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	<title>Earl Klugh | 気ままに音楽生活</title>
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	<description>いささか気ままに──ではありますが　素敵な音楽をご紹介してまいりますので　どうぞよろしくお願いいたします</description>
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	<title>Earl Klugh | 気ままに音楽生活</title>
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	<item>
		<title>Bob James &#038; Earl Klugh / One On One (1979年)</title>
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		<pubDate>Sun, 02 Nov 2025 07:14:29 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[Fusion]]></category>
		<category><![CDATA[Bob James]]></category>
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					<description><![CDATA[ボブ・ジェームスとアール・クルーとのコラボレーションが美しいアコースティック・サウンド・タペストリーを綾なす『ワン・オン・ワン』]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h2><span id="toc1">ボブ・ジェームスとアール・クルーとのコラボレーションが美しいアコースティック・サウンド・タペストリーを綾なす『ワン・オン・ワン』</span></h2>

<div class="wp-block-cocoon-blocks-label-box-1 label-box block-box has-border-color has-ex-a-border-color">
<div class="label-box-label block-box-label box-label"><span class="label-box-label-text block-box-label-text box-label-text">recommendation</span></div>
<div class="label-box-content block-box-content box-content">
<p class="wp-block-paragraph"><img decoding="async" class="wp-image-703 alignleft" style="margin-bottom: 0px;" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png" alt="" width="101" height="92" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-300x274.png 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records.png 640w" sizes="(max-width: 101px) 100vw, 101px" /><em>Album : Bob James &amp; Earl Klugh / One On One (1979)</em></p>
<p style="text-align: right;"><em>Today&#8217;s Tune : The Afterglow</em></p>
</div>
</div>

  <div id="toc" class="toc tnt-disc toc-center tnt-disc border-element"><input type="checkbox" class="toc-checkbox" id="toc-checkbox-2" checked><label class="toc-title" for="toc-checkbox-2">目次</label>
    <div class="toc-content">
    <ol class="toc-list open"><li><a href="#toc1" tabindex="0">ボブ・ジェームスとアール・クルーとのコラボレーションが美しいアコースティック・サウンド・タペストリーを綾なす『ワン・オン・ワン』</a><ol><li><a href="#toc2" tabindex="0">高級感が演出されたタッパン・ジー・レコードの作品群</a></li><li><a href="#toc3" tabindex="0">後続のコラボレーション２作品とは、だいぶ印象を異にする</a></li><li><a href="#toc4" tabindex="0">この季節にピッタリの稀に見る芸術欲を満たすフュージョン作</a></li></ol></li></ol>
    </div>
  </div>

<h3><span id="toc2">高級感が演出されたタッパン・ジー・レコードの作品群</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　秋になると聴きたくなる１枚が、<strong>ボブ・ジェームス＆アール・クルー</strong>の『<em>ワン・オン・ワン</em>』(1979年)である。秋といえば、たとえば風やせせらぎなどの自然の音がひそやかに聞こえてくるようなイメージがある。それがなんとなくものの哀れを誘うように感じられて、思いのほかこころに染みたりする。このレコードをぼくがはじめて聴いたのは中学生のころだけれど、たとえ年端もいかない少年であっても、そこにある音楽に律の調べを重ね合わせてしみじみとした情趣を感じたりするのであった。それは、この『<em>ワン・オン・ワン</em>』というアルバムで繰り広げられているサウンドのテクスチュアに、一点の曇りもない秋空ような爽やかさとこころを暖めるような柔らかさが感じられるからだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　日本ではCBS・ソニーレコード(現在のソニー・ミュージックレコーズ)が制作した高品質レコード、マスターサウンド・シリーズの１枚としてリリースされた『<em>ワン・オン・ワン</em>』のサウンド・クオリティは、従来のレコードよりもクリアに再現されているように感じられた。少なくとも米国のオリジナル盤よりは、音質の安定感が高いと思われる。だからぼくは、<strong>ボブ・ジェームス</strong>のアルバムに関しては、いつも国内盤が発売されるのを待ったものだ。それはさておき、この『<em>ワン・オン・ワン</em>』の国内盤のタスキには、こんなキャッチコピーが記されている。それは「ボブ・ジェームスとアール・クルーの競演で綾なすアコースティック・サウンド・タペストリー！」といった具合である。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　このコピー、なかなか云い得て妙であると、ぼくは思う。当時のジェームスは、“ミスター・ニューヨーク”という異名をとるほどの、アメリカ東海岸のフュージョン・シーンを牽引するキーボーディストのひとり。かたや<strong>アール・クルー</strong>は、ミシガン州デトロイトを拠点に構えるギタリスト。エレクトリック・ギターの勢力が強いシーンにおいて、彼は一貫してナイロン弦ギターを主体とした独自のスタイルのフュージョン・サウンドを展開するユニークな存在だった。当時ふたりはすでに日本でもたいへんな人気を誇っていたが、コラボレーション・アルバムをリリースするのはともにこれがはじめて。そういう意味では、夢の共演と云える。そして、くだんのタスキにはさらに「秋風にフィット！」とも記されているのだった。</p>
