行われる、年１回の長時間特別番組である。どちらかというと、テレビ番組(特にバラエティ番組)に関心のないぼくとしては「まだやっていたのか」という感想をもつのみ。とはいってもかく云うぼくも、1978年にこの番組がスタートした当時はいわゆるテレビっ子だったから、その画期的な企画に興味をもったし、番組の一部のコンテンツにも魅力を感じたもの。特に日曜日の朝からはじまるアニメ・スペシャルのコーナーは、毎年楽しみにしていた。</p>
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<p>　というか、ちゃんと観ていたのはそのコーナーだけだったかもしれない。あとは観るともなく観ていたのだろう。もちろん24時間もテレビをつけているなんて、ナンセンスだ。だからマンガの神様である<strong>手塚治虫</strong>が率いる手塚プロダクションによって制作されたオリジナル・アニメが終了したときは、ぼくはあっさりとこの番組を観るのをやめてしまった。ちなみに手塚プロがこの番組から撤退した理由は、1989年２月９日、手塚さんが胃がんによって60歳という若さで亡くなられたこと。その年は手塚さんの自伝が盛り込まれた最終作『手塚治虫物語 ぼくは孫悟空』(1989年)が放送されたが、翌年のアニメ・スペシャルのコーナーでは『それいけ！アンパンマン』のスペシャル版が放送され、驚きと失望を禁じ得なかった。</p>
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<p>　そんなわけで、いまのぼくは『24時間テレビ「愛は地球を救う」』にまったく興味がないのだけれど、番組に問題が多いせいか批判的な世間の雑音があれやこれやと耳に入ってくる。特に日本テレビ系列の放送局の幹部社員が、寄付金を着服していたことは大きく採り上げられた。ほかにもヤラセ疑惑だとかセクハラ問題だとか、なにかとお騒がせな番組だ。そもそもチャリティ番組にもかかわらず出演タレントにギャラが支払われていること、募金の使い道に不透明な部分があることは、かなりまえから批判されていたように記憶する。まあ門外漢のぼくは番組を非難するつもりはないけれど、今年も恒例行事のようにブーイングされていると小耳にはさんだ。これには不謹慎ながら、ぼくもちょっと笑ってしまった。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-7750 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/lse1.png" alt="宇宙空間に浮かぶ24hの文字" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/lse1.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/lse1-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　まあこの件についてはあまり詳しくないのだけれど、今回の出演者のうち国民的男性アイドルとこれまた国民的女優とが、番組放送をまえにして熱愛を報じられた。にもかかわらず、いざ番宣ポスターが公開されてみると、そこに写るふたりが着用するチャリTシャツなるものが、はばかりなくペアルック(同色)になっていたのだという。これはあまりにも配慮がないと、またまた番組はほうぼうからそしりを受けているようだ。どうでもいいことのようにも思えるけれど、ファンのかたたちにとっては大問題なのだろう。ホント、お騒がせな番組である。それにしても、まさかこの件、視聴率を稼ぐために話題作りが図られ、作為的に仕組まれたことなのでは──なんて、ひねくれた観かたをするのは果たしてぼくだけだろうか。</p>
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<p>　いずれにしても、現代において、テレビ視聴以外のメディア利用の優位性がどんどん向上しているのは紛れもない事実だし、ユーザーにとって選択肢が増えるというのはいいことだと、ぼくは思う。それによって、相対的にテレビ視聴の頻度が低下するのは、ごく当たりまえの現象なのである。だからこそ、日本のみならず世界各国でテレビ離れの傾向がある昨今、テレビ番組制作に関わる人間は、手っ取り早く話題づくりに勤しむのではなく、真に価値のあるコンテンツをリリースしていかなければならないのではないだろうか。いささか辛らつな云いまわしになってしまったけれど、要はかく云うぼくだって面白いテレビ番組を観たいと思っているわけだ。今年も『24時間テレビ「愛は地球を救う」』を、観ることはないと思うけれど──。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そんな『24時間テレビ「愛は地球を救う」』のコンテンツについてぼくは、いまとなっては世間のウワサですら歯牙にもかけないほどになってしまっているのだけれど、自分とのリレーションがまったくないというわけではない。それゆえ、いまこの長時間特別番組について記述しているのである。実はこのショー・プログラムには、前述の手塚アニメも然りだが、それ以上にかつてこころを惹かれるものがあった。それはほかでもない、番組を彩る背景音楽だ。ではみなさんは『24時間テレビ「愛は地球を救う」』の音楽というと、どんな曲を思い浮かべるだろうか。おそらく多くのかたが、すぐにグランドフィナーレで大合唱される「サライ」という曲をアタマに浮かべるのではなかろうか──。</p>
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<p>　全国の視聴者から寄せられたメッセージをもとに作られた「サライ」は、番組のテーマ・ソングとして1992年から毎年使用されている。一般公募で集められた歌詞をひとつにまとめた、いわゆる代表作詞者はいまは亡きシンガーソングライターの<strong>谷村新司</strong>。作曲したのは、<strong>弾厚作</strong>こと俳優で歌手の<strong>加山雄三</strong>。番組のなかで谷村さんと加山さんとがメイン・ヴォーカルを務めるのが恒例だったこの曲は、シングルCD(８センチCD)として音盤化された。このシングルCDは過去にオリコンチャートで最高位20位を記録し、1992年11月のリリースから33年目を迎えた現在でも販売が継続されているという超人気盤だ。なお音盤においてアレンジを手がけたのは、“ハネケン”ことピアニストで作曲家の<strong>羽田健太郎</strong>(故人)である。</p>
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<p>　この「サライ」はいまも多くのひとたちから支持されているようだけれど、正直なところぼくのこころにはそれほど響かなかった。これは飽くまで、好みの問題だと思う。ではぼくの嗜好を満たす『24時間テレビ「愛は地球を救う」』の音楽とはなんであったかというと、まさに名曲の誉れ高い「サライ」がテーマ曲となる以前のもの。実はこの「サライ」が誕生した1992年(第15回の放送時)に、番組は大幅にリニューアルされた。ありていに云えば、視聴率の低迷に対するテコ入れだったのだろう。結果、番組はエンターテインメント色を強めるよう軌道修正されたのである。前述のとおりぼくは、1989年の手塚アニメの終了とともにこの番組への興味をすっかり失っていたのだが、このリニューアルはそれに拍車をかけるものだった。</p>
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<h3><span id="toc3">リニューアルまえの『24時間テレビ「愛は地球を救う」』の音楽</span></h3>
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<p>　若いひとたちはご存知ないと思うけれど、リニューアルまえのグランドフィナーレの定番曲といえば、<strong>ザ・バーズ</strong>という音楽ユニットが歌う「Magic Feeling of Love(愛はマジック)」や「Our Beautiful Planet Forever(この星をあなたに)」だった。この<strong>ザ・バーズ</strong>というのは、日本テレビ音楽学院(現在の日テレ学院タレントコース)の生徒のなかから選抜されたメンバーで構成されている。1976年に発表された、全国高等学校サッカー選手権大会のイメージソング「ふり向くな君は美しい」は広く知られているが、この曲を歌っていたのがこの<strong>ザ・バーズ</strong>である。そのほかにも、<strong>東京少年少女合唱隊</strong>が歌う「Ever Green Love(エバー・グリーン・ラブ〜人間という名の大きな樹)」が、グランドフィナーレに花を添えていた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　以上の３曲は、番組リニューアルにともない一切使用されなくなった。率直に云うとチャリティ・キャンペーンで歌われる曲としては、ぼくは「サライ」よりもこちらの３曲のほうが相応しいと思うのだけれど、みなさんはいかが思われるだろうか。まあそれはともかく、このチャーミングな３曲を作曲したのはだれあろう、ジャズ・ピアニストで作曲家の<strong>大野雄二</strong>。大野さんはこれらの曲のライティングにとどまらず、1978年の番組スタート時から13年間『24時間テレビ「愛は地球を救う」』の音楽監督を務めた。だが1991年(第14回の放送時)をもって大野さんは、当時日本テレビのプロデューサーだった<strong>都築忠彦</strong>らとともに、番組を降板する。番組のコンテンツがマンネリ化し、視聴率も低迷したからだろう。</p>
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<p>　とはいっても、むしろリニューアル後のほうが番組の方向性にブレが生じたように、ぼくには思われてならない。平たく云えば、番組内容が面白くなくなったと感じられた。いずれにしても、当時ジャズ・シーンから飛び出してきた新進気鋭の作曲家として注目を集めていた<strong>大野雄二</strong>による洋楽顔負けの高品質の音楽には、ぼくも大いに胸をときめかせた。そして間違いなく、劇場作品に引けをとらないクオリティの高さを誇る手塚さんのアニメ・スペシャルもそうだけれど、当初『24時間テレビ「愛は地球を救う」』のコンテンツには、視聴者をワクワクさせるものがあったのである。さらには、番組がスタートする直前の1978年８月25日、オリジナル・サウンドトラック・アルバムがリリースされたが、これもまたセンセーショナルな出来事だった。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-7751 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/lse2.png" alt="宇宙空間に浮かぶレトロなテレビ" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/lse2.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/lse2-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　ショップの店頭でこのレコードを見つけたとき、ぼくはまだ『24時間テレビ「愛は地球を救う」』のことをなにも知らなかったけれど、そのジャケットのモダンなセンスが光るアートワークに胸を高鳴らせたもの。タイポグラフィ制作のオーソリティである<strong>浅葉克己</strong>によるアートディレクション、スーパーリアルイラストレーションの先駆者として知られる<strong>山口はるみ</strong>が描く<strong>ピンク・レディー</strong>のイラストは、いま観てもスタイリッシュだ。幸いなことに、大野さんの昔の作品を何枚かリイシューしているブリッジが、本盤もオリジナル・ジャケットを忠実に再現してCD化しているので、ぜひ手にとっていただきたい。そして、大野さんがノリに乗っていた1978年の贅沢なサウンドを、じっくり味わっていただければ幸いである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　大野さんがノリに乗っていたというのは、決して大げさな表現ではない。1978年の大野さんの仕事ぶりは、スゴいことになっているのだ。この年の大野ワークスといえば枚挙にいとまがないので、ここでそれを列挙するのは、代表的なアルバム以外は差し控えさせていただく。1978年にリリースされたアルバムといえば、なんといっても大野さんにとってライフワークとなった、アニメ『ルパン三世』シリーズの最初のLPレコード『<em>ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック</em>』が挙げられる。テレビアニメのサントラ盤にもかかわらず、販売元の日本コロムビアはイギリスのサトリル・レコードのレーベルを使用。これは当時、サトリルと日本テレビ音楽(NTVM)が提携していたからである。その外観には、子ども向けの番組をイメージさせるところは微塵もない。</p>
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<p>　このアルバムひとつとっても、大野サウンドが洗練された華麗な様式美を極めるに至るのは、やはり1978年だったとぼくは確信する。<strong>大野雄二</strong>という音楽家は、もともとジャズ・ピアニストでありながら、アメリカン・ポップ、フィリー・ソウル、ブラジリアン・ミュージックなどから影響を受け、ついには自己の音楽をおなじみのフュージョン・スタイルに昇華させたのである。そんな大野さんのクールな音楽は、この年にレコードとして矢継ぎ早に世に送り出された。サウンドトラック・アルバムだと『<em>大追跡</em>』『<em>24時間テレビ「愛は地球を救う」</em>』『<em>野性の証明</em>』とリリースされていき、クリスマスまえには早くも『<em>ルパン三世・２</em>』が発売された。なお『<em>24時間テレビ「愛は地球を救う」</em>』と『<em>野性の証明</em>』とは、同時進行で吹き込まれたという。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それらのサウンドトラック・アルバムのリリースの間隙を縫って、大野さんにとってはじめての本格的フュージョン・スタイルのリーダー作『<em>スペース・キッド</em>』が制作され、大野さんとは長年コンビを組んだブラジル、サンパウロ出身のシンガー、<strong>ソニア・ローザ</strong>の４枚目のアルバム『<em>サンバ・アモール</em>』のレコーディングが行われた。ローザのアルバムで大野さんはプロデュース、作編曲、キーボードを担当。内容的には『<em>スペース・キッド</em>』の姉妹編とも受けとめられる。ローザは1969年から活動の拠点を日本に置いているが、大野さんと仕事をすることがきわめて多かった。本盤には大野さんが劇伴を手がけた、テレビ朝日系ドラマ『遥かな坂』(1979年)の主題歌「東京イン・ザ・ブルー」も収録されている。</p>
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<p>　このころの大野さんの音盤はどれもそうなのだけれど、この『<em>24時間テレビ「愛は地球を救う」</em>』もまたご多分に漏れず、サントラ盤とはいえどんなポピュラー・ミュージックにも引けをとらない鑑賞用作品に仕上がっている。アルバムのプロデュースは、大野さん自身とNTVMの<strong>飯田則子</strong>(故人)とが手がけている。演奏は<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>となっているが、当時からそのクレジットは大野さんが関わった諸々の音盤で散見された。実はこのバンド名義、飯田さんがエグゼクティヴ・プロデューサーを務める作品にのみ使用されていたもの。もしかするとバンド名を考案したのも、彼女なのかもしれない。なおこのバンドは1983年に、唯一のオリジナル・アルバム『<em>フル・コース</em>』をリリースした。だが飯田さんは、奇しくもこの年に日本テレビ音楽を退社している。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　気になるのは<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>の顔ぶれだが、実際のところ大野さん以外は固定メンバーがひとりもいない。なぜならそのメンバーとしてクレジットされている面々は、みな各々のレコーディングにおいて起用されたプレイヤーだから。しかもその誰もが、高度な演奏スキルをもつ日本を代表するスタジオ・ミュージシャンである。そして、アルバム『<em>24時間テレビ「愛は地球を救う」</em>』のジャケットの裏面に記載されている、<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>は以下のとおり──。<strong>大野雄二</strong>(key)、<strong>松木恒秀</strong>(g)、<strong>岡沢章</strong>(b)、<strong>市原康</strong>(ds)、<strong>渡嘉敷祐一</strong>(ds)、<strong>ラリー寿永</strong>(perc)、<strong>ジェイク H. コンセプション</strong>(as)の７名(松木さん、寿永さん、コンセプションさんはすでに他界している)。クレジットはないが、レコーディングには上記のリズム・セクションにホーンズ＆ストリングスが加えられている。</p>
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<h3><span id="toc4">高品質を誇る演奏と録音──大野サウンドが満載の贅沢な１枚</span></h3>
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<p>　メンバーはみな大野さんの寵愛を受けたファーストコール・ミュージシャン、延いては日本のトッププレイヤーと云えるが、そのうち松木さん、岡沢さん、市原さん、渡嘉敷さんは、<strong>鈴木宏昌</strong>(故人)率いる<strong>コルゲン・バンド</strong>のメンバーである。具体的には初期のドラマーが市原さんで、1977年の後半からその後任に渡嘉敷さんが就いた。バンドのリーダーである鈴木さんは、大野さんにとって<strong>慶應義塾大学ライト・ミュージック・ソサイェティー</strong>時代の先輩にあたるジャズ・ピアニストだ。この<strong>コルゲン・バンド</strong>は1979年に<strong>ザ・プレイヤーズ</strong>と改名され、さらなる飛躍を遂げる。単刀直入に云うが、1980年代の日本のフュージョン・シーンにおいて、そのミュージカリティとパフォーマンスには他のバンドのそれとは一線を画すものがあった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　<strong>ザ・プレイヤーズ</strong>はさながら、<strong>ウェザー・リポート</strong>のような飛び抜けて新しい趣向と、<strong>スタッフ</strong>のような地に足のついた演奏技術とをもち合わせたバンド。かいつまんで云えば、なにを演っても上手い音楽隊だった。そのことを念頭に置けば、<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>の演奏が高品質を誇るのも自明のことと、おのずと得心がいくというもの。高品質といえば、レコーディング・エンジニアを大野さんの作品ではおなじみの<strong>伊豫部富治</strong>が務めているが、毎度のごとくクオリティの高いサウンドステージを作り上げている。伊豫部さんはひとつの楽器を際立たせるようなことはあまりなく、各々の楽器をバランスよく配置する。それでもトータル・サウンドは、いいところがちゃんと聴こえてくるという、すこぶる耳に優しいものである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ときにリーダーの大野さんは、このレコーディングにおいて多種多様のキーボードを演奏している。これもまた、このころの大野サウンドの特徴と云えるかもしれない。使用楽器は以下のとおり──。フェンダー・ローズ 88、ヤマハ・エレクトリック・グランド CP-70、ヤマハ・ポリフォニック・シンセサイザー CS-80、アープ・オデッセイ、コルグ・ヴォコーダー VC-10、コルグ・ポリフォニック・シンセサイザー PS-3300。ここで特に注目したいのはヤマハやコルグのシンセサイザーで、それらは当時開発されて間もないものばかり。時代の先端テクノロジーを自己の音楽に逡巡することなく導入していくところは、いかにも大野さんらしいが、結果的にはサウンドにかつてないほどの彩りが添えられた。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-7752 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/lse3.png" alt="宇宙空間に浮かぶ地球" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/lse3.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/08/lse3-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　収録曲は１曲を除いて、すべて大野さんの曲である。アルバムのオープニングを飾る「Love Saves The Earth(愛は地球を救う)」は、番組全体のテーマ曲。これほどまでゴージャズ＆ラグジュアリアスな大野サウンドは、かつてなかった。オーケストラにデジタル・シーケンサーが絡むイントロから、迫力満点。有名な<strong>アレクサンダー・カレッジ</strong>の「Theme From Star Trek(宇宙大作戦のテーマ)」を彷彿させるスペクタクルな曲調が爽快だ。９小節目からのメロディック・ラインに<strong>ジョージ・ガーシュウィン</strong>の「パリのアメリカ人」を想起させられたりもするが、ここにあるサウンドはコンテンポラリーなシンフォニック・ジャズとでも名状したくなるもの。ホルンのオブリガートやストリングスの高速デタシェなど、意匠の凝らされたアレンジが素晴らしい。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　のちに大野さんはこの曲を自己のリーダー作『<em>Made In Y.O.</em>』(2005年)において、サンバ・スタイルにリアレンジしている。２曲目の「Birds At The Break Of Dawn(鳥たちの朝)」は、ドキュメンタリー『世界の福祉・日本の福祉』のテーマ曲。鳥のさえずりをイメージした女性コーラスと口笛のようなアープ・オデッセイとが、柔らかく爽やかな空気を作り出す。アルトのソロも清々しいが、途中からリズムが疾走感溢れるボサノヴァになるところがなんとも心地いい。３曲目の「The Lost World(ロスト・ワールド)」は、アニメスペシャル『100万年地球の旅 バンダーブック』からの１曲。ハーモニカやトランペットによるメロディック・ライン、スネアのロール、鐘や鞭のサウンド・エフェクトなどには、<strong>エンニオ・モリコーネ</strong>のマカロニ・ウェスタン作品からの影響が感じられる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　４曲目の「Pinky Rosy Princess(ピンキー・ロージー・プリンセス)」もまた『100万年地球の旅 バンダーブック』からのトラック。オーボエによるメランコリックなテーマと、ストリングスのオクターヴ上がるコーラスが叙情的な美しいバラードだ。５曲目の「Flying Through Time(時間旅行)」は、サイエンス番組『2001年・未来の旅』のテーマ曲。ヴォコーダーやエレクトロニック・ドラムなどが使用されたコズミック・サウンドが炸裂。８分の６拍子のロック・ビートとギターのエフェクトも刺激的だ。６曲目の「Radio Universe Calling(2001年愛の詩)」は、<strong>ピンク・レディー</strong>が歌うポップ・ナンバー。<strong>阿久悠</strong>(故人)の作詞、<strong>都倉俊一</strong>の作編曲による、２分の２拍子のリズムが独特の曲。このトラックには、大野さんは関わっていない。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　レコードではここからがB面となる。アニメスペシャル『100万年地球の旅 バンダーブック』の劇伴が３曲つづく。ブラスが活かされた躍動感溢れるディスコ・ブギー「Go! Space Cruiser(宇宙の曳航)」スペーシーでロッキッシュな「Space Omen(スペース・オーメン)」クラシカルな５拍子の舞曲「S&#8217;Il Vous Plait(優しい関係)」と、大野さんのキャパシティの広さを感じさせる。つづく「Our Beautiful Planet Forever(この星をあなたに)」では、フォーク・グループ、<strong>伝書鳩</strong>の<strong>山口ますひろ</strong>のヴォーカルがフィーチュアされている。<strong>山川啓介</strong>(故人)による愛と生命の尊さを綴った歌詞を、山口さんがソフトな声色で歌い上げたスケールの大きなラヴ・ソング。ここでの大野さんのアレンジはきわめてシンプルだが、それがヒューメインなテクスチュアを生み出している。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そして「Cosmic Cocktail &#8211; A Tom Collins With A Shot Of Nitroglicerin(コズミック・カクテル)」は『ギャグマシーン・タモリ博士の宇宙的な愛情』のテーマ曲。歯切れのいい16ビートに乗って、ブラスのアンサンブルと女性コーラスとが交錯する、典型的な大野サウンドが展開される。アルバムのラストを飾るのはやはり「Magic Feeling Of Love(愛はマジック)」で、<strong>奈良橋陽子</strong>による英語詞(一部日本語詞)を<strong>ザ・バーズ</strong>が歌う。ピースフルでノスタルジック、でもモダンなところが<strong>バート・バカラック</strong>の楽曲を想わせる。いずれにせよ『<em>24時間テレビ「愛は地球を救う」</em>』は、贅沢なアルバムである。ぜひとも、多くのかたに手にとっていただきたい。なお前述の「Ever Green Love(エバー・グリーン・ラブ〜人間という名の大きな樹)」は、1982年から使用された曲なので本盤には収録されていない。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　やはり<strong>山川啓介</strong>が作詞した「Ever Green Love(エバー・グリーン・ラブ〜人間という名の大きな樹)」は、アニメスペシャル『アンドロメダ・ストーリーズ』(1982年)の主題歌で<strong>ステファニー</strong>が歌った「永遠の一秒」とカップリングされ、シングル盤としてリリースされた。またバンダイ・ミュージックエンターテインメントから『<em>手塚治虫ワールドBest of Best 24時間テレビ〜愛は地球を救う＆ユニコ オリジナル・サウンドトラック</em>』(1999年)というCDがリリースされているが、大野さんが音楽を手がけた『100万年地球の旅 バンダーブック』(1978年)『海底超特急マリンエクスプレス』(1979年)『フウムーン』(1980年)などのスコアが収録されている。さらにはCD『<em>ルパン三世 1978ミュージックファイル</em>』(2003年)などに収録されている、1978年８月３日録音のトラックは、実は『100万年地球の旅 バンダーブック』のスコアである。興味のあるかたは、どうぞ──。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p style="text-align: center;"><span style="color: #34485e;">(引きつづき<strong>大野雄二トリオ</strong>の『<em>ミスター・ハピゴン</em>』について、下の記事をお読みいただければ幸いです)</span></p>
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<p class="wp-block-paragraph">最後まで読んでいただき、ありがとうございました。</p>
</div>
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		<title>大野雄二 / 大追跡 (1978年)</title>
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		<dc:creator><![CDATA[kimama]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 01 Dec 2024 07:08:51 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[Soundtrack]]></category>
		<category><![CDATA[Yuji Ohno (大野雄二)]]></category>
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					<description><![CDATA[大野雄二率いるユー＆エクスプロージョン・バンドによる極上のサウンドトラック・アルバム『大追跡』]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h2><span id="toc1">大野雄二率いるユー＆エクスプロージョン・バンドによる極上のサウンドトラック・アルバム『大追跡』</span></h2>

<div class="wp-block-cocoon-blocks-label-box-1 label-box block-box has-border-color has-ex-a-border-color">
<div class="label-box-label block-box-label box-label"><span class="label-box-label-text block-box-label-text box-label-text">recommendation</span></div>
<div class="label-box-content block-box-content box-content">
<p class="wp-block-paragraph"><img loading="lazy" decoding="async" class="wp-image-703 alignleft" style="margin-bottom: 0px;" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png" alt="" width="101" height="92" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-300x274.png 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records.png 640w" sizes="(max-width: 101px) 100vw, 101px" /><em>Album : 大野雄二 / 大追跡 (1978)</em></p>
<p style="text-align: right;"><em>Today&#8217;s Tune : “大追跡”のテーマ</em></p>
</div>
</div>

  <div id="toc" class="toc tnt-disc toc-center tnt-disc border-element"><input type="checkbox" class="toc-checkbox" id="toc-checkbox-14" checked><label class="toc-title" for="toc-checkbox-14">目次</label>
    <div class="toc-content">
    <ol class="toc-list open"><li><a href="#toc1" tabindex="0">大野雄二率いるユー＆エクスプロージョン・バンドによる極上のサウンドトラック・アルバム『大追跡』</a><ol><li><a href="#toc2" tabindex="0">1978年は“ニッポン大野雄二年”と定めたい程スゴいことになっている</a></li><li><a href="#toc3" tabindex="0">大野作品のユー＆エクスプロージョン・バンドとはどんなバンド？</a></li><li><a href="#toc4" tabindex="0">大野サウンドにおいてもっとも理想的なフォーメーション</a></li></ol></li></ol>
    </div>
  </div>