<p><img fetchpriority="high" decoding="async" class="aligncenter wp-image-8231 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/10/oneonone1.png" alt="ニューヨークの秋景色とグランドピアノ" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/10/oneonone1.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/10/oneonone1-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　上記のコピーは、本盤が日本でリリースされる時節に合わせて案出されたものだろうけれど、ぼくには当時からアルバムのコンテンツにピッタリの表現であるように思われた。ときに『<em>ワン・オン・ワン</em>』は、ジェームスの自己レーベル、タッパン・ジー・レコードからリリースされた。クルーは当時、ユナイテッド・アーティスツ・レコードの専属アーティストだったので、このコラボレーション・アルバムは同レーベルの厚意によって実現したと云っていい。そんなわけで、本作のプロデュース、アレンジメント、コンダクティングは、ジェームスによって一手に担われている。とはいってもソングライティングやパフォーマンスに関しては、ふたりは同等の立場をとっている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それはそうと、タッパン・ジー・レコードがリリースするレコードといえば、振り返ってみるとかなり高級感が演出されていたように思われる。このレーベルのアルバムは一部の例外はあるものの、そのほとんどのジャケットがゲートフォールド仕様だった。ジャケットを本のように開くことができる、俗にダブルジャケットとも呼ばれるものだが、それにはタッパン・ジーというか主宰者であるジェームスの音楽制作におけるある種のこだわりさえ感じられる。それすなわち、ジャケットは音楽の内容をイメージさせる作品の重要な一部であるという、彼の信条の顕れではなかろうか。タッパン・ジー作品のアートワークは、著名な女性グラフィックデザイナー、<strong>ポーラ・シェア</strong>によるものだが、どれにも胸をときめかせるものがある。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　シェアがデザインしたタッパン・ジー作品のジャケットには、彼女の独特の意匠が凝らされている。ことにジェームスのアルバムのアートワークは、ちょっとした仕掛けが施されていて、見ているだけでこころが踊る。ジャケットには作品を象徴するオブジェの写真があしらわているのだが、それは同時にジェームスがリリースするアルバムの作品番号を示唆するものでもあるのだ。いささか余談になるが、いい機会なので例示してみよう。彼のタッパン・ジーにおける最初のリーダー作は『<em>ヘッズ</em>』(1977年)だが、CTIレコードからリリースされた『<em>はげ山の一夜</em>』(1974年)から数えると、通算５枚目のアルバムということになる。そのジャケットには、５セント硬貨がクローズアップされている。すなわちそれは、第５作であることを示すものだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　さらにジャケットに大写しとなっている被写体を順番に観ていくと『<em>タッチダウン</em>』(1978年)のアメフト・ボール(タッチダウンしたときの得点は６)『<em>ラッキー・セヴン</em>』(1979年)のナナホシテントウ(赤色の鞘翅に浮かぶ黒い紋の数は７)『<em>H</em>』(1980年)のホットドッグ(頭文字“H”のアルファベットにおける順序番号は８)『<em>サイン・オブ・ザ・タイムス</em>』(1981年)の疑問符の道路標識(“?”の起源は“q”、その変形は９)『<em>ハンズ・ダウン</em>』(1982年)の両手のシルエット(指の数は10)『<em>フォクシー</em>』(1983年)の女性の交差した足とそれに挟まれたジェームス自身の手(その形状が示す“XI”はつまり11)『<em>トゥウエルヴ</em>』(1984年)の巷に散在する“12”に囲まれたジェームス自身のフェイスフォト(云うまでもなく12)となっている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ただ、上記のうち『<em>ハンズ・ダウン</em>』以降のアートワークは、シェアがデザインしたものではない。それらのデザインを手がけたのは、当時のコロムビア・レコードのアートディレクターで、アルバム・カヴァー・アートの巨匠とも云われる<strong>ジョン・バーグ</strong>。ジェームスがテーマ曲を担当したテレビシリーズ『タクシー』(1978年 – 1983年)にちなんだスペシャル・アルバム『<em>N. Y. メロウ</em>』(1983年)もまた、彼の意匠である。いずれにしても、結果的にジェームスのリーダー作は、花も実もあるものとなった。だから彼の音楽に触れたことがないかたでも、上に挙げた作品のジャケットを見てなにかこころに響くものがあったなら、ぜひ中身のほうもお試しいただきたい。ジェームスの作品は、看板に偽りがないこと請け合いである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc3">後続のコラボレーション２作品とは、だいぶ印象を異にする</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ところで肝心の『<em>ワン・オン・ワン</em>』だが、こちらのジャケットは<strong>ポーラ・シェア</strong>がデザインしたものだ。いまではなかなか見かけないブックマッチのクローズアップ写真があしらわれている。紙マッチはあらかた千切られており、残っているのは２本のみ。このアートワークの成り立ちが、アルバム・タイトルに起因するものであることは、火を見るよりも明らかだ。つまり紙マッチは、いままさに“One On One”の状態にある。云うまでもなく、“One On One”は“１対１”という意味。残された２本のマッチは、ジェームスとクルーとが対峙するさまをイメージさせる。前述したように、本作のソングライティングとパフォーマンスにおいて、ふたりは同等の立場をとっているが、そのことが上手く表現されている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　結局のところ『<em>ワン・オン・ワン</em>』はスマッシュヒットとなり、1981年度のグラミー賞ベスト・ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞も受賞している。それ故か、その後ジェームスとクルーとはソロ活動の合間を縫って、さらに２枚のコラボレーション・アルバムを制作する。