<h3><span id="toc2">1978年は“ニッポン大野雄二年”と定めたい程スゴいことになっている</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　前回ご紹介したサウンドトラック・アルバムは、<strong>大野雄二</strong>の『<em>野性の証明</em>』(1978年)だったけれど、今回もまた大野さんの『<em>大追跡</em>』(1978年) を採り上げる。なんだかんだ云っても、大野サウンドが好きなのよ──。そう云ったら身もフタもないのだけれど、強引に進めさせていただく。お気づきかもしれないが、前回の『<em>野性の証明</em>』にしても今回の『<em>大追跡</em>』にしてもサントラ盤は、1978年にリリースされている。個人的には1978年を“ニッポン<strong>大野雄二</strong>年”と定めたい。これは冗談だけれど、それくらい1978年の大野さんの仕事ぶりは、スゴいことになっているのだ。ぼくはちょうど中学生になったばかりだったけれど、小学生のころから密かにファンだった大野さんについて、ようやく友だちに自信をもって語ることができるようになった。それが嬉しかったもの。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　1978年にリリースされた大野さんのレコードといえば、まず年のはじめに発売された『<em>ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック</em>』がすぐに思い出される。<strong>モンキー・パンチ</strong>の書き下ろしイラストがあしらわれたゲートフォールド仕様のジャケットには、得も云われぬ高級感が演出されたものとして感じられる。しかもテレビアニメのサントラ盤にもかかわらず、販売元の日本コロムビアはイギリスのサトリル・レコードのレーベルを使用。日本のプログレッシヴ・ロック・バンドのパイオニアとも云われる、あの<strong>ゴダイゴ</strong>の作品でもこのレーベルが使われていた。これは一時期、サトリルと日本テレビ音楽(NTVM)が提携していたからとのこと。いずれにしてもその外観には、子ども向けの番組をイメージさせるところは微塵もなかった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　中身のほうだって、スタイリッシュなフュージョン・サウンドが満載。アルバムの随所に、ルパン役の<strong>山田康雄</strong>をはじめとするレギュラー声優によるセリフがインサートされるとはいえ、もしそれがなかったらパーフェクトな音楽作品として十二分にイケていたであろう。いまでは国民的名曲となっている「ルパン三世のテーマ」をはじめて聴いたとき、当時すでにジャズやフュージョンに親しんでいたマセガキのぼくは、<strong>ホレス・パーラン</strong>の「コンガレグレ」を連想した。かたや「マグナム・ダンス」を聴いたときなどは、この曲はおそらく<strong>ボブ・ジェームス</strong>の「ナイト・クローラー」の二次創作だろうとさえ思った。でもそれをぼくは、少しも不実なこととは受けとめず、単純にそのサウンドのカッコよさにシビレるばかりだった。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-6266 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/detectives.png" alt="地下鉄の車内に佇む二人の刑事" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/detectives.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/detectives-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　ところでこの『<em>ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック</em>』のあと、大野さんのカッコいい音楽はレコードとして矢継ぎ早に世に送り出された。サウンドトラック・アルバムだと『<em>大追跡</em>』『<em>24時間テレビ 愛は地球を救う</em>』『<em>野性の証明</em>』とリリースされていき、クリスマスまえには早くも『<em>ルパン三世・２</em>』が発売された。その間隙を縫って、大野さんにとってはじめての本格的フュージョン・スタイルのリーダー作『<em>スペース・キッド</em>』が制作され、大野さんとは長年コンビを組んだブラジル、サンパウロ出身のシンガー、<strong>ソニア・ローザ</strong>の4thアルバム『<em>サンバ・アモール</em>』のレコーディングが行われた。ローザのアルバムで大野さんはプロデュース、作編曲、キーボードを担当。内容的には『<em>スペース・キッド</em>』の姉妹編とも受けとめられる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　サウンドトラック・アルバムこそリリースされなかったものの、テレビや映画を賑わせた大野さんの音楽はまだまだある。1978年はほんとうに、<strong>大野雄二</strong>一色の年だった。ご当人は寝食を忘れるほど仕事に没頭していたのだろう、どれもクオリティの高い作品ばかりだ。テレビドラマだと、日本テレビ系列では「土曜グランド劇場」の１本『貝がらの街』(２月18日〜４月22日)、「金曜劇場」の１本、<strong>西村寿行</strong>原作『犬笛 &#8211; 娘よ、生命の笛を吹け -』(７月７日〜８月25日)、またNHK「銀河テレビ小説」の１本、<strong>森村誠一</strong>原作『凶水系』(３月13日〜３月24日)、そしてTBS系列で放送された3時間ドラマ、<strong>松浦行真</strong>原作の『風が燃えた』(８月29日)などがある。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　上記のテレビドラマのうち『貝がらの街』と『犬笛 &#8211; 娘よ、生命の笛を吹け -』は、主題曲のシングル・レコードが発売された。前者はシティ・ポップの先駆的シンガーソングライター、<strong>南佳孝</strong>が歌った『<em>潮風通りの噂/朝もやの中を</em>』で、作詞はそれぞれ<strong>山川啓介</strong>、<strong>南佳孝</strong>が務めている。後者はインストゥルメンタル・ナンバーの『<em>犬笛のテーマ/ウェイヴレット</em>』で、特にエンドクレジットで使用された「犬笛のテーマ」はアープ・オデッセイによる口笛のような音色が強烈な印象を残す名曲。ジャズ・ピアニストの<strong>市川秀男</strong>が作曲したオープニング・テーマや劇伴もなかなかのものだけれど、大野さんの曲がもつ躍動感のあるリズムと感傷的なメロディック・ラインには到底及ばない。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　さらに映画では、<strong>松田優作</strong>主演、<strong>村川透</strong>監督による“遊戯”シリーズのうち『最も危険な遊戯』(4月８日)と『殺人遊戯』(12月２日)が公開されている。ともに<strong>小林旭</strong>主演、<strong>鈴木則文</strong>監督による『多羅尾伴内』<strong>舘ひろし</strong>主演、<strong>長谷部安春</strong>監督による『皮ジャン反抗族』が併映された、東映セントラルフィルム製作のいわゆるプログラムピクチャー。“遊戯”シリーズは3000万円の予算枠で製作された作品ではあったが、思いのほか高評価を得た。当然のごとく公開当時にはサウンドトラック・アルバムなどは発売されなかったけれど、即興演奏が活かされたりオケの代わりにソリーナ・ストリング・アンサンブルが上手く使われたりしたハードボイルドなサウンドは、各方面から称賛された。そして音源は結局、1993年にCD化された。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc3">大野作品のユー＆エクスプロージョン・バンドとはどんなバンド？</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　加えて<strong>エドモンド・ハミルトン</strong>のSF小説をNHKがテレビアニメ化した『キャプテン・フューチャー』も、サウンドトラック・アルバムの発売は翌年の８月まで待たなければならないが、番組の放映は1978年の11月にスタートしていた。確かに1979年以降も大野さんのコンポーザー、アレンジャー、キーボーディスト、そしてプロデューサーとしての活躍はとどまることを知らない。だだこれまで挙げた作品からもおわかりいただけると思うけれど、大野サウンドが洗練された華麗な様式美を極めるに至ったのは、やはり1978年だったとぼくは思う。大野さんはジャズ・ピアニストでありながら、アメリカン・ポップ、フィリー・ソウル、ブラジリアン・ミュージックなどから影響を受け、ついに自己の音楽をおなじみのフュージョン・スタイルに昇華させたのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　思えば大野さんの音楽作品に、演奏クレジットとして<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>名義が使われるようになったのも、1978年からだった。さきに挙げたレコードのうち『<em>ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック</em>』『<em>大追跡</em>』『<em>24時間テレビ 愛は地球を救う</em>』『<em>ルパン三世・２</em>』には、このバンド名がクレジットされている。そういえば大野さんがプロデュースした<strong>松田優作</strong>のアルバム『<em>Uターン</em>』においても、バック・ミュージシャンが<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>と記されていた。これもまた1978年の作品である。実はこの松田さんのアルバムの原盤権は、前述のNTVMが所有する。そう、NTVMの<strong>飯田則子</strong>がエグゼクティヴ・プロデューサーを務めたアルバムにのみ、このバンド名が使用されていたのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　飯田さんは日本テレビ系列のオーディション番組『スター誕生！』(1971年〜1983年)関連の歌手のレコードをはじめ、日本テレビ系列の人気ドラマ『太陽にほえろ！』(1972年〜1986年)『探偵物語』(1979年〜1980年)『火曜サスペンス劇場』(1981年〜2005年)などの主題歌、劇伴、そしてサウンドトラック・アルバムのプロデュースを手がけたひと。おもしろいのは、やはり日本テレビ系列のアニメ『宝島』(1978年〜1979年)の音楽プロデューサーを飯田さんが務めたとき、演奏クレジットとして<strong>ケン・アンド・フラッター・オーケストラ</strong>という名義が使われていたということ。音楽を担当したのは大野さんとも共演歴のある、ハネケンの愛称で親しまれたピアニストの<strong>羽田健太郎</strong>だった。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-6267 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/carchase.png" alt="横浜赤レンガ倉庫前でカーチェイスをする２台の車" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/carchase.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/carchase-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　その点を踏まえると、<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>というバンド名を考案したのは飯田さんのように思えてくる。いずれにしてもその後も、２枚組の日本テレビ音楽創立10周年記念アルバム『<em>NTVM AFTER 10 YEARS</em>』(1979年)や、日本テレビが放映していたアメリカのテレビドラマ『<em>白バイ野郎ジョン＆パンチ</em>』(1981年)のイメージ・アルバムなどにも、このバンド名がクレジットされている。ちなみに前者は関係者だけに配布された非売品だけれど、中古レコード店でよく見かける。<strong>ゴダイゴ</strong>、<strong>カーメン・キャヴァレロ</strong>、<strong>サリナ・ジョーンズ</strong>、<strong>スプリンター</strong>らが参加した、まさしく夢の競演盤。もちろんプロデューサーとして、飯田さんの名前もクレジットされている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　気になるのは<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>の顔ぶれだが、実際のところ大野さん以外は固定メンバーがひとりもいない。そうはいっても1983年に<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>は１枚かぎりだが、オリジナル・アルバム『<em>フル・コース</em>』をリリースしている。このときのメンバーは、<strong>大野雄二(</strong>key)、<strong>萩谷清</strong>(g)、<strong>長岡道夫</strong>(b)、<strong>市原康</strong>(ds)、<strong>鳴島英治</strong>(perc)だった。実質的には大野さんのリーダー作なのだけれど、珍しくホーンズもストリングスも入らないリズム・セクションのみの演奏となっている。バンドっぽい音にしたかったのか、結果的にそういう音になったからバンド名義にしたのかは定かでない。エグゼクティヴ・プロデューサーとして飯田さんの名前が記載されているが、彼女はこの年に日本テレビ音楽を退社した。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ついでに云うと、このレコードがちょっと厄介だったりする。大野さんの楽曲はよく既製曲との類似を指摘されることがあるのだけれど、このアルバムに収録されているいくつかの曲にはその点が顕著に現れている。まあ時代の趨勢からレパートリーに<strong>シャカタク</strong>風の曲があるのは致しかたないが、ブラジルのフュージョン・グループ、<strong>アジムス</strong>や、やはりブラジル出身のキーボーディスト、<strong>エウミール・デオダート</strong>らの楽曲に、あまりにもソックリな曲があるのにはいささか拍子抜けした。それがちょっと云い訳できない感じで、<strong>アジムス</strong>が好きなぼくの妻などは「パクリだ！」と憤慨していた。ところがスタジオワークの精鋭部隊の演奏だけに、そのスタビリティとプレザントネスが横溢するサウンドは極上。まったくもって、複雑な心境とはこのことである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それでも当時の日本のフュージョン作品のなかで、この『<em>フル・コース</em>』は極めて異彩を放っていた。強烈なロック・ビートが高速で刻まれるなか烈火のごときアドリブ・プレイが繰り出されるような音楽がもてはやされているとき、<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>が演奏していた楽曲は、すこぶるメロウに響いたもの。平たく云うと、オトナの音楽ということになる。ぼくとしては、剽窃であるか否かは置いておいて、大野さんの心地いい音楽を創出するセンスのよさを評価したいと思う。とにもかくにも<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>は、高度な演奏スキルをもったスタジオ・ミュージシャンたちが集合した音楽隊。メンバーはみな大野さんの寵愛を受けたファーストコール・ミュージシャン、延いては日本のトッププレイヤーなのだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ハナシを1978年に戻すが、実は当時大野さんがレコーディングの際に好んで声をかけていたミュージシャンといえば、<strong>コルゲン・バンド</strong>のメンバーだった。このバンドは、大野さんにとって<strong>慶應義塾大学ライト・ミュージック・ソサイェティー</strong>時代の先輩にあたるジャズ・ピアニスト、<strong>鈴木宏昌</strong>のグループ。ぼくの知るかぎりアルバムは『<em>スキップ・ステップ・コルゲン</em>』(1977年)『<em>トリトン</em>』(1979年)『<em>ア・ロンリー・フォーリング・スター</em>』(1981年)といった３枚しかないが、バンドは<strong>ザ・プレイヤーズ</strong>と改名されさらなる飛躍を遂げ、フュージョン・ファンの間で人気を博す。なお実際『<em>ア・ロンリー・フォーリング・スター</em>』は1977年11月に吹き込まれたものだから、<strong>コルゲン・バンド</strong>名義の使用は1979年に終止符が打たれたことになる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc4">大野サウンドにおいてもっとも理想的なフォーメーション</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それはそれとして<strong>コルゲン・バンド</strong>のメンバーは、<strong>鈴木宏昌</strong>(key)、<strong>松木恒秀</strong>(g)、<strong>岡沢章</strong>(b)、<strong>市原康</strong>(ds)、<strong>穴井忠臣</strong>(perc)、<strong>山口真文</strong>(ss, ts)といった顔ぶれ。なお1977年の後半からはドラムスが<strong>渡嘉敷祐一</strong>に替わっている。いずれにせよ彼らは、ポピュラー・ミュージックを演奏させたら、演奏技術から、即興力と応用力、音感やリズム感に至るまでどこをとってもトップクラス。だから大野さんは彼らを積極的に起用したのだが、みなファーストコール・ミュージシャンだからスケジュールの都合がつかないときもままある。そんなときは、たとえば<strong>直居隆雄</strong>(g)、<strong>高水健司</strong>(b)、<strong>ラリー寿永</strong>(perc)などの敏腕ミュージシャンにお呼びがかかるわけだ。そういう経緯から、<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>のメンバーは不定なのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　すっかり長くなってしまったが、ここからは『<em>大追跡</em>』についてお伝えしよう。サウンドトラック・アルバムは、番組の放映開始から少しあとの1978年５月に、いまはなきディスコメイトレコード(販売元は現在のビクターエンタテインメント)からリリースされた。ディスコメイトはヤマハのポプコン出身のシンガーソングライター、<strong>八神純子</strong>の数々の名曲を世に送り出したレーベルだ。この『<em>大追跡</em>』のレコード・ジャケットの前面には、(大野さんの名前は記載されておらず)堂々と<strong>ユー＆エクスプロージョン・バンド</strong>の名前が刻まれている。ただしメンバーのクレジットは、インサートも含めてどこにも記されていない。ただジャケットのバック・カヴァーには、バンドの演奏風景を捉えたワンショットがあしらわれている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そのモノクロームの写真から推しはかるとレコーディング・メンバーは、<strong>大野雄二</strong>(key)、<strong>松木恒秀</strong>(g)、<strong>岡沢章</strong>(b)、<strong>市原康</strong>(ds)、<strong>ラリー寿永</strong>(perc)、<strong>ジェイク H. コンセプション</strong>(as)ということになる。このメンバーは、ちょうどさきに挙げた『<em>スペース・キッド</em>』『<em>24時間テレビ 愛は地球を救う</em>』の吹き込みとおなじ顔ぶれ。大野サウンドにおいては、もっとも理想的なフォーメーションと云える。曲によってはヴィブラフォンがリードをとるが、マレットを揮っているのは<strong>金山功</strong>だろう。大野さんの作品でヴァイブといえば、このひとだ。この鉄壁なリズム隊に、ホーンズとストリングスが加わる。レコーディング・エンジニアは、おなじみの<strong>伊豫部富治</strong>が担当している。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-6269 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/catchase.png" alt="横浜中華街で追いかけっこをする２匹の猫" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/catchase.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/catchase-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　このテレビドラマは1978年４月４日から９月26日まで日本テレビ系列で放映されたが、当時の番組といえばモノラル音声での放送が当たりまえ。よって劇伴も大抵モノラルでレコーディングされていた。大野さんの場合は、２トラック・モノラルという方式をとることが多かったようだ。具体的に云うと、マスターテープの左右のチャンネルに、それぞれバッキング演奏とメロディ楽器とを、あるいはリズム・セクションとホーン・セクションやストリング・セクションとを振り分けて録音するというやりかただ。これは選曲家が映像に音づけをする際、楽曲を編集するのに都合がいい。ただレコードのほうは当然、通常のステレオ録音。レコード化が想定された楽曲は、劇伴とは別個にレコーディングされたものである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　これはアメリカの作曲家、<strong>ヘンリー・マンシーニ</strong>のマナーと似ている。大野さんのサウンドトラック・アルバムがいつも鑑賞用音楽として成立しているのは、そういう作法に則っているからだ。ドラマでは横浜を舞台に、警視庁が検挙率アップを目論み設置した特殊セクション、遊撃捜査班の活躍が描かれている。メンバーは組織からつまはじきにされた５人の刑事。ポリス・アクションでありながら、随所にアドリブ・パフォーマンスやコメディリリーフが鏤められた、それまでの刑事ドラマとは一線を画す痛快作品だ。そしてそういうコンテンツに、全体的に洗練されていて、ときに躍動感に溢れ、ときに軽妙洒脱な筆致を見せる大野サウンドは、あつらえ向きと云える。しかもそれは映像から離れても楽しめる、極上の音楽作品となっている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　レコードに針を落とすと、いきなりクルマの通過音のSEが──(CDではなぜかカットされている)。これは、<strong>デイヴ・グルーシン</strong>もサウンドトラック・アルバム『<em>ボビー・デアフィールド</em>』(1977年)でやっていた、リスナーのテンションを高める演出。短めのタム回しから管のアタックと弦のトレモロによる緊張感のあるイントロへと進行する、おなじみの「“大追跡”のテーマ」は、ブラスによるテーマとストリングスによるコーラスとのコントラストが映える名曲だ。スピーディーにフォー・オン・ザ・フロアからサンバへと移行するリズムが気持ちいい。元ネタは大野さんが敬愛する<strong>ラムゼイ・ルイス</strong>の「スリック」という曲だが、見事に大野サウンドと化している。しなやかなベース・ラインや短尺だがテナーのソロもいい。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　つづく「大通りを駆け抜けて」もやはりドラムスが歯切れのいいリズムを刻むなか、ブラスのアンサンブルが緊迫感のあるテーマを奏でる。フィリー・ソウル風のストリングスと、低音域が活かされたアブストラクトなピアノ・ソロもクール。アルトが歌うピースフルな２分の２拍子「夜景」では、ディレイの効いたフェンダー・ローズやアープ・オデッセイの音色が美しい。軽快なジャズ・ワルツ「刑事たちの散歩道」では、フルートとヴァイブのユニゾンが爽やかなを響きとキャッチーなフレージングを繰り出す。ストリングスのピチカートが軽妙、<strong>エリック・ゲイル</strong>風のギター・ソロも奥深い。ファンキーでスピリチュアルな「イリュージョン」は、リズム・セクションの即興性が高いコズミック・フュージョン。ある意味で、もっとも聴き応えがある。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　B面トップの「非常線25時」はテナーがひたすらブロウしまくるジャジーでバウンシーなフュージョン・ナンバー。イントロには<strong>ボブ・ジェームス</strong>の「ゴールデン・アップル」からの強い影響が感じられる。スモーキーなアルトがアンニュイな旋律を紡ぐ「黄昏は男の香り」は、<strong>メイナード･ファーガソン</strong>のレパートリー「征服者」を彷彿させる。やはり松木さんのゲイル風のギターが渋い。<strong>トミー・スナイダー</strong>のヴォーカルがフィーチュアされた「アイル・ビー・ゴーン」は、<strong>ジェームス・テイラー</strong>の楽曲を思わせるカントリー&amp;フォーク調の爽やかなナンバー。作詞は<strong>奈良橋陽子</strong>が担当した。スペイシーなジャズ・ファンク「黒い狙撃者」では、ハスキーなテナーがソロをほしいままにする。ラストは、スナイダー、奈良橋のコンビによる「シャドウズ・オブ・ア・マン」で、ボサノヴァとフォークが交錯するララバイ。大野節ならではの哀感が、クロージングを一段と味わい深いものにしている。</p>
<p>&nbsp;</p>
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		<title>大野雄二 / 野性の証明 オリジナル・サウンドトラック (1978年)</title>
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		<pubDate>Sun, 10 Nov 2024 07:55:39 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[Soundtrack]]></category>
		<category><![CDATA[Yuji Ohno (大野雄二)]]></category>
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					<description><![CDATA[大ヒットした角川映画第３弾『野性の証明』──大野雄二サウンドが全開したオリジナル・サウンドトラック ]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h2><span id="toc1">大ヒットした角川映画第３弾『野性の証明』──大野雄二サウンドが全開したオリジナル・サウンドトラック </span></h2>

<div class="wp-block-cocoon-blocks-label-box-1 label-box block-box has-border-color has-ex-a-border-color">
<div class="label-box-label block-box-label box-label"><span class="label-box-label-text block-box-label-text box-label-text">recommendation</span></div>
<div class="label-box-content block-box-content box-content">
<p class="wp-block-paragraph"><img loading="lazy" decoding="async" class="wp-image-703 alignleft" style="margin-bottom: 0px;" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png" alt="" width="101" height="92" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-300x274.png 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records.png 640w" sizes="(max-width: 101px) 100vw, 101px" /><em>Album : 大野雄二 / 野性の証明 オリジナル・サウンドトラック (1978)</em></p>
<p style="text-align: right;"><em>Today&#8217;s Tune : 戦慄の青い服</em></p>
</div>
</div>

  <div id="toc" class="toc tnt-disc toc-center tnt-disc border-element"><input type="checkbox" class="toc-checkbox" id="toc-checkbox-16" checked><label class="toc-title" for="toc-checkbox-16">目次</label>
    <div class="toc-content">
    <ol class="toc-list open"><li><a href="#toc1" tabindex="0">大ヒットした角川映画第３弾『野性の証明』──大野雄二サウンドが全開したオリジナル・サウンドトラック </a><ol><li><a href="#toc2" tabindex="0">読んでから見るか 見てから読むか──角川映画第３弾</a></li><li><a href="#toc3" tabindex="0">いまで云うブロックバスター作品──批判する向きもかなり多かった</a></li><li><a href="#toc4" tabindex="0">人間の孤独感や哀感あるいは優しさをヴィブラフォンで表現</a></li></ol></li></ol>
    </div>
  </div>