具体的には『<em>トゥー・オブ・ア・カインド</em>』(1982年)『<em>クール</em>』(1992年)といった作品になるが、前者はクルーの当時の所属レーベル、キャピトル・レコードからリリースされ、後者はジェームスが移籍したあと取締役も務めたワーナー・ブラザース・レコードから発売された。なお『<em>クール</em>』では、久々にシェアがジャケットのデザインを手がけている。青空に浮かぶ２本のキュウリといった絵面は、タッパン・ジー時代の意匠を彷彿させる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　上記の３枚のアルバムを比較すると、各々の印象はかなり異なる。これは<strong>ボブ・ジェームス</strong>という音楽家が、たとえリユニオン・セッションであってもノスタルジックな方向に流れることはなく、前向きな方法でサウンドをクリエイトするひとだからだろう。強いて云えば、レコーディングのスタイルとメンバーにおいて『<em>トゥー・オブ・ア・カインド</em>』と『<em>クール</em>』とは通じ合うところがある。両者の吹き込みではともに、<strong>ボブ・ジェームス</strong>(key)、<strong>アール・クルー</strong>(g)、<strong>ゲイリー・キング</strong>(b)、<strong>ハーヴィー・メイソン</strong>(ds)、<strong>レナード “ドック” ギブス</strong>(perc)といったリズム隊が中心となっている。むろん楽曲によっては、サウンドに彩りを添えるアディショナル・ミュージシャンも何人か参加している。</p>
<p><img decoding="async" class="aligncenter wp-image-8232 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/10/oneonone2.png" alt="ニューヨークの秋景色とアコースティック・ギター" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/10/oneonone2.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/10/oneonone2-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　この２作は楽曲においても、ジェームスとクルー以外のミュージシャンのペンによるものが含まれているという点で共通する。そのぶんメロディ、リズム、ハーモニーと、どの部分を採ってみても広がりを見せている。それに反して編成はコンパクトだが、それ故サウンドは気の合うもの同士のセッションといった印象を与える。音に厚みをつける役目はシンセサイザーやMIDI関連機器が担っているが、むしろそのシンプルさがプレイヤーたちのインプロヴィゼーションやコンピングを際立たせているようにも思われる。そういう意味で『<em>トゥー・オブ・ア・カインド</em>』『<em>クール</em>』は、平たく云うとジャジーなフュージョン作品と云える。その点で『<em>ワン・オン・ワン</em>』とは、だいぶ印象を異にする。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ぼくはジェームスとクルーとによる３枚のコラボ作のなかでは、その嚆矢である『<em>ワン・オン・ワン</em>』がいちばん好きだ。べつに後続の２作品がそれに劣るというわけではないし、躍動感溢れるビートや緊密度の高いアドリブという点では、むしろ１作目に勝ると思われる。しかしながら、出来したサウンドを包括的に観たとき、それがもっとも充実しているのは『<em>ワン・オン・ワン</em>』なのだ。さらに云えば本作は、単純に鑑賞音楽として向き合ったとき、至高とも云うべき奥行きと味わいの深さを感じさせてくれる。本作のレコーディングでは、電子工学的手法によって合成された楽音のミックスは一切採用されていないが、その極上のアコースティックなサウンドは、それこそ秋風にフィットしそうである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　振り返ってみると、ジェームスがオーケストレーションにシンセサイザーを本格的に導入しはじめたのは、1982年ごろのこと。アルバムでいうと『<em>トゥー・オブ・ア・カインド</em>』『<em>ハンズ・ダウン</em>』あたりから、それまで弦楽器や木管楽器によって演奏されていたパートに、シンセサイザー・サウンドが充てられるようになっていく。それはそれでいいのだけれど、どんなにエレクトロニクスにおけるテクノロジーの蓄積やコンセプトの洗練が進んでいっても、所詮そのサウンドはリアルなアンサンブルが奏でる響きとは別モノ。その点はジェームスほどの優れた音楽家であれば、重々承知のことだろう。現に彼が、決してオーケストラの代替えとしてではなく、革新的な音の追求からシンセサイザーを使用しているということは、一聴でわかる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　とはいえ『<em>ワン・オン・ワン</em>』での弦楽器と管楽器とが奏でるアコースティカルな趣きには、奥深く計り知れないものがある。<strong>デヴィッド・ナディアン</strong>をコンサートマスターとするストリング・セクションは、ヴァイオリン８名、ヴィオラ２名、チェロ２名と、ほどよいスケール感で高尚かつ優美な響きを奏でている。ナディアンは、当時<strong>ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団</strong>を勇退し、ソリスト兼スタジオ・ミュージシャンとして活躍していたヴァイオリニスト。ジェームスのレコーディングでは常連だったが、むろんそのキャリアはそれに留まるものではなく、彼が関わった作品は膨大な数に上る。つまりナディアンは、ポピュラー・ミュージックの弦楽器の録音においては、ファーストコール・ミュージシャンだったわけである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　いっぽうホーン・セクションのほうは、従来ジェームスがオーガナイズするオーケストラと比較すると、稀に見るスモール・アンサンブルとなっている。金管楽器は、<strong>ジェームズ・バフィントン</strong>によるフレンチホルンのみ。木管楽器のほうは、<strong>ジョージ・マージ</strong>、<strong>フィル・ボドナー</strong>、<strong>ロメオ・ペンケ</strong>、<strong>ウォーリー・ケイン</strong>といった４人の名うてのウッドウィンド・プレイヤーで構成されている。いずれもジェームスのレコーディングではおなじみのミュージシャンだが、特に彼のオーケストラにおいて頻繁に木管楽器のパートを司るマージは、BJサウンドのキーパーソンと云える。彼はサックスをはじめ、イングリッシュホルン、フルート、オーボエ、そしてリコーダーなど、なんでもこなすジェームスにとっては頼りになるサポーターだった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　たとえば、ジェームスはとき折リコーダーを採用することがあるのだけれど、前述のテレビシリーズ『タクシー』のテーマ曲で、彼のライヴでは定番となっている「アンジェラ」という曲のイントロとコーダで、あたかも小鳥の歌声のごときインプレッシヴなサウンドを奏でているのは、このエアリード式の縦笛なのである。この曲はジェームスのリーダー作では『<em>タッチダウン</em>』や『<em>N. Y. メロウ</em>』などで聴くことができるが、それらのレコーディングでアルト・リコーダーを愛らしい音色で吹奏しているのは、だれあろうマージだ。