<h3><span id="toc2">読んでから見るか 見てから読むか──角川映画第３弾</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　映画『野性の証明』のポスターに「お父さん、怖いよ！なにか来るよ 大勢で、お父さんを殺しに来るよ！」というコピーがあった。当時中学生になったばかりのぼくは、いったいなにが来るのだろうと小首を傾げたもの。さらに「NEVER GIVE UP」とも記されていたことから、なんでも諦めてはいけない。とにかく頑張らなければいけない。それはそうだろう──などと、とるに足らないことを思ったりもした。ポスターに写っている子熊のような顔の女の子のことはまったく知らなかったけれど、目の表情に強いインパクトを感じた。こんなぼくでも当時は多感な時期だったのだろう、恥ずかしながら右目の下のホクロがチャーミングだな──などと思った。いずれにしても彼女には、いわゆるアイドルとは一線を画すものがあった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ポスターの君は、いまをときめくベテラン女優、そしてシンガーとしても活動する<strong>薬師丸ひろ子</strong>だ。現在は気さくな母親役を多く演じる薬師丸さんにも、こんなに神秘的な美しさを湛えた少女時代があったのだ。まあそう云うぼくも、いまはただのオッサンなんだけれどね。それはともかく薬師丸さんは中学１年生のとき、この『野性の証明』の少女役のオーディションに合格し芸能界入りを果たした。映画が全国ロードショーで公開されたのは1978年10月７日のことだから、1964年６月９日生まれの彼女は14歳になったばかりだった。このころにはぼくのなかで、薬師丸さんは成績、品行ともに優れた先輩──というイメージになっていた。ただその後、彼女が角川映画の中心的存在としてスターダムにのし上がるとは、思いも寄らなかった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　この『野性の証明』は、<strong>市川崑</strong>監督作品『犬神家の一族』(1976年)、<strong>佐藤純彌</strong>監督作品『人間の証明』(1977年)につづく角川映画第３弾。厳密には<strong>門田得三</strong>が監督を務めた『野性号の航海 翔べ 怪鳥モアのように』(1978年)が３作目に当たるのだが、ノンフィクション映画というかプライヴェート・フィルムといった趣旨の作品だったからか、一般的には頭数に入れられていない。角川映画とは、現在のKADOKAWAの前身である出版社、角川書店の当時の社長、<strong>角川春樹</strong>が製作した一連の映画作品のこと。もともとは角川書店が発行する書籍、特に角川文庫の売上向上に主眼が置かれた、飽くまで宣伝の一環としてはじめられた事業。要するにメディアミックス展開のハシリだった。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-6160 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/militarygirl.png" alt="女子中学生と自衛隊の特殊車輌やヘリコプター" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/militarygirl.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/militarygirl-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　思えばいまではちっとも珍しいことではないけれど、当時テレビで映画作品のスポットCMがいやというほど流されていたのは、角川映画だけだった。角川社長は、破格の広告費を投じ書籍と映画を同時にアピールし、その相乗効果から大きな成功を収めた。前述の映画のポスターにあったコピーもまた、薬師丸さんのセリフとしてテレビCMでこれでもかというほど聞かされた。いつの間にかその文言を暗唱できるようになっていたのは、おそらくぼくだけではあるまい。いわゆるザイオンス効果を応用したこのマーケティング戦略が功を奏し、興行成績では前作の『人間の証明』には一歩及ばなかったが、果せるかな『野性の証明』は大ヒットを記録した。配給収入においては、角川映画第１作『犬神家の一族』のおよそ1.4倍だった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　監督は『人間の証明』にひきつづき<strong>佐藤純彌</strong>(1932年11月６日 &#8211; 2019年２月９日)が登板した。佐藤監督の作品といえば、オールスターキャストによるパニック映画『新幹線大爆破』(1975年)が有名。とにかくおカネのかかった映画を多数手がけていて、ミスター超大作の異名をとるほど。その点と前作の大ヒットを考慮に入れると『野性の証明』での続投は、当然のことのように思われる。撮影監督は戦後の日本映画を代表するカメラマン、<strong>姫田真佐久</strong>(1916年11月19日 &#8211; 1997年７月29日)。アメリカの戦争映画『トラ・トラ・トラ!』(1970年)において、アカデミー撮影賞にノミネートされたこともある。姫田さんもまた『人間の証明』につづく再抜擢である。シャープでスケール感のある映像が素晴らしい。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　また脚本は東映のアルチザンこと<strong>高田宏治</strong>が手がけた。現代劇はもちろんのこと時代劇や任侠映画など、とにかくオールマイティに執筆するライターだ。彼の熟達した職人的ライティングは、数多くの東映エンターテインメント作品をヒットさせた。高田さんは『野性の証明』では、映画のクライマックスにおいて原作小説のストーリーラインを大幅に改変している。あとになったが映画『野性の証明』の原作は、<strong>森村誠一</strong>(1933年１月２日 &#8211; 2023年７月24日)による推理小説。単行本は1977年９月20日に、文庫は1978年８月30日に、それぞれ角川書店によって発行された。前作の映画『人間の証明』の原作もまた、第３回角川小説賞を受賞した森村さんの小説だった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　森村さんの膨大な数にのぼる著作は、ミステリーや時代小説、小説以外にもエッセイからビジネス書まで、実に多岐にわたる。そういう意味では、氏は大衆文学の大家と云える。小説『野性の証明』は『人間の証明』と同様に、角川社長の依頼により映画化が前提の上で執筆された。そういえば当時の角川文庫や角川映画の宣伝には「読んでから見るか 見てから読むか」というコピーが使われていた。流行語にもなったこの広告文に敢えて応答すると、ぼくはほとんどの場合「読んでから見る」ほうである。この『野性の証明』にしても、ぼくは映画を鑑賞する以前にすでに森村さんの小説を読んでいた。小説が映画化されることはもちろん知っていたのだけれど、実は読み進めるうちにぼくはある懸念を抱くようになったのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc3">いまで云うブロックバスター作品──批判する向きもかなり多かった</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　東北の一寒村で発生した大量虐殺事件で生き残った少女と、偶然現場に遭遇した訓練中の自衛官とが、その後地方都市で蠢く巨大な陰謀に巻き込まれていくというストーリー。決して面白くないわけではないのだけれど、前作の『人間の証明』と比較するとちょっと地味なおハナシに思えたのである。しかもこれまでの角川映画といえば超娯楽大作という印象を与えるが、小説の皮肉と凄惨を極めたバッドエンドは、そんなポジティヴなイメージにまったくそぐわない。特に物語の主人公である元自衛官の味沢岳史が軟腐病の影響から精神に異常を来していくというクダリは、あまりにも悲惨だ。これをあの健さんに演らせるのか？ちょっと違うのではないだろうか？──そんなしっくりしない感じを、小説の読了とともにぼくは覚えたもの。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　健さんとはもちろん銀幕の大スター、<strong>高倉健</strong>(1931年2月16日 &#8211; 2014年11月10日)のこと。高倉さんは『野性の証明』以前にも『ゴルゴ13』(1973年)『新幹線大爆破』(1975年)『君よ憤怒の河を渉れ』(1976年)といった<strong>佐藤純彌</strong>作品に立てつづけに出演している。それらの主人公であるアサシンにしても爆弾テロリストにしても、あるいは東京地検刑事部の検事にしても、高倉さんが演じるととにかくクール。振り当てられたキャラクターが善玉であろうと悪玉であろうと、俳優<strong>高倉健</strong>は常にヒーローでなければならない。だれもがそんな健さんを望んでいる。だから高倉さんが演じる味沢岳史が、小説にあるように絶望の淵に突き落とされたまま終わるなどあり得ないことなのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ぼくの懸念に反して映画のなかの味沢は、最後まで諦めなかった。どん底から這い上がろうとする。ただひたむきに薬師丸さん演じる長井頼子を守るために──。ああ、そこが前述のコピー「NEVER GIVE UP」につながるのか──と、映画を鑑賞したときのぼくは勝手に納得したもの。とにもかくにも映画『野性の証明』では、小説の結末から物語はさらに新たなるクライマックスへと飛躍する。シナリオを書いたのはもちろん高田さんだが、この粋な計らいについて実際に采配を振るったのは製作者の角川さんだとぼくは推測する。いずれにしても映画ではラスト20分にも及ぶ、小説にはなかった味沢と自衛隊とのバトル・シーンが追加された。結局のところ作品はそれまでの２本の角川映画よりも、数段スケールの大きなものとなった。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-6161 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/militaryman.png" alt="寒村に佇む自衛隊員" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/militaryman.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/militaryman-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　高倉さん演じる味沢は元陸上自衛官だったが、彼が所属していたのは対テロ戦を想定して極秘裏に編成された特殊部隊だった。この特殊工作隊という名称の部隊の編成は非合法。特殊工作隊の存在が明るみに出るとことを憂慮した政府は、陸上自衛隊に演習を装って味沢と頼子を暗殺するよう指示。かくして演習地の山林を舞台に頼子を連れた味沢と、特殊工作隊──指揮官以下22名の精強の隊員たちとの死闘が繰り広げられる。以上のくだりは映画化に際して新たにつけ加えられた、オリジナルのエピソードだ。内容が内容だけに角川さんは自衛隊には撮影協力を依頼せず、自前で自衛隊の部隊を用意。戦闘シーンのロケも日本では不可能だったため、撮影はアメリカのカリフォルニア州やコロラド州で行われた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そんなこともあり、映画『野性の証明』の製作費はおよそ12億円にのぼった。当時の日本映画の製作費といえば３億円程度だったというから、そんな破格の費用を映画に投じる<strong>角川春樹</strong>がいかに型破りな人物だったかがよくわかる。配給収入は21億8000万円ということで、その年の邦画作品では第１位となった。興行的には大成功を収めたわけだ。ところが、いまで云うブロックバスター作品である本作を、批判する向きもかなり多かった。ヒットはしても作品の質が低いとか、なかには角川映画は札束映画と揶揄する映画評論家までいた。でもいかがなものだろう。日本映画界の縦割りの構図を打破し、斜陽産業となりつつあった映画にふたたび多くのひとの関心を向けさせたのは、ほかでもない角川映画だったのではないだろうか。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　確かに角川の映画作品は、芸術性からはもっとも縁遠いところに存在するのかもしれない。しかしながらアート・フィルムだけが価値があるというものでもないだろう。かく云うぼくにも、大衆市場よりもニッチ市場に向けて製作された芸術性の高い映画に、こころを打たれる機会はままある。それでもやはり、子どもから大人まで楽しめる娯楽作品や、大きなスクリーンで観たくなるような迫力満点の映画も、強く求めるのである。いまの邦画といえば、アート志向の作品にはなかなか面白いものもあるけれど、エンターテインメント作品ともなるとテレビドラマの延長線上にあるようなものがほとんど。ぼくは、映画らしい映画が観たいのだ。その点、未見のかたにはぜひ『野性の証明』を一度観ていただきたい。映画でしかあり得ない作品なのだから──。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　わずかながら、薬師丸さんにも触れておきたい。薬師丸さんはのちに、角川春樹事務所によるコンテスト(1982年公開された映画『伊賀忍法帖』のヒロイン・オーディション)で見出された、<strong>渡辺典子</strong>、<strong>原田知世</strong>とともに角川３人娘と呼ばれた。私感になるが、そのなかでデビュー当時もっとも鮮烈な印象を与えたのは、薬師丸さんだったと思う。その神がかり的な存在感は『野性の証明』のフィルムにしっかり焼きつけられている。その後、薬師丸さんは『ねらわれた学園』(1981年)『セーラー服と機関銃』(1981年)といった角川映画に出演し、彼女の意志とは関係なくアイドル化していく。それとともに当初彼女が発散していた霊妙なエナジーは、減衰の一途をたどった。これは、彼女に俗っぽいセリフを吐かせたりしたオトナに責任がある。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それほど長井頼子の薬師丸さんは、蠱惑的なまでに謎めいた美しさを湛える。フィルムのなかで永遠に輝きつづける魅力的な薬師丸さんを確認することができるという点でも、映画『野性の証明』は観て損のない作品と、ぼくは思う。実はもともとヒロインの頼子は10歳という設定だった。それに対して薬師丸さんは13歳、背丈においても想定されるキャラクターのそれよりも高めだった。いわば規格外でもあり、演技経験もなかった彼女をオーディションで強く推したのは、審査員を務めていた<strong>角川春樹</strong>だった。やはり角川さんは、ただ者ではない。まさに慧眼の士である。大衆の期待を上回る新たなサムシングを本質的に見抜くような、氏の鋭い眼力はフィルム・ミュージックにおいても活かされた。音楽監督に<strong>大野雄二</strong>を起用したことである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc4">人間の孤独感や哀感あるいは優しさをヴィブラフォンで表現</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　<strong>大野雄二</strong>は83歳にしていまも現役のジャズ・ピアニストとして活躍しているが、ジャズから離れていた時期がある。ピアノ・トリオで吹き込んだデビュー作『<em>ミスター・ハピゴン</em>』(1973年)を発表したころから大野さんは、もちまえの作曲、編曲の才能を活かしてテレビCM、テレビ番組や映画の音楽、ポップ・ミュージックにおける、サウンド・クリエイターとしての活動に専念するようになっていく。ときおり銀座や六本木のクラブでスタンダーズを弾いてはいたものの、本格的にジャズ・プレイヤーとして復帰するのは2000年代に入ってからだ。このことはジャズに興味がないひとたちには、却って幸いだったのではないだろうか。なにせ30年にもおよぶ長い期間、様々なシーンで唯一無二の大野サウンドに触れることができたのだから。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　大野さんが角川映画の音楽を手がけるのは『犬神家の一族』『人間の証明』につづいて、この『野性の証明』で３度目。製作者である角川さんの大野サウンドに対する愛着と信頼は、明々白々のことである。氏は日本テレビのサスペンスドラマ・シリーズ『火曜日の女』(1969年～1973年)および『土曜日の女』(1973年～1974年)の劇伴や、NHKのニュース番組『ニュースセンター９時』(1974年～1988年)のテーマ曲を聴いて、大野さんのフレッシュなサウンドに注目したという。旧態依然とした日本映画界に一石を投じるようなインパクトを求めていた角川さんにとって、ジャズ・ピアニスト出身で作曲家としてはまだ手垢のついていなかった<strong>大野雄二</strong>という音楽家は、ダイヤモンドの原石だったのだろう。実際その才能は、日ならず開花した。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　大野さんは、いきなり大抜擢された『犬神家の一族』では和の情緒溢れる愛憎の世界を、フリー・ジャズやプログレッシヴ・ロックなどを織り交ぜたクロスオーヴァー・サウンドで表現。つづく『人間の証明』では都会のサスペンスに、<strong>デイヴ・グルーシン</strong>や<strong>クラウス・オガーマン</strong>からの影響が感じられる洗練された当世風のフュージョン・ミュージックで、彩りを添えた。そして『野性の証明』では、スペクタクル・アクション調の躍動的な劇伴も然ることながら、巨悪に立ち向かうハードボイルドなキャラクターたちをいつになくヒューメインな音楽で描写した。大野さんはこの映画でヴィブラフォンを使用しているが、そのゆったりした振動が生み出す独特の音色と雰囲気が、人間の孤独感や哀感あるいは優しさをナチュラルに伝えてくる。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-6162 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/militaryvibe.png" alt="楽器のヴィブラフォンと自衛隊服を着た動物たち" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/militaryvibe.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/11/militaryvibe-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　ヴィブラフォンは、1978年から1979年にかけての大野サウンドには、欠かせない楽器だった。その効果的な使用は、映画の劇伴でいうと『野性の証明』を皮切りに『殺人遊戯』(1978年)『黄金の犬』(1979年)『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)などに、顕著に見て取れる。さらにテレビドラマのサウンドトラック・アルバム『<em>大追跡</em>』(1978年)に「刑事たちの散歩道」という曲が収録されているが、やはりヴィブラフォンが強い印象を残す。軽快なジャズ・ワルツを、軽妙なストリングスのピチカートをバックに、ヴィブラフォンがフルートとのユニゾンによる爽やかなを響きとキャッチーなフレージングで盛り上げている。そんな透明感に富んだ美しさと温もりの感じられるサウンドが、もっともこころに残るのは『野性の証明』の楽曲である。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ここでマレットを揮ふるっているのは、日本を代表するヴィブラフォニストでティンパニストでもある<strong>金山功</strong>。大野さんのレコーディングではおなじみのひとだ。サウンドトラック・アルバムは映画公開のおよそ１か月まえ、主題歌のシングル盤は２か月まえに発売された。レコードの先行発売は、音楽もまた映画の宣伝を補完し相乗効果をあげる重要なファクターという考えからの、角川商法の一環である。<strong>山川啓介</strong>の作詞による「戦士の休息」と「銀河を泳げは」は、元<strong>ズー・ニー・ヴー</strong>の<strong>町田義人</strong>が歌った。そのソフトな声質とソウルフルな歌いまわしには、優しさと雄々しさが交錯した得も云われぬ爽快感がある。知名度よりも実力を優先する大野さんらしい人選だが、しばらくヒットに恵まれなかった町田さんはこの曲でふたたび脚光を浴びた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　アルバムには上記の２曲のヴォーカル・ナンバーのほか、９曲のインストゥルメンタルが収録されている。ほとんどの曲において、フィルムスコアリングとは別のテイクが採用されており、アルバムでの印象とスクリーンで受けるそれとは微妙に異なる。リズム・セクションは、<strong>松本恒秀</strong>(g)、<strong>岡沢章</strong>(b)、<strong>市原康</strong>(ds)、<strong>穴井忠臣</strong>(perc)といった、<strong>鈴木宏昌</strong>率いる<strong>コルゲン・バンド</strong>のメンバーが中心となっている。それにホーンズとストリングスが加わる。メイン・タイトルの「野生への序曲」は、壮大なオーケストラル・ポップ。メロディやオブリガートをダイナミックに奏でる管楽器のアンサンブル、ストリングスのアルペジオやトレモロ、それにティンパニーの連打と迫力満点だ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　映画では自衛隊が登場するシーンでこの手の躍動感溢れるトラックがしばしば登場するが、アルバムではこの１曲のみ。イントロが、ハンガリー出身の<strong>ミクロス・ローザ</strong>が作曲した映画『ベン・ハー』(1959年)のなかの「序曲」を彷彿させるのはご愛嬌。ロック・ビートの「悪魔の追跡」では、シモンズのシンセドラム、シーケンサー、オルガンなどが鳴り響くなか、エレクトリック・ギターが雄叫びを上げまくる。ゆったりした「時間さえ忘れて」では、ヴィブラフォンがブルージーな旋律を奏でる。オーボエのオブリガート、ストリングスのコーラスも明鏡止水のごとき美しさを湛える。アップテンポのディスコ・フュージョン「戦慄の青い服」では、ホーンズによるサスペンスフルなテーマのあと、シンセのソロ、テナーのアドリブがクールに展開される。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ブラジルのリズムがクロスする「やすらぎを乗せて」では、ホーンズによるグルーヴィーなテーマのあと、ヤマハCS-80によるアドリブがフレキシブルに炸裂する。緩やかなテンポの「君の愛に背を向けて」では、瞑想的なコード進行でローズ、ギター、シーケンサー、フルートなどが溶け合うなか、ソプラノが凛とした空気をつくる。哀愁が漂う「悲しみの軌跡」では、ハートウォーミングなテナーによるバラード演奏を堪能するばかり。ラテン・タッチのワルツ「<ruby>病葉<rt>わくらば</rt></ruby>の街」では、ヴィブラフォンとフルートとのユニゾンによるテーマとアコースティック・ベースのソロがスタイリッシュだ。クロージング・クレジットで流れる「悪夢は頼子と共に」では、アープ・オデッセイの口笛のような音色が寂寥感を漂わせる。また、弦のスタッカートが余韻を残す。この曲を聴くとぼくはまた、あのときの高倉さんと薬師丸さんに会いたくなる。以上文句なし、大野サウンドが全開した名作である。</p>
<p>&nbsp;</p>
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<p class="wp-block-paragraph">最後まで読んでいただき、ありがとうございました。</p>
</div>
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<p></p>]]></content:encoded>
					
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		<title>大野雄二 / コメディードラマ・ソングブック (1999年)</title>
		<link>https://kimama-music.com/yuji-ohno-comedy-drama-song-book/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=yuji-ohno-comedy-drama-song-book</link>
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		<dc:creator><![CDATA[kimama]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 14 Apr 2024 09:27:39 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[Soundtrack]]></category>
		<category><![CDATA[Yuji Ohno (大野雄二)]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://kimama-music.com/?p=4728</guid>

					<description><![CDATA[石立鉄男×大野雄二のシナジーが効果絶大！──コンピレーション・アルバム『コメディードラマ・ソングブック』]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h2><span id="toc1">石立鉄男×大野雄二のシナジーが効果絶大！──コンピレーション・アルバム『コメディードラマ・ソングブック』</span></h2>

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<div class="label-box-label block-box-label box-label"><span class="label-box-label-text block-box-label-text box-label-text">recommendation</span></div>
<div class="label-box-content block-box-content box-content">
<p class="wp-block-paragraph"><img loading="lazy" decoding="async" class="wp-image-703 alignleft" style="margin-bottom: 0px;" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png" alt="" width="101" height="92" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-300x274.png 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records.png 640w" sizes="(max-width: 101px) 100vw, 101px" /><em>Album : 大野雄二 / コメディードラマ・ソングブック (1999)</em></p>
<p style="text-align: right;"><em>Today&#8217;s Tune : そよ風のように</em></p>
</div>
</div>


  <div id="toc" class="toc tnt-disc toc-center tnt-disc border-element"><input type="checkbox" class="toc-checkbox" id="toc-checkbox-18" checked><label class="toc-title" for="toc-checkbox-18">目次</label>
    <div class="toc-content">
    <ol class="toc-list open"><li><a href="#toc1" tabindex="0">石立鉄男×大野雄二のシナジーが効果絶大！──コンピレーション・アルバム『コメディードラマ・ソングブック』</a><ol><li><a href="#toc2" tabindex="0">なりたかった理想のオトナ像──ブラウン管のスター、石立鉄男</a></li><li><a href="#toc3" tabindex="0">子どものころ知らず知らずのうちに刷り込まれていた大野雄二の音楽</a></li><li><a href="#toc4" tabindex="0">ドラマのテーマ曲や主題歌を集大成したコンピレーション・アルバム</a></li></ol></li></ol>
    </div>
  </div>