彼はスタジオ・ミュージシャンとしての活動をメインに据えていたが、1979年12月22日に行われたジェームスのカーネギー・ホールでのコンサートでは、フルーティストとして堂々たるライヴ・パフォーマンスを披露した。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc4">この季節にピッタリの稀に見る芸術欲を満たすフュージョン作</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　その模様の一部はのちに２枚組のアルバム『<em>ニューヨーク・ライヴ</em>』(1981年)に収録されたので、興味のあるかたは手にとってみてはいかがだろう。このアルバムでは１曲のみだが、スペシャルゲストとしてコンサートに参加したクルーの演奏も聴くことができる。ジェームスとクルーにとっては当時の最新作だった『<em>ワン・オン・ワン</em>』の収録曲「カリ」が披露されている。また1993年に日本のビデオアーツ・ミュージックがリイシューした際にボーナス・トラックとして追加された「アイルランドの女」では、マージによるティン・ホイッスルの演奏を聴くこともできる。ジェームスのCTI時代のリーダー作『<em>スリー</em>』(1976年)の収録曲だが、美しいメロディック・ラインと幻想的なカリプソのリズムが詩情豊かな空気を作り出している。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　これもまた余談になるけれど、この「アイルランドの女」はジェームスのオリジナル・ナンバーではなく、もともとアイルランドの作曲家、<strong>ショーン・オ・リアダ</strong>が書いた曲。オ・リアダは20世紀のアイルランドの伝統音楽史上、もっとも重要な音楽家のひとり。彼は1960年代初頭から<strong>キョールトリ・クーランス</strong>というグループを率いていたが、そのメンバーだったティン・ホイッスル＆イリアン・パイプス奏者の<strong>パディ・モローニ</strong>によって新たに結成されたバンド、<strong>ザ・チーフタンズ</strong>が「アイルランドの女」をレコーディングした。アイルランドの伝統音楽が現代的に解釈されたこの演奏は、アルバム『<em>ザ・チーフタンズ４</em>』(1973年)に収録されているが、<strong>スタンリー・キューブリック</strong>監督の歴史映画『バリー・リンドン』(1975年)で使用されたことで一躍注目された。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　この曲にいち早く着目したアメリカのミュージシャンはジェームスだけれど、その研ぎ澄まされたアンテナと芸術的なセンスには、ただただ敬服するばかりだ。そして、そんなアーティスティックなクオリティをさらなる高みに押し上げることにウェートが置かれた典型的な作品が『<em>ワン・オン・ワン</em>』である。むろんアクティヴなアドリブ・プレイも展開されるが、トータル・サウンドには晦渋なところは微塵もなく、むしろある種のミドル・オブ・ザ・ロードとしてのリラクゼーションさえ感じられる。そういう味わいが『<em>トゥー・オブ・ア・カインド</em>』や『<em>クール</em>』のそれと一線を画すのだ。クルーの作品としても、過去のリーダー作と比較すると、もっともユニークかつフレッシュな印象を与える。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-8233 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/10/oneonone3.png" alt="ニューヨークの秋景色とリコーダー" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/10/oneonone3.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2025/10/oneonone3-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　クルーの場合、ナイロン弦ギターによる<strong>チェット・アトキンス</strong>を彷彿させる奏法といい、メロウでポップなソングライティングといい、独創的である反面ワンパターンに陥る危うさを抱えていることは否めない。そういう問題点は、それまで<strong>デイヴ・グルーシン</strong>、<strong>ブッカー T. ジョーンズ</strong>、<strong>デヴィッド・マシューズ</strong>らによる、オーケストレーションによって解消されてきた。そんな優れた３人以上にジェームスは、プロデュースとアレンジとにおける卓越した能力を発揮して、クルーの音楽に新風を吹き込んでいる。ジェームスは、過去に自己のリーダー作『<em>タッチダウン</em>』のレコーディングの際、３曲のオリジナル・ナンバーでクルーを起用しているが、ひょっとすると、それ以来その最高のパフォーマンスを引き出すための戦略を思い描いていたのかもしれない。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ということで、名作『<em>ワン・オン・ワン</em>』のレコーディングの詳細を観ていこう。ストリングスとウッドウィンズについてはすでに触れたが、リズム・セクションのメンバーを列記すると、<strong>ボブ・ジェームス</strong>(key)、<strong>アール・クルー</strong>(g)、<strong>エリック・ゲイル</strong>(g)、<strong>ゲイリー・キング</strong>(b)、<strong>ニール・ジェイソン</strong>(b)、<strong>ロン・カーター</strong>(b)、<strong>ハーヴィー・メイソン</strong>(ds)、<strong>ラルフ・マクドナルド</strong>(perc)となる。３人のベーシストは２曲ずつプレイしているが、キングはCTI時代から長きにわたりBJサウンドのボトムを支えたジェームスの盟友、ジェイソンは『<em>ラッキー・セヴン</em>』からの続投だがマルチ・インストゥルメンタリストとして知られるひと、カーターは云わずと知れた名ジャズ・ベーシスト、もちろん本作でもアップライト・ベースを弾いている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　レコーディングは1979年の６月から７月にかけて、ニューヨーク市のメディアサウンド、サウンド・パレス、サウンドミキサーズといったスタジオにおいて行われた。エンジニアは<strong>フィル・ラモーン</strong>の薫陶を受けたことで知られる、タッパン・ジー作品ではおなじみの<strong>ジョー・ジョーゲンセン</strong>が務めた。オープニングを飾るクルーの「カリ」は、ほどよく緊張感が漂うイントロから清廉なテーマへと移行するカリプソ・ナンバー。途中マイナー・キーになってから、フェンダー・ローズがソロをとる。ストリングスが絡んできてからのドラマティックな展開、さらに一気に明るく澄んだ色彩がはじけるなかでのギター・ソロに胸がすく。ジェイソンの弾力感のあるベースも心地いい。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ジェームスの「ジ・アフターグロウ」では、アルト・リコーダーによるパストラールなイントロと、メイソンが打ち出すリラックスしたスロー・サンバの律動に気持ちが和む。ギターによる明るさのなかにも少し憂いを帯びたメロディック・ラインがこころに染みる。ストリングスとウッドウィンズとのオブリガートもなんとも清々しい。ローズとギターとのややブルージーなダイアローグもまた、メロウな時間を演出する。クルーの「ラヴ・リップス」は、メランコリックな曲調と歯切れのいいビートとのコントラストが際立った、ソフトなフュージョン・ナンバー。ギターとローズのソロ、アルト・フルートのカウンター・メロディなどが都会的なムードを醸し出す。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ジェームスの「マヨルカ」は、いかにも彼らしいアートオリエンテッドなナンバー。ジャジーな展開のなかに盛り込まれたクラシカル・テイストが、モダンかつエレガントな雰囲気を醸成する。ロマンティシズムが横溢するジェームスのピアノ、クルーのスパニッシュ・フレイヴァーが匂い立つギター、カーターのダイナミックなベースと、どれも鮮やかで美しい。クルーの「アイル・ネヴァー・シー・ユー・スマイル・アゲイン」は、アルバム中もっともポップな曲。ハートウォーミングでノスタルジックな曲調は、いかにもクルーらしい。ウェットなギター、フェイズを深くかけたローズ、たおやかなストリングス＆ウッドウィンズなどの響きが、聴くものを優しい気持ちにさせる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ラストを飾るジェームスの「ワインディング・リヴァー」は、ノーブルなタッチのBJ流ポスト・バップ。カーターのベース・ソロもフィーチュア。クァルテットによるエキサイティングなプレイをとくとご賞味あれ。なお1993年にビデオアーツ・ミュージックがリイシューしたCD盤には、ボーナス・トラックとして未発表音源の「ジャズ・ジャム」が追加収録されている。このソースは文字どおり、エンジニアがレコーディング・レヴェルを調整をするために行われた、ジャム・セッションが録音されたもの。アルバムのコンテンツとは異なり、思いのほかエナジェティックでジャジーな即興的パフォーマンスが展開されているのが興味深い。いずれにしても『<em>ワン・オン・ワン</em>』は、稀に見る芸術欲を満たすフュージョン作。この季節にピッタリの音楽である。</p>
<p>&nbsp;</p>
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<p class="wp-block-paragraph">最後まで読んでいただき、ありがとうございました。</p>
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		<title>Earl Klugh / Earl Klugh (1976年)</title>
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		<pubDate>Sun, 03 Nov 2024 07:34:46 +0000</pubDate>
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		<category><![CDATA[Earl Klugh]]></category>
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					<description><![CDATA[単なるBGMには終わらないオーセンティックなフュージョン・ミュージックが展開されたアール・クルーのデビュー作『アール・クルー』]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<h2><span id="toc1">単なるBGMには終わらないオーセンティックなフュージョン・ミュージックが展開されたアール・クルーのデビュー作『アール・クルー』</span></h2>

<div class="wp-block-cocoon-blocks-label-box-1 label-box block-box has-border-color has-ex-a-border-color">
<div class="label-box-label block-box-label box-label"><span class="label-box-label-text block-box-label-text box-label-text">recommendation</span></div>
<div class="label-box-content block-box-content box-content">
<p class="wp-block-paragraph"><img loading="lazy" decoding="async" class="wp-image-703 alignleft" style="margin-bottom: 0px;" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png" alt="" width="101" height="92" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-500x456.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records-300x274.png 300w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2023/02/records.png 640w" sizes="(max-width: 101px) 100vw, 101px" /><em>Album : Earl Klugh / Earl Klugh (1976)</em></p>
<p style="text-align: right;"><em>Today&#8217;s Tune : Wind And The Sea</em></p>
</div>
</div>

  <div id="toc" class="toc tnt-disc toc-center tnt-disc border-element"><input type="checkbox" class="toc-checkbox" id="toc-checkbox-4" checked><label class="toc-title" for="toc-checkbox-4">目次</label>
    <div class="toc-content">
    <ol class="toc-list open"><li><a href="#toc1" tabindex="0">単なるBGMには終わらないオーセンティックなフュージョン・ミュージックが展開されたアール・クルーのデビュー作『アール・クルー』</a><ol><li><a href="#toc2" tabindex="0">チェット・アトキンスからの影響とアコギへのこだわり</a></li><li><a href="#toc3" tabindex="0">脂が乗ってきた時期にあったグルーシンによる好サポート</a></li><li><a href="#toc4" tabindex="0">グルーシンとクルーとのレアな化学反応から生まれた作品</a></li></ol></li></ol>
    </div>
  </div>