<h3><span id="toc2">なりたかった理想のオトナ像──ブラウン管のスター、石立鉄男</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ぼくは子どものころ、大きくなったら<strong>石立鉄男</strong>のようなオトナになりたいと思っていた。云わずもがなだが、俳優の<strong>石立鉄男</strong>(1942年７月31日 &#8211; 2007年６月１日)である。もちろん、子どものぼくが淡い憧憬の念を抱いたのは、ブラウン管のなかの石立さんだ。若いひとは見たことがないだろうから念のために云っておくと、ブラウン管とは、むかしテレビの受像に使われていた特殊な真空管のこと。当時はテレビの代名詞でもあった。なおブラウンとは、発明者であるドイツの物理学者の名前。昭和を生きたひとなら馴染みがあると思うけれど、ブラウン管のテレビといえば、画面が丸みを帯びていて結構奥行きあってそれなりに重かった。フラットパネルが登場するのは、平成になってしばらく経ってからのこと。だから石立さんのことは、やはりブラウン管のスターと云いたい。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ブラウン管の向こうにいる<strong>石立鉄男</strong>は、ぼくにとってウルトラマンや仮面ライダーよりもずっとスーパーヒーローだった。当時の日本人としては長身の177cmという背丈、まったく違和感を感じさせないアフロヘア、コミカルな高めの声とシリアスな渋い低音ヴォイスの使い分け、そして二枚目にも三枚目にも対応する男っぷりのよさといった具合に、見かけだけでもほれぼれするくらいカッコイイ。それに加えてブラウン管のなかの石立さんは、決して強者に媚びへつらうことはない。一時的な作戦としておべっかを使ったりすることもあるが、基本的に権力などを度外視している。だから喧嘩っ早い。でも情にもろい。そんな憎めないキャラクターとフリーな生きかたに、架空の人物とはわかっていながらも、ぼくは尊敬の念すら抱いていたのだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ぼくのように1970年代を子どもとして生きた世代は、毎日テレビを観てその影響をおもいきり受けて育った。いまから考えると、ある意味で<strong>石立鉄男</strong>は、そんなテレビっ子たちの偶像だったとも云えるのではないだろうか。少なくともぼくにとって石立さんは、1970年代においてもっとも敬慕の的となるタレントだったことは間違いない。しかしながら1980年代になると、石立さんはクールな役を演じることやシリアスなドラマへの出演が多くなる。それらはぼくにとっては、違和感を覚えざるを得ないものだった。唯一、エースコックの「わかめラーメン」のCM(1983年）で、おどけた感じで「おまえはどこのわかめじゃ？」と発する<ruby>法被<rt>はっぴ</rt></ruby>姿の石立さんが救いだった。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-4732 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/04/tetsuo.png" alt="アフロヘアの男 レトロなテレビと子どもの顔" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/04/tetsuo.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/04/tetsuo-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　その後2007年６月、石立さんは自宅で就寝中に急性動脈瘤破裂を発症し、64歳という若さでこの世を去った。そのときぼくは、ああ、これでまたひとつの時代が終わった──などと感じたもの。その際、実は普段の石立さんが、ぼくの大好きだった役柄とはまったく正反対の性格で、もの静かで内気な恥ずかしがり屋だったと聞き、余計にしんみりとした気持ちにさせられた。それよりちょっとまえに、マニアックなサンプリングCDをリリースすることで知られるカエルカフェ・レーベルから『<em>ISHIDATE TETSUO VOICE</em>』(2001年)というアルバムが発売された。石立さんの特徴的なセリフが、500ヴォイス以上も網羅されている。当初はなんてふざけたことをするのかと思ったが、あらためて聴くとブラウン管のスターを身近に感じられる名盤と気づいた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それはともかく、ぼくがなりたかった理想のオトナ像とは、日本テレビ系列で1970年代に放映されたホームコメディドラマのシリーズのなかで大活躍する<strong>石立鉄男</strong>のこと。コメディを得意とする<strong>松木ひろし</strong>がメイン脚本家を務めたこのシリーズは、全８作品。内訳は『<span class="bold blue">おひかえあそばせ</span>』(1971年４月７日 &#8211; 1971年9月22日)『<span class="bold blue">気になる嫁さん</span>』(1971年10月６日 &#8211; 1972年９月27日)『<span class="bold blue">パパと呼ばないで</span>』(1972年10月４日 &#8211; 1973年９月19日)『<span class="bold blue">雑居時代</span>』(1973年10月３日 &#8211; 1974年３月27日)『<span class="bold blue">水もれ甲介</span>』(1974年10月13日 &#8211; 1975年３月30日)『<span class="bold blue">おふくろさん</span>』(1975年４月６日 &#8211; 1975年９月28日)『<span class="bold blue">気まぐれ天使</span>』(1976年10月６日 &#8211; 1977年10月19日)『<span class="bold blue">気まぐれ本格派</span>』(1977年10月26日 &#8211; 1978年9月20日)となる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　上記の作品は現在『<span class="bold blue">おふくろさん</span>』以外、すべてDVDや定額制動画配信サービスなどで鑑賞することができる。ほかの７作品と違い『<span class="bold blue">おふくろさん</span>』はフィルム撮影ではなくVTR収録で製作されたので、おそらくマスターテープが完全な状態では現存しないのだろう。なお、やはりこの作品のみ、制作にユニオン映画が直接的にかかわっていない。それはいいとして、みなさんはこのシリーズの放送年月日を見て、なにかお気づきになることはないだろうか。第１作から最終作までの全放映期間において、シリーズ間のインターバルがほとんどないのである。すなわちこのシリーズは、日本テレビ水曜夜８時枠の連続ドラマとして継続的に放映されたわけだ。ちなみに放送枠は、第５作の『<span class="bold blue">水もれ甲介</span>』から日曜夜８時に移るが、(石立さんの他番組出演による空白期間ののち)第７作の『<span class="bold blue">気まぐれ天使</span>』からふたたび水曜夜８時に戻る。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　いずれにしても、ひとりの俳優が７年半にもわたって、シリーズとはいえ独立した連続ドラマ作品のレギュラーを務めつづけるというのは、異例中の異例ではないだろうか。当時、<strong>石立鉄男</strong>がいかにお茶の間の人気者だったかが、よくわかっていただけると思う。ついでに云うと、日本テレビ放送網の1971年の調査によると、18歳から34歳までの女性にアンケートをとったところ、石立さんは好きなタレントとして２位に輝いたという(１位は<strong>石坂浩二</strong>、３位は<strong>石原裕次郎</strong>だった)。ときに、テレビっ子のぼくは『<span class="bold blue">おひかえあそばせ</span>』の最終回をもって石立さん演じる社会派カメラマンとお別れすることになり一抹の淋しさを感じながらも、次はどんな新番組がはじまるのだろうと期待に胸を膨らませていた。すると『<span class="bold blue">気になる嫁さん</span>』の初回放送で、思いがけずふたたび石立さんが現れたので、激しく驚喜したものだ。今度はサラ金の社長役だったけれど。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc3">子どものころ知らず知らずのうちに刷り込まれていた大野雄二の音楽</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　次回の新番組は──また、<strong>石立鉄男</strong>かよ！そんなことが、７年以上もつづいたのだ。それも毎度のことだが、このドラマシリーズは新境地を開こうとすることもなく、肩肘張らずに制作されている。石立さんは、その後も丸の内の大手会社員、貧乏カメラマン、下町の水道屋、牧場の獣医、女性下着メーカーの宣伝部員、貸衣装店の経営者と、次々に職業を変えていくのだが、基本的なキャラクターは変わらない。石立さんは、いつでも石立さんだ。それなのに、意外にも惰性的に繰り返されているような感じは、ほとんど受けないから不思議だ。偉大なるマンネリズム！加えてこのシリーズは一貫して、いつも当世風で軽やか、洒落っ気があってさっぱりとしている。とにかく毎回観終わるとあと味がいいものだから、ついついまた来週も観ようという気になってしまうのだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　さて、子どものぼくに<strong>石立鉄男</strong>とともに強いインパクトを与えたのは、ほかでもない<strong>大野雄二</strong>である。ぼくの場合、石立さんのホームコメディドラマのシリーズについては、映像と音楽を切り離して語ることはできない。大野さんは、シリーズ８作品すべての劇伴を作曲している。大野さんといえば、映画『犬神家の一族』(1976年)、アニメ『ルパン三世』(1977年のTV第２シリーズ〜)、それにNHKの紀行番組『小さな旅』(1983年〜)などの音楽の作曲で有名だが、それらの作品が世に出はじめるのは石立さんの作品を最初に手がけたときよりも数年あとのこと。当時、三十路まえの大野さんは、映像の世界ではまだ無名だった思われる。なお大野さんがはじめて音楽を担当した映像作品は、NHKのドキュメンタリー風ドラマ『ナタを追え～朝日新聞東京版“捜査員”より～』(1970年)である。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そういうわけで、ぼくが大野サウンドにはじめて触れたのは、やはり『<span class="bold blue">おひかえあそばせ</span>』だったことになる。それ以前にぼくがそれとはなしに観ていた、日本テレビ系列のドラマシリーズ『火曜日の女』(1969年11月４日 – 1972年3月27日)に大野さんが楽曲を提供しはじめたのが、確か『<span class="bold blue">気になる嫁さん</span>』が放映されているころだったと記憶する。つまり、ぼくはまだ年端もいかない子どものころから、知らず知らずのうちに大野サウンドを刷り込まれていたわけだ。それは同時に、そうと知らずにジャズという音楽に接していたことにもなる。ご承知のとおり、大野さんはもともとジャズ・ピアニストなのだから。そんな<ruby>経緯<rt>いきさつ</rt></ruby>で、<strong>大野雄二</strong>は日本の音楽家のなかで、ぼくにとってもっとも重要なひととなった。いや、そればかりでなく石立×大野のシナジーは、ぼくのパーソナリティの形成に大きな影響を与えたとも云えるのである。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-4733 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/04/nostalgia.png" alt="都電荒川線 それを見つめる男の子" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/04/nostalgia.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/04/nostalgia-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　ただ当時のぼくには、<strong>大野雄二</strong>というひとの本業がジャズ・ピアニストであるということは、まだ知る由もなかった。しかしながら、日本テレビ系列の昼ドラ『愛のサスペンス劇場』(1975年３月31日から1977年３月４日)や、NHKの『少年ドラマシリーズ』(1972年１月１日 &#8211; 1983年10月11日)といったドラマシリーズの作品において、大野さんのクレジットを発見するたびにひとりでニヤニヤしながら「やっぱり」と思っていたもの。まったく、ませたガキだった。なかでもフジテレビ系列で放映された時代劇『戦国ロック はぐれ牙』(1973年８月４日 &#8211; 1973年９月29日)の、<strong>丹阿弥谷津子</strong>のナレーションが入るオープニング・テーマをはじめて聴いたときは、なんてカッコイイ曲なのだろうと思ったもの。なおこの曲は部分的に『ルパン三世』のサブタイトルや第１話の劇中などで流用された。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それは非常にインパクトフルでスタイリッシュなサウンドだから、流用したくなるのは無理もない。この主演の<strong>梶芽衣子</strong>が歌う「はぐれ節」という曲は、ドラマがはじまるまえからシングル・レコード(ドラマ用テイクとは異なる)として発売されていたが、ぼくもテレビ放映を観て間もなく購入した。ちなみにB面の「牙のバラード」も、やはりカッコイイ。ではこのレコードが大野さんがかかわった音盤のなかで、ぼくが最初に聴いたものかというと実はそうではない。それよりもちょっとまえに『<em><ruby>故郷<rt>ふるさと</rt></ruby>/由紀さおり・ビッグ・ヒットを歌う</em>』(1972年)というLPレコードを、ぼくの両親のどちらかが購入していたのだが、偶然にもこのアルバムの収録曲のすべてを大野さんがアレンジしていたのだった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ぼくはこのアルバムに収録されている大野さんが作曲したノスタルジックな「故郷」が大好きなので、いまだにこのレコードを愛聴している。実はこの曲、大野さんのオリジナルのなかでも、ぼくにとっては特に胸キュンの一曲。<strong>バート・バカラック</strong>を彷彿させるアレンジのマナーはいま聴いてもフレッシュだし、そのハートウォーミングなサウンドスケープにはこころ安まるものがある。由紀さんのヴォーカルも、とてもチャーミングだ。またこの曲と同様に、<strong>山川啓介</strong>作詞、<strong>大野雄二</strong>作曲による「雪のワルツ」「あたしのピエロ」なども、そのモダンなハーモニーと小気味いいリズムパターンがまさにバカラック・スタイル。そしてそのテクスチュアは、石立さんのホームコメディドラマ・シリーズの音楽のそれに通じるものでもある。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　このころからぼくは、<strong>大野雄二</strong>という音楽家に熱い視線を送るようになっていたのだが、その実像についてはまだ知り得なかった。ぼくが大野さんがジャズ畑のひとと知ったのは、大ヒットした映画『犬神家の一族』を劇場で観たとき。鑑賞後に購入したパンフレットには、サントラ盤の宣伝広告のページがあった。そこにレコーディング中の大野さんとそれを訪ねた主演俳優の<strong>石坂浩二</strong>とのツーショットとともに、大野さんのプロフィールが掲載されていたのだ。いまでは信じられないだろうけれど、現住所まで明らかにされていた。まあ、それは置いておいて、ぼくは映画の冒頭のシーンで流れた音楽(「妄執の果て」という曲)の、独特なアープ・ストリング・アンサンブル、ぶっといベース、フェイズが深くかかったフェンダー・ローズ、ヴァイオリン奏法のギターなどから、すぐに「これはもしや──」と思った。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc4">ドラマのテーマ曲や主題歌を集大成したコンピレーション・アルバム</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　その後タイトルバックに大野さんの名前が極太明朝体で表示されたとき、思わず「やっぱり！」と膝を打ちそうになった。そのころのぼくは、大野さんの曲なら数小節聴けばすぐにそれとわかるくらい、すでに大野サウンドの大ファンになっていたのだ。とにもかくにも、大野さんがジャズ・ピアニストと知ったぼくはときを移さず、父親に頼み込んでわざわざ銀座の山野楽器まで連れていってもらい、ついに大野さんのジャズ・アルバムを手に入れた。それは、当時もうすでに廃盤になっていたのかもしれないが、<strong>大野雄二トリオ</strong>の『<em>ミスター・ハピゴン</em>』(1973年)というレコードだった。ぼくは、ジャケットに写る長髪にラフな格好の大野さんからちょっと赤軍派をイメージしてしまい、恐る恐るレジにもっていった覚えがある。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　この『<em>ミスター・ハピゴン</em>』は、偶然にも大野さんの初リーダー・アルバムだった。しかしそれと同時に皮肉なことに、ジャズ・ピアニストとしての大野さんといえば、この作品に止めを刺した感が強かった。というのも、このアルバムがレコーディングされたのは1971年で、大野さんはこのあと徐々にプレイヤーとしての仕事を減らしクリエイターとしての活動に専念するようになっていくからだ。<strong>大野雄二トリオ</strong>名義のアルバムはこれ一枚だし、それ以降に<strong>池田芳夫</strong>(b)、<strong>岡山和義</strong>(ds)といった同一のサイドメンで吹き込まれたのは、<strong>アン・ヤング</strong>の『<em>春の如く</em>』(1975年)くらいのものではないだろうか。そして1971年といえば『<span class="bold blue">おひかえあそばせ</span>』の放送が開始された年でもある。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　石立さんのホームコメディドラマ・シリーズのスタートに先立つ大野さんがかかわった音盤を挙げると、<strong>富樫雅彦=鈴木弘クインテット</strong>の『ヴァリエイション』(1969年)、<strong>山下洋輔トリオ</strong>、<strong>沖至トリオ</strong>、<strong>笠井紀美子</strong>とともに吹き込まれたセッション・アルバム『<em>トリオ・バイ・トリオ・プラス・ワン</em>』(1970)、<strong>マーサ三宅</strong>の『<em>マイ・フェイヴァリット・ソングス</em>』(1970年)、<strong>笠井紀美子</strong>の『ジャスト・フレンズ』(1970年)などがある。大野さんは、前者２枚でグルーヴィーなプレイはもとより意外にもフリー・ジャズを演っていたりする。後者２枚ではフィメール・シンガーのアカンパニストとして、エレガントな極上のピアノ演奏を披露している。これらのアルバムをあらためて聴いてみると、このころの大野さんはジャズ・ピアニストとしてもっとも脂が乗っていた時期とも思える。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-4734 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/04/fourseasons.png" alt="四季の木々 カラフルなグランドピアノ" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/04/fourseasons.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/04/fourseasons-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　そんなわけで、<strong>石立鉄男</strong>主演のホームコメディドラマ・シリーズの劇伴を手がけはじめたころの大野さんは、ジャズ・プレイヤーと作曲家との二足の<ruby>草鞋<rt>わらじ</rt></ruby>を履いていたことになる。ただ大野サウンドが、<strong>ボブ・ジェームス</strong>や<strong>デイヴ・グルーシン</strong>の影響を受けて、より洗練された華麗な様式美を極めるのは、もう少しあとのこと。当時の大野サウンドからは、前述の<strong>バート・バカラック</strong>やフィリー・ソウルからの影響が窺えるばかりだ。もちろん、淡白ではあるがモダン・ジャズのテイストも反映されている。そういったことを<ruby>鑑<rt>かんが</rt></ruby>みると却って、リスナーはこのドラマ・シリーズの音楽を聴くことによって、<strong>大野雄二</strong>の音楽性を純度の高い状態で確認することができる──とも云えるのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ところが、残念なことにサントラLPが発売されたのは、第７作の『<span class="bold blue">気まぐれ天使</span>』のみ。しかもこのレコードは、<strong>小坂忠＆ウルトラ</strong>名義のアルバム(1998年にCD化済み)。収録曲もすべて劇伴とは異なるテイクで、バンドのキーボーディスト、<strong>大浜和史</strong>が手を加えたものだ。幸いなことに、このシリーズのビデオ化を進めていたレコード会社、VAPが1999年にシリーズのテーマ曲や主題歌を集大成したコンピレーション・アルバム『<em>コメディードラマ・ソングブック</em>』を発売している。ぼくのような熱烈なファンにとっては、マストアイテムと云えよう。『<span class="bold blue">おひかえあそばせ</span>』からは軽快な８ビートの「メインテーマ」を収録。アコーディオンやフリューゲルホーンの音色がノスタルジック。ロックンロールなドラムスもまた懐かしい。『<span class="bold blue">気になる嫁さん</span>』からはさらにテンポの速い「メインテーマ」を収録。女性スキャットがリードを執る。注目すべきは大野流ヴァイブ＆フルートのユニゾン。オブリガートで入るピアノのアドリブもセンスがいい。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>『<span class="bold blue">パパと呼ばないで</span>』からは関西出身のフォーク・グループ<strong>貝がら</strong>による「虹」「夜明け」を収録。<strong>羽根田武邦</strong>の作曲と<strong>河野土洋</strong>の編曲は、ちょっとカーペンターズの楽曲を思わせる。この２曲に大野さんはかかわっていない。ただ劇伴のなかには、大野さんがアレンジしたヴァージョンもある。『<span class="bold blue">雑居時代</span>』からはドラマで冬子を演じた<strong>山口いづみ</strong>が歌う「そよ風のように」を収録。ローズ、フルート、ストリングスの音色、後半の転調と、まさに大野サウンドの好例。ドラムスのブラシ・ワークも品がいい。<strong>なかにし礼</strong>による歌詞もディテールに至るまで<ruby>瀟洒<rt>しょうしゃ</rt></ruby>。だが、なぜか商品化されなかった(ここまでの大野さんの曲はすべてフィルム音源)。山口さんはこの曲を『<em>マイ・フェイヴァリット・ソングス</em>』(2015年)というアルバムでセルフカヴァーしている。バックは<strong>松尾明トリオ・プラス・ワン</strong>が務めた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>『<span class="bold blue">水もれ甲介</span>』からは<strong>シンガーズ・スリー</strong>による「水もれ甲介」<strong>石立鉄男</strong>による「さみしいナ…」を収録。前者は大野流バカラック・マナーの完成形。後者の石立さんによるバラード歌唱はご愛嬌だが、セリフの箇所は泣かせる。『<span class="bold blue">おふくろさん</span>』からは兄弟ヴォーカル・デュオ、<strong>ブレッド＆バター</strong>による「ともしび」「城跡のある町」を収録。特に前者のセンチメンタルなムードが大野さんらしい。大野サウンドは、このあたりからリズムが一段と洗練されていく。ストリングスも熱い。『<span class="bold blue">気まぐれ天使</span>』からは<strong>小坂忠＆ウルトラ</strong>による「気まぐれ天使」「旅ごころ」ドラマで渚を演じた<strong>坪田直子</strong>が歌う「ジングル・ジャングル」を収録。小坂さんのゴスペルな味わい深いヴォーカルには文句のつけようがない。坪田さんのブルージーな歌いまわしもディキシー調の曲によく合っている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>『<span class="bold blue">気まぐれ本格派</span>』からは夫婦ヴォーカル・デュオ、<strong>ダ・カーポ</strong>による「夕凪のふたり」「海に行って来ましたね」を収録。前者は感傷的なメロディと爽やかなアレンジが際立つボサノヴァ。後者はハートウォーミングなミッドテンポの８ビート。このころの大野サウンドは、もはや全盛期の作品と比べてみてもまったく遜色がない。リズム・セクションにしても管楽器や弦楽器にしても、アレンジがそつなくこなされている。当時の大野サウンドのトレードマークでもあった、フェンダー・ローズのアルペジオにディレイをかけたサウンド・エフェクトは、ここですでに登場している。こうしてこのCDをあらためて聴いてみると、<strong>大野雄二</strong>が新進気鋭ジャズ・ピアニストから人気作曲家へ転身する様を、音で追っていけるのが興味深い。無論、また<strong>石立鉄男</strong>のホームコメディドラマ・シリーズを、はじめから観る気満々にさせられる一枚でもある。</p>
<p>&nbsp;</p>
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		<title>大野雄二 / 人間の証明 オリジナル・サウンドトラック (1977年)</title>
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		<dc:creator><![CDATA[kimama]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 06 Aug 2023 08:57:39 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[Soundtrack]]></category>
		<category><![CDATA[Yuji Ohno (大野雄二)]]></category>
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					<description><![CDATA[大野雄二の個性的な様式美のはじまりを告げる名作『人間の証明』]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h2><span id="toc1">大野雄二の個性的な様式美のはじまりを告げる名作『人間の証明』</span></h2>