<h3><span id="toc2">チェット・アトキンスからの影響とアコギへのこだわり</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　<strong>アール・クルー</strong>がアルバム・デビューを果たしたのは1976年のことで、いまから考えると当時のフュージョン・シーンにおいて、かなり特異な存在感を放っていたと思う。ギターといえばフュージョンという音楽ジャンルでは花形楽器だが、彼が弾いていたのはエレクトリック・ギターではなくナイロン弦のギター。1990年代にフュージョンから派生したスムース・ジャズが主流になると、アコースティック・ギターをメイン楽器とするアーティストも珍しくなくなったけれど、クロスオーヴァーがよりコマーシャルなサウンドへと移行したフュージョンがもてはやされていた時代では、ガットを指先ではじいて鳴らしていたのはクルーくらいのものだった。フュージョンといえば、ギブソンやアイバニーズのエレクトリック・ギターだったのだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　当時のフュージョン系スター・ギタリストといえば、<strong>リー・リトナー</strong>、<strong>ラリー・カールトン</strong>、<strong>アル・ディ・メオラ</strong>あたりだろうか。リトナーもカールトンもアコースティック・ギターを手にするが、どちらかといえばサブ楽器として使用している印象が強い。ディ・メオラは、エレクトリックとアコースティックとの両方のギターを駆使して個性的な音楽を生み出していたけれど、アコースティック・ギターを使用するのは、自己のサウンドに地中海地方のフォーク・ミュージックやフラメンコ音楽を採り入れるときだった。アコースティック・ギター１本で、だれもが親しめるようなポップ・インストゥルメンタル風のフュージョンをプレイしていたのは、やはりクルーしかいない。その点、彼の音楽はスムース・ジャズの原点と云える。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　そんなクルーにも短期間ではあるが、エレクトリック・ギターを弾いた時期がある。いまでは信じられないけれど、彼はあの<strong>リターン・トゥ・フォーエヴァー</strong>に在籍していたことがある。云うまでもなく、ジャズ・ピアニスト、キーボーディストの<strong>チック・コリア</strong>が率いたバンドだ。1960年代の後半から<strong>マイルス・デイヴィス</strong>のバンドに参加したコリアが、このモダン・ジャズの帝王のもとでエレクトリック・ジャズの洗礼を受けたことは、あまりにも有名。彼はその影響から、斬新なリズムとビートにイタリア系であるが故の自己の音楽的ルーツを重ね合わせ、新しいサウンドを開拓した。コリアのエレクトリック・ジャズに対する考えや構想が具現化されたバンドが、<strong>リターン・トゥ・フォーエヴァー</strong>だったのである。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-6122 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/10/elgpanda.png" alt="エレクトリック・ギターを弾くパンダとアコースティック・ギター" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/10/elgpanda.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/10/elgpanda-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　このバンドはスタート時においてラテン音楽のカラーが強かったが、メンバー・チェンジを繰り返すとともに、ロック色が濃厚になっていく。特に<strong>ビル・コナーズ</strong>(g)と<strong>レニー・ホワイト</strong>(ds)の加入は、バンド・サウンドに大きな変化をもたらした。かいつまんで云うと、それはエレクトリック・ジャズからフュージョンへの進化ということになる。バンドのサード・アルバム『<em>第7銀河の讃歌</em>』(1973年)はまさにロック色の強いフュージョン作品だが、そのレコーディングから１年足らずで音楽性の相違を理由にコナーズが脱退する。そしてその後釜に座ったのが、ほかでもないクルーだったのである。彼はコリアの意向に沿いエレクトリック・ギターを手にするが、なぜか２か月でバンドを脱退している。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　脱退の理由は一般的には、クルーが当時病気になった家族を案じたことからと伝えられている。しかしそれはどうだろう？ぼくには、彼が結局アコースティック・ギターへのこだわりを捨てることをできなかったことが、いちばんの要因と思われるのだけれど──。いずれにしても、クルーが参加した<strong>リターン・トゥ・フォーエヴァー</strong>の発表音源はない。実際にコリア、ホワイト、そして<strong>スタンリー・クラーク</strong>(b)らとともに、ロック・ビートに乗ってエレクトリック・ギターを弾ずるクルーの姿を観られなかったのは、ちょっと残念な気もする。なお彼の後任には、前述の<strong>アル・ディ・メオラ</strong>が就いた。バンドは1974年から1976年までの黄金期を迎える。５作目の『<em>ノー・ミステリー</em>』(1975年)においては、グラミー賞も獲得した。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　いっぽうクルーは、それ以降アコースティック・ギターのみに集中する。しかもフィンガーピッキングに執着しつづける。サムピックを使用せずに指の爪で弦を弾く彼の演奏スタイルは、ミスター・ギターの異名をとるカントリー・ミュージシャン、<strong>チェット・アトキンス</strong>のそれを彷彿させる。低音域を親指でミュートしながら、人差し指、中指、薬指でメロディとコードを奏でるという弾きかたは、まさに“チェット・アトキンス奏法”そのもの。実際創出されるサウンドはアトキンスのものとはかなり異なるが、その点クルーは、アトキンスのメソッドを研究した上で独自のスタイルを築いたと云える。彼自身、もっとも強い影響を受けたギタリストとしてアトキンスの名前を挙げている。クルーにとって、アトキンスは少年時代のアイドルだったのだ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　クルーは1953年９月16日、アメリカのミシガン州デトロイト市に生まれた。６歳のときからピアノのレッスンを受けていたが、10歳のときにクラシック・ギターの演奏に転向する。彼は13歳のとき、NBCのテレビ番組『ペリー・コモ・ショー』(1953年 &#8211; 1967年)で観た、<strong>チェット・アトキンス</strong>のギター演奏に魅了された。ずっとあとのことになるが、クルーは自己の４枚目のリーダー作『<em>瞳のマジック</em>』(1978年)のレコーディングにおいて、<strong>ダニー・オキーフ</strong>のカヴァー・ナンバー「グッド･タイム･チャーリー」１曲のみだが、憧れのアトキンスと共演を果たす。その後、今度はクルーのほうがアトキンスのフュージョン・アルバム『<em>アーバン・オアシス</em>』(1985年)において、ゲスト・プレイヤーとして招かれた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　それはともかく、クルーは16歳という若さで早々とレコーディングを経験している。マルチ・リード奏者で作曲家でもある<strong>ユセフ・ラティーフ</strong>がアトランティック・レコードに残した大作『<em>スウィート 16</em>』(1970年)のクレジットに、クルーの名前を見つけることができる。ラティーフはジャズ・プレイヤーだが、ジャズの枠を超えたユニークな作品を発表しつづけたアーティスト。このアルバムもまた然り。ファンキーなジャズ・ロックから前衛的なシンフォニック・ナンバーまで、ジャズというコトバでは云い尽くせない音楽が展開されている。その合間になぜかクルーのソロ・ギターによる「ミッシェル」が収録されている。あまりにも有名な<strong>ザ・ビートルズ</strong>のカヴァーだが、15歳の演奏とは思えない味わい深さがある。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc3">脂が乗ってきた時期にあったグルーシンによる好サポート</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　その後クルーは、ギタリストでシンガーでもある<strong>ジョージ・ベンソン</strong>のCTIレコード時代のクロスオーヴァー・アルバム『<em>ホワイト・ラビット</em>』(1972年)と『<em>ボディ・トーク</em>』(1973年)とに、立てつづけに参加。前者では<strong>ミシェル・ルグラン</strong>の「おもいでの夏」において、ベンソンを美しいアルペジオやストロークでサポートしている。後者では全面的にリズム・ギターを任されている。さらにクルーは、ブラジル出身のジャズ・シンガー、<strong>フローラ・プリン</strong>の『<em>ストーリーズ・トゥ・テル</em>』(1974年)にも参加し、音楽シーンにおける知名度を上げた。また彼は、自らの出身地でもあるデトロイトで結成されたソウル・コーラス・グループ、<strong>ザ・ドラマティックス</strong>のヒット・アルバム『<em>ドラマV</em>』(1975年)もサポートした。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　以上のように16歳から22歳までの間に、クルーはプロ・ミュージシャンとして実に濃密な時間を過ごしたと云える。そして彼は1976年の１月から２月まで、カリフォルニア州バーバンク市のケンダン・レコーダーズ・スタジオにおいて、いよいよ初リーダー作の制作に打ち込むことになる。当時のクルーは、貴重な経験を経てきただけに、22歳にしてすでにひとかどの作曲家、演奏家として成長を遂げていた。この稀に見る逸材にいち早く目をつけたのは、コンポーザー、アレンジャー、キーボーディストとして多忙を極めていた<strong>デイヴ・グルーシン</strong>だった。彼はモダン・ジャズをプレイしていたころからの僚友、ドラマーの<strong>ラリー・ローゼン</strong>とともに、ちょうど新しいプロダクションを立ち上げるところだった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　このレコーディングにおいてクルーは、楽曲のアレンジメントを全面的にグルーシンに委ねている。リズム録りが終わったあと、カリフォルニア州ロサンゼルス市のレコード・プラント・スタジオにおいて、オーケストラ・パートのオーヴァー・ダビングが行われた。６名のホーンズと14名のストリングスで構成されたバッキング・オーケストラの吹き込みでは、グルーシンがタクトを振った。さらにミキシングにはレコード・プラントに加えて、おなじくロサンゼルスにある1970年代に独自の音響設計で人気を博したウェストレイク・オーディオが使用された。エンジニアはレコード・プラントのヌシ的存在、名手<strong>フィル・シアー</strong>が務めている。そんな贅の限りを尽くしたのは、ユナイテッド・アーティスツ・レコードのA&amp;Rエグゼクティヴ、<strong>ジョージ・バトラー</strong>だ。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-6124 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/10/pfpanda.png" alt="ピアノを弾くパンダとアコースティック・ギター" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/10/pfpanda.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/10/pfpanda-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　さて、ここからは少々わき道に逸れるが、グルーシンのハナシをさせていただく。グルーシンとローゼンは、クルーをアルバム・デビューさせる以前に、カリブ海のセント・トーマス島出身のシンガーソングライター、<strong>ジョン・ルシアン</strong>の作品をプロデュースしていた。基本的にソウル・ミュージックでありながらブラジルをはじめとする中南米の音楽の風味が香るサウンドと、ジェントルなバス・ヴォイスによる滋味豊かな歌唱が、なんともユニークな音楽を創出している。ルシアンの『<em>ラシーダ</em>』(1973年)『<em>マインズ・アイ</em>』(1974年)『<em>ソング・フォー・マイ・レディー</em>』(1975年)といった３枚のアルバムでは、グルーシンならではのサウンド・テクスチュアとグルーヴ・フィーリングが、より音楽のクオリティを高めている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ルシアンのアルバムを制作するにあたってグルーシンとローゼンは、すでにデュオ・クリエイティクス(グルーシンのペンによる同名曲あり)という名称のプロダクションを立ち上げていた。ふたりは新たな飛躍へ向けて、あらためて原盤制作会社、グルーシン/ローゼン・プロダクションを発足させる。このオリジナル・レコードを供給するささやかなプロダクションは、のちにアリスタ・レコード傘下でGRPレーベルをスタートさせ、さらに独立してGRPレコードを創設した。それはともかく、グルーシン/ローゼン・プロダクションはその草創期に、<strong>ノエル・ポインター</strong>(vln)、<strong>パティ・オースティン</strong>(vo)、それに<strong>横倉裕</strong>(key)といった大器を発掘している。そんな才能に溢れた新人アーティストのなかで、先陣を切ったのがクルーだった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　グルーシンは1960年代後半から映画やテレビシリーズに楽曲を提供していたが、クルーをアルバム・デビューさせる直前に彼の代表作である映画『コンドル』(1975年)の音楽を手がけている。グルーシンはこの作品でフィルム・スコアに本格的なフュージョン・ミュージックを採り入れて、かつてない成果を上げた。キャピトル・レコードからリリースされたサウンドトラック・アルバムは、レコーディングに<strong>リー・リトナー</strong>(g)、<strong>ヒュー・マクラッケン</strong>(g)、<strong>チャック・レイニー</strong>(b)、<strong>ハーヴィー・メイソン</strong>(ds)、<strong>ラルフ・マクドナルド</strong>(perc)、<strong>トム・スコット</strong>(ts)といった、フュージョンの人気プレイヤーが参加していることから、日本でも発売当初から音楽ファンの間で大きな話題となった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　またおなじころグルーシンは、テレビシリーズ『刑事バレッタ』(1975年 &#8211; 1978年)のテーマ曲を担当。