<div class="wp-block-cocoon-blocks-label-box-1 label-box block-box has-border-color has-ex-a-border-color">
<div class="label-box-label block-box-label box-label"><span class="label-box-label-text block-box-label-text box-label-text">recommendation</span></div>
<div class="label-box-content block-box-content box-content">
<p class="wp-block-paragraph"><img loading="lazy" decoding="async" class="wp-image-703 alignleft" style="margin-bottom: 0px;" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png" alt="" width="101" height="92" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-300x274.png 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records.png 640w" sizes="(max-width: 101px) 100vw, 101px" /><em>Album : Yuji Ohno / Proof Of The Man (1977)</em></p>
<p style="text-align: right;"><em>Today&#8217;s Tune : Opening</em></p>
</div>
</div>


  <div id="toc" class="toc tnt-disc toc-center tnt-disc border-element"><input type="checkbox" class="toc-checkbox" id="toc-checkbox-20" checked><label class="toc-title" for="toc-checkbox-20">目次</label>
    <div class="toc-content">
    <ol class="toc-list open"><li><a href="#toc1" tabindex="0">大野雄二の個性的な様式美のはじまりを告げる名作『人間の証明』</a><ol><li><a href="#toc2" tabindex="0">作家の森村誠一さん死去──映画『人間の証明』による“森村ブーム”</a></li><li><a href="#toc3" tabindex="0">ミリオンセラーとなった「人間の証明のテーマ」</a></li><li><a href="#toc4" tabindex="0">大野雄二のキャッチーなサウンドのスターティング・ポイント</a></li></ol></li></ol>
    </div>
  </div>