当初はインストゥルメンタルだったが、あとのシーズンでは女性シンガーソングライターの<strong>モーガン・エイムズ</strong>によって歌詞がつけられた。ヴォーカルはアメリカを代表するエンターテイナーのひとり、<strong>サミー・デイヴィス・ジュニア</strong>が務めた。この「バレッタのテーマ(キープ・ユア・アイ・オン・ザ・スパロウ)」はアメリカでは人気曲で、R&amp;Bシンガーの<strong>メリー・クレイトン</strong>やディスコファンク・バンドの<strong>リズム・ヘリテッジ</strong>、それにラテン・ロック・バンドの<strong>エル・チカーノ</strong>なども採り上げている。グルーシンは『<em>ディスカヴァード・アゲイン！</em>』(1976年)でセルフカヴァーし、クルーにも『<em>フィンガー・ペインティング</em>』(1977年)で演奏させている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　とにもかくにもこのころのグルーシンといえば、その長いキャリアにおいてちょうどサウンド・クリエイトに脂が乗ってきた時期にあった。そんなときに始動したグルーシン/ローゼン・プロダクションの作品に空振りなどあろうはずがない。さきに挙げたクルーを含むフレッシュなアーティストたちの魅力的なアルバムも然ることながら、デビュー時からグルーシンがサポートしていたギタリスト、<strong>リー・リトナー</strong>の(シンフォニック・ジャズ・スウィートを含む)スケールの大きな作品『<em>キャプテンズ・ジャーニー</em>』(1978年)、その独特の音楽性がまるごと詰め込まれたグルーシンのリーダー作『<em>ジェントル・サウンド</em>』(1978年)といったフュージョン・シーンにおけるマスターピースまで制作されている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<h3><span id="toc4">グルーシンとクルーとのレアな化学反応から生まれた作品</span></h3>
<p>&nbsp;</p>
<p>　なおグルーシンが手がけた映画音楽のサウンドトラック・アルバム『<em>ボビー・デアフィールド</em>』(1977年)『<em>出逢い</em>』(1979年)『<em>黄昏</em>』(1982年)などは、レーベルこそGRPではないが３枚ともグルーシン/ローゼン・プロダクションの作品だ。いずれにしてもこのプロダクションによって制作されたアルバムは、グルーシンのフレキシブルでヒューメインな音楽性が色濃く反映されたクオリティの高い作品ばかりである。クルーのデビュー作『<em>アール・クルー</em>』(1976年)をはじめ、それにつづく『<em>リヴィング・インサイド・ユア・ラヴ</em>』(1976年)と『<em>フィンガー・ペインティング</em>』(1977年)といった３枚のアルバムは、グルーシンとローゼンがプロデュースしたものであり、グルーシンがアレンジと指揮を務めている。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　これらの３枚は、ユナイテッド・アーティスツ・レコード傘下にあったブルーノート・レコードからリリースされた。ところでクルーの楽曲といえば、わが国ではこれまでにテレビ・ワイドショーのテーマ曲、ラジオ番組のオープニングないしエンディングのテーマ曲、ラジオの交通情報のBGM、そしてなんといってもテレビやラジオの天気予報のBGMとして、無節操なまでにたくさん使用されてきた。それは当時のクルーのパフォーマンスがフュージョンというよりも、どちらかといえばソフトでポップなインストゥルメンタルという印象を与えたからだろう。柔らかな感触のアコースティック・ギターが奏でる、優しいメロディック・ラインは、耳あたりのいい音楽として多くの日本人に歓迎されたのである。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　グルーシン/ローゼン・プロダクションと袂を分かったあとのクルーは、<strong>ブッカー T. ジョーンズ</strong>、<strong>デヴィッド・マシューズ</strong>、<strong>クレア・フィッシャー</strong>といったアレンジャーの協力を得て、つぎつぎにヒット作を生み出していく。クルーの演奏は相変わらず淀みなく美しい。しかしながらトータル・サウンドは、次第にミドル・オブ・ザ・ロード(MOR)的な様相を呈するようになっていく。クルーのインプロヴァイザーとしての魅力が堅実に引き出されていたのは、<strong>ボブ・ジェームス</strong>とのコラボ作品くらいで、それ以外の作品では即興演奏がほんの序の口で終わることが多く、何よりも聴き心地のよさが重視されていた。それにくらべてグルーシンが手がけた３作品では、単なるBGMには終わらないオーセンティックなフュージョン・ミュージックが展開されていた。</p>
<p><img loading="lazy" decoding="async" class="aligncenter wp-image-6123 size-full" src="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/10/weatherpanda.png" alt="天気予報をするパンダとアコースティック・ギター" width="500" height="300" srcset="https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/10/weatherpanda.png 500w, https://kimama-music.com/wp-content/uploads/2024/10/weatherpanda-300x180.png 300w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /></p>
<p>　グルーシンは、1967年から<strong>セルジオ・メンデス</strong>のオーケストレーションをずっと担当しいたが、1973年からはそれと並行して<strong>クインシー・ジョーンズ</strong>の片腕としても働いていた。つまりグルーシンは、ブラジリアン・ミュージックとソウル・ミュージックから同時に影響を受けており、クルーの作品を手がけたときにはすでに、彼の音楽性はヴァーサティリティに富んだものとして結実していたのである。そんな３作品のうちもっとも完成度が高いのは『<em>フィンガー・ペインティング</em>』であり、個人的にいちばん好きなのは『<em>リヴィング・インサイド・ユア・ラヴ</em>』だけれど、ソング・セレクションとアレンジにすこぶる意匠が凝らされたのはなんといっても『<em>アール・クルー</em>』だろう。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　前述のとおり、本作は全編にわたってカリフォルニアで吹き込まれたので、クルーをサポートするリズム・セクションは西海岸のミュージシャンで固められている。内訳は<strong>デイヴ・グルーシン</strong>(key)、<strong>リー・リトナー</strong>(g)、<strong>チャールズ・ミークス</strong>(b)、<strong>ルイス・ジョンソン</strong>(b)、<strong>ハーヴィー・メイソン</strong>(ds)、<strong>ラウジール・デ・オリヴェイラ</strong>(perc)となっている。オープニングの「ラス・マノス・デ・フュエゴ」はグルーシンのオリジナル。ミステリアスなテーマ部からサスペンス映画の楽曲を彷彿させる後半部