<h3><span id="toc2">作家の森村誠一さん死去──映画『人間の証明』による“森村ブーム”</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　作家の<strong>森村誠一</strong>さんが、肺炎のため亡くなった。2023年７月24日、都内の病院でのこと。90歳だった。出版販売にかかわる職に身を置くぼくには、ベストセラーとなった新書『老いる意味』(2021年 中央公論新社刊)で、森村さんが老人性うつ病に苦しんだことを告白したことに衝撃を覚えたのが、ついこの間の出来事のように思えてならない。誰もが知るように、森村さんは江戸川乱歩賞(『高層の死角』1969年)、日本推理作家協会賞(『腐蝕の構造』1973年)、吉川英治文学賞(『悪道』2011年)などの受賞歴をもつ、大衆文学の大家だ。ミステリーや時代小説、小説以外にもエッセイからビジネス書まで、その著作は膨大な数にのぼる。その功績を偲び、ここに謹んで哀悼の意を表する。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ぼくは、森村さんの作品をそれほど読んではいないけれど、小学校高学年から中学生にかけて『高層の死角』(1969年)『新幹線殺人事件』(1970年) 『東京空港殺人事件』(1971年)『超高層ホテル殺人事件』(1971年)『腐蝕の構造』(1973年)『暗黒流砂』(1973年)『凶水系』(1977年)などを立て続けに読んだ。短編集だと『魔少年』(1976年)が、強く印象に残っている。当時、推理小説好きの少年だったぼくは、しっかり“森村ブーム”にハマっていた。1977年、一躍ベストセラー作家に躍り出た森村さんのミステリー作品に、食指が動かない理由などあるはずもない。そして、その急激な人気の高まりは、云うまでもなく『人間の証明』(1976年)の映画化が契機となっている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　もちろん、ぼくも『人間の証明』を早々に買い求め、一気に読んだ。一般的には社会派ミステリーにカテゴライズされる作品なのだろうが、たとえば<strong>松本清張</strong>の著作よりもずっと都会的な印象を受けた。９年間にわたるホテル勤務の経験が影響しているのかどうかは定かでないが、森村さんの小説はどれも一貫して、垢抜けていて洗練された雰囲気が漂っている。さらに云えば、当時のミステリーとしては、もっとも現代的な風格を備えていたようにさえ思われるのである。興味深いのは、この『人間の証明』が、映画化を前提に執筆されたということ。森村さんにそんな依頼をしたのは、誰あろう当時の角川書店の青年社長、<strong>角川春樹</strong>。つまり映画『人間の証明』(1977年)は、大ヒットした映画『犬神家の一族』(1976年)につづく、角川春樹事務所製作第二弾である。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-2212" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/08/strawhat-500x500.png" alt="赤いリボンの麦藁帽子" width="300" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/08/strawhat-500x500.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/08/strawhat-300x300.png 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/08/strawhat-100x100.png 100w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/08/strawhat-150x150.png 150w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/08/strawhat.png 625w" sizes="(max-width: 300px) 100vw, 300px" /></p>
<p>　この映画が製作される時点で、すでに「角川商法」と呼ばれるメディアミックス戦略が確立されていて、全国の書店において、文庫フェアはもちろんのこと森村さんのサイン会も開催された。それに加えて、なんといってもテレビCMのインパクトが大きかった。朝靄のなかクルクルと回転しながら谷底に落ちていく麦藁帽子の映像──これは、しっかりまぶたの裏に焼きついた。それと同時に、原作のなかでも事件のカギとなる「<span class="marker-blue">母さん、僕のあの帽子どうしたでしょうね？ええ、夏、碓氷から霧積へ行くみちで渓谷へ落としたあの麦藁帽子ですよ──</span>」というセリフ──これも、ほんとうに耳に残った。キャッチコピーとして使われたこの一節は、詩人である<strong>西條<ruby>八十<rt>やそ</rt></ruby></strong>の「ぼくの帽子」から引用されたもの。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　映画公開にあわせて、この詩が収録された『西條八十詩集』が、森村さんのエッセイ付きで角川文庫の一冊として復刊されたが、ホント「角川商法」には抜け目がない。いっぽう音楽のほうも、メディアミックス戦略においては重要なファクター。あの「<span class="marker-blue">Mama, Do you remember the old straw hat you gave to me. I lost the hat long ago, flew to the foggy canyon, yeah──</span>」と歌われる、ソウルフルなヴォーカル曲。俳優として本編にも出演しており、当時はまだ無名に近かったシンガー、<strong>ジョー山中</strong>の歌唱による「人間の証明のテーマ」は、あまりにも有名だ。ちなみに、この曲の歌詞は、西條の「ぼくの帽子」がそのまま、<strong>角川春樹</strong>と<strong>ジョー山中</strong>によって英訳されたもの。ホント頭が下がる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc3">ミリオンセラーとなった「人間の証明のテーマ」</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　この「人間の証明のテーマ」のシングル盤は、映画公開の２ヶ月まえに発売された。レコーディングに至っては、さらにその２ヶ月まえに遡る。これも「角川商法」の一環。まえもって大衆に良質な音楽を体験させておいて、映画に対する期待感を高めさせ、自然と劇場に足を運ばせる──という手法だ。実際、映画公開まえから、西條の詩を詠んだナレーションとともにこの曲が流れるスポット広告が、テレビやラジオを賑わせていた。結局、この大量のスポットが功を奏し、映画の大ヒット(配収は『犬神家の一族』を抜いた22億5,000万円)も相まって、このレコードはオリコン・チャートで２位を記録し、累計売上はミリオンセラーに達した。なおB面には、<strong>村岡建</strong>のアルト・サックスがフィーチュアされたインストゥルメンタル・ヴァージョンが収録されている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　この曲、大ヒットとはウラハラに昔から、<strong>クイーン</strong>のあの曲のパクリとか、<strong>ビートルズ</strong>のあの曲に似ているとか、いろいろと非難を浴びている。まあ、いつの世もヒット曲にこき下ろしはついてまわるもの。確かにナルホドと<ruby>相槌<rt>あいづち</rt></ruby>を打ちたくなるところもあるが、私感では目くじらを立てるほどのことではないと思う。似ているといえば、どちらかといえば<strong>マウンテン</strong>の「想像されたウエスタンのテーマ」に雰囲気が似ているような気がする。『<em>勝利への</em><ruby><em>登攀</em><rt>とうはん</rt></ruby>』(1970年)に収録されているこの曲、メロディ・ラインはぜんぜん違うけれど、<strong>フェリックス・パパラルディ</strong>の歌いまわしと<strong>レスリー・ウェスト</strong>のギターの鳴き具合から、そう感じられた。<strong>ジョー山中</strong>はパパラルディとの共演歴があるから、なにか<ruby>曰<rt>いわ</rt></ruby>くありげだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それはさておき、この主題歌を作曲したのは、ジャズ・ピアニストの<strong>大野雄二</strong>である。劇伴のほうもすべて、大野さんのペンによる。角川春樹事務所製作の前作『犬神家の一族』からの続投で、さらに角川映画第三弾で、やはり<strong>森村誠一</strong>原作の『野性の証明』(1978年)においても、大野さんが音楽監督を務めた。<strong>角川春樹</strong>の彼に対する、全幅の信頼が感じられる。ただ先ほど来、話題にしている「人間の証明のテーマ」に関しては、それまでの大野サウンドとはちょっと違うテイストが感じられる。前述のCMでこの曲をはじめて耳にしたとき、まさか大野さんの曲とは思いもよらなかったほど。というのも、それが洋楽と聴きまごうほどの、ブルースロック系のバラード曲といった情趣に富んでいたからだ。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class=" wp-image-2213 aligncenter" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/kirizumi-500x375.jpg" alt="霧積渓谷遠景" width="400" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/kirizumi-500x375.jpg 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/kirizumi-800x600.jpg 800w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/kirizumi-300x225.jpg 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/kirizumi-768x576.jpg 768w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/kirizumi-1536x1152.jpg 1536w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/kirizumi.jpg 1600w" sizes="(max-width: 400px) 100vw, 400px" /></p>
<p>　確かにレコーディング・メンバーをチェックすると、<strong>栗林稔</strong>(p)、<strong>松木恒秀</strong>(g)、<strong>市原康</strong>(ds)、<strong>穴井忠臣</strong>(perc)といった大野さんの作品ではおなじみのスタジオ・ミュージシャンに交じって、異例なことに、<strong>後藤次利</strong>(b)、<strong>石間秀機</strong>(b)、<strong>篠原信彦</strong>(org)といった、ロック系のバンド、<strong>トランザム</strong>のメンバーが参加している。トランザムは、<strong>ジョー山中</strong>と関係が深いから、彼の提案による起用と思われる。実際に山中さんは、仮歌ではあるが<strong>トランザム</strong>のメンバーとともにレコーディングに臨んでおり、出来したサウンドもリズム・セクションのみのセッションといった風情がある。となると──これは、まったくぼくの想像だが、曲作りの際に大野さんに山中さんが「想像されたウエスタンのテーマ」みたいな雰囲気で──と、依頼したのかもしれない。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ときに、フィルム・スコアのほうについて──。<strong>大野雄二</strong>が手がけた作品のなかで、本格的にコンテンポラリー・ジャズ(まだフュージョンというジャンルはなかった)が採り入れられたのは、この『<em>人間の証明</em>』がはじめてだった。前年の『<em>犬神家の一族</em>』にもその片鱗がうかがえるが、物語の舞台が太平洋戦争終戦後の昭和22年の信州という設定と、<strong>横溝正史</strong>の原作小説のおどろおどろしいイメージが手伝って、大野さんが本来得意とするソフィスティケーテッドなジャズ・サウンドはオアズケだった。しかしながら、本作は当時の現代劇であり、舞台もニューヨーク、東京、霧積と、インターナショナルな展開を見せる。前にも触れたが、森村文学の洗練された雰囲気と、ジャジーな大野サウンドは相性がいい。大野さんにとっても、サウンドの構想を練るという点では、比較的やりやすかったのではないだろうか。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p style="text-align: center;"><span style="color: #34485e;">(『<em>犬神家の一族</em>』については、下の記事をお読みいただければ幸いです)</span></p>
<div class="blogcard-type bct-related">

<a href="https://kimama-music.com/yuji-ohno-inugamike-no-ichizoku-original-motion-picture-soundtrack/" title="大野雄二 / 犬神家の一族 オリジナル・サウンドトラック (1976年)" class="blogcard-wrap internal-blogcard-wrap a-wrap cf"><div class="blogcard internal-blogcard ib-left cf"><div class="blogcard-label internal-blogcard-label"><span class="fa"></span></div><figure class="blogcard-thumbnail internal-blogcard-thumbnail"><img loading="lazy" decoding="async" width="160" height="90" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2022/12/cinema-160x90.png" class="blogcard-thumb-image internal-blogcard-thumb-image wp-post-image" alt="" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2022/12/cinema-160x90.png 160w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2022/12/cinema-120x68.png 120w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2022/12/cinema-320x180.png 320w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2022/12/cinema-376x212.png 376w" sizes="(max-width: 160px) 100vw, 160px" /></figure><div class="blogcard-content internal-blogcard-content"><div class="blogcard-title internal-blogcard-title">大野雄二 / 犬神家の一族 オリジナル・サウンドトラック (1976年)</div><div class="blogcard-snippet internal-blogcard-snippet">この度11回目の映像化となる『犬神家の一族』──本作が大向うをうならす演目となるキッカケである、1976年公開の劇場版のサウンドトラック盤を聴きなおす。それは、大野雄二による上質のクロスオーヴァー/フュージョン作品と捉えられる。</div></div><div class="blogcard-footer internal-blogcard-footer cf"><div class="blogcard-site internal-blogcard-site"><div class="blogcard-favicon internal-blogcard-favicon"><img loading="lazy" decoding="async" src="https://www.google.com/s2/favicons?domain=https://kimama-music.com" alt="" class="blogcard-favicon-image internal-blogcard-favicon-image" width="16" height="16" /></div><div class="blogcard-domain internal-blogcard-domain">kimama-music.com</div></div></div></div></a>
</div>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc4">大野雄二のキャッチーなサウンドのスターティング・ポイント</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ちなみに、大野さんは、本作と同時期にテレビ朝日の土曜ワイド劇場の一作『新幹線殺人事件』(1977年７月16日放送)、翌年にはNHKの連続ドラマ(全10話)、銀河テレビ小説『凶水系』(1978年３月13日〜24日)といった<strong>森村誠一</strong>原作の映像作品の音楽を手がけている。両作ともバンド編成こそ小規模だが、一聴でそれとわかる都会のサスペンスに溢れた大野サウンドを確認することができる。いずれにしても、映画公開のおよそ２週間まえにリリースされた『<em>人間の証明</em>』のサウンドトラック・アルバムは、それらの原点であると同時に、ほどなくもてはやされることになる、<strong>大野雄二</strong>という音楽家を際立たせる、実に特徴的なキャッチーなサウンドのスターティング・ポイント的作品である。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　本作のリリースから時を移さず発売された、名優にちなんだイメージ・アルバム『<em>永遠のヒーロー/ジェームズ・ディーン</em>』(1977年)などは、企画ものでありながら、大野さんの裏リーダー作といった味わいがあった。そして、その翌年の1978年がスゴイことになる。おなじみの『<em>ルパン三世</em>』『<em>大追跡</em>』『<em>24時間テレビ/愛は地球を救う</em>』『<em>野性の証明</em>』といったサウンドトラック・アルバムが立て続けにリリースされた。また、大野さんの純然たるリーダー作『<em>スペース・キッド</em>』や、ブラジル出身のシンガー、<strong>ソニア・ローザ</strong>とのコラボ・アルバム『<em>サンバ・アモール</em>』が発売されたのも、この年である。ほかにもメディア化されていない劇伴の吹き込みも多数あったわけだが、その<ruby>間隙<rt>かんげき</rt></ruby>を縫ってオリジナル作品まで制作してしまうのだから、このときの大野さんは、ちょっと常軌を逸している。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　とにもかくにも本作は、<strong>大野雄二</strong>という音楽家の優れた意匠が凝らされ、ついに本懐が遂げられ出来した、個性的な様式美のはじまりを告げるものである。アルバムに収録されている音源はすべて、はじめから商品化が想定され、先行してレコーディングされたフルレングス・ヴァージョン。一部を除いて、実際にフィルムで使用されたヴァージョン(現在は商品化されていない)とは別ものだ。おそらく後日、フィルムスコアリング手法(出来上がった映像の尺に合わせて音楽をつける方法)で、ふたたびレコーディングが行われたのだろう。逆の見方をすれば、本作は映像から離れても鑑賞するに足る、クォリティの高い音楽作品と云うことができる。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-2214" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/newyorktwilight-500x281.jpg" alt="黄昏時のニューヨーク摩天楼" width="534" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/newyorktwilight-500x281.jpg 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/newyorktwilight-800x450.jpg 800w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/newyorktwilight-300x169.jpg 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/newyorktwilight-768x432.jpg 768w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/newyorktwilight-1536x864.jpg 1536w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/newyorktwilight-120x68.jpg 120w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/newyorktwilight-160x90.jpg 160w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/newyorktwilight-320x180.jpg 320w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/05/newyorktwilight.jpg 1800w" sizes="(max-width: 534px) 100vw, 534px" /></p>
<p>　レコーディングのリズム・セクションは、<strong>松木恒秀</strong>(g)、<strong>岡沢章</strong>(b)、<strong>市原康</strong>(ds)、<strong>穴井忠臣</strong>(perc)らが中心となっている。実は彼らは、大野さんにとっては<strong>慶應義塾大学ライト・ミュージック・ソサイェティー</strong>の先輩ピアニストにあたる、<strong>鈴木宏昌</strong>のグループ、<strong>コルゲン・バンド</strong>の当時のメンバーだ。フュージョン系の演奏をさせたら、日本一のリズム隊といっても過言ではない。さらに、<strong>高水健司</strong>(b)、<strong>杉本喜代志</strong>(g)、<strong>羽田健太郎</strong>(org)といった大野さん<ruby>所縁<rt>ゆかり</rt></ruby>のミュージシャン、それにホーンズ＆ストリングスも加わり、サウンド的には贅沢な様相を呈している。大野さん自身の証言によると、<strong>デイヴ・グルーシン</strong>の映画音楽『<em>コンドル</em>』(1975年)からの影響があるという。松木さんのギターによる効果音などは、その顕著な現れと観た。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そういわれてみると、アープ・オデッセイの口笛のような音色がテーマを奏でる「我が心の故郷へ」は、イントロがグルーシンの「フライ・バイ・ナイト」という曲のそれを彷彿させる。また、ギターのヴァイオリン奏法がこころに染みるソース・ミュージック「夜明けのコーヒー・ショップ」は、<strong>リー・リトナー</strong>の「ドルフィン・ドリームス」をイメージさせられる。なによりもミステリアスな「謎のキーワード」が、<strong>クラウス・オガーマン</strong>の「夜のおとずれ」という曲から強く影響を受けているように思われる。グルーシンに限らず、大野さんなりに様々な洋楽を研究した結果だろう。ちなみに、アープの口笛音はその後、テレビドラマ『犬笛』(1978年)、映画『黄金の犬』(1979年)のテーマ曲でもリードを執っているが、そのほか多数の作品に登場する。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そのいっぽうで、チェロとトランペットにテーマを歌わせる「運命のバラード」やオーボエのノスタルジックな主旋律が美しい「霧積の想い出」などは、大野節全開といった感じだ。大野さんの音楽では、登場人物の感情や状況の変化を明瞭に示唆するとき、チェロ、オーボエ、それにヴィブラフォンが使用されることが多い。たとえば、NHKの紀行番組『小さな旅』(1983年〜)の、あの日本情緒溢れるテーマは、オーボエによって奏でられている。それに反して、カーチェイスのシーンで使用される「死の追跡」や「悲しみの霧積へ」などの躍動感に富んだ曲では、ホーン・セクションがよく鳴っており、レア・グルーヴとしても重宝されそうだ。このあたりは『<em>ルパン三世</em>』や『<em>大追跡</em>』に通じる。いずれにせよ本作には、<strong>大野雄二</strong>のクールでゴージャスなサウンドが満載である。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　最後に補足──アルバムにも収録されている、ファッションショーのダンサブルなBGM「黒のファンタジー」を歌っている<strong>ロリータ・ヤーヤ</strong>は、“<strong>Tan Tan</strong>”や“<strong>大空はるみ</strong>”の別名で知られるシンガー、<strong>森野多恵子</strong>である。レコード会社との契約上の都合で、そんなクレジットになった。また、ホテルのラウンジで流れるピアノ・トリオ＆ストリングスによるソース・ミュージックは、大野さんの『<em>Sound Adventure Act.1</em>』(1975年)という、当時の非売品LP(CD化済み)に収録されている「メイフラワー」という曲。同曲は、選曲家の<strong>鈴木清司</strong>のお気に入りだったようで『ルパン三世』のテレビ第2シリーズ第1話などでも流用された。このライヴ・レコーディングには、たまさか森野さんも参加している。興味のあるかたは、こちらのアルバムもどうぞ──。</p>
<p>&nbsp;</p>
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<p class="wp-block-paragraph">最後まで読んでいただき、ありがとうございました。</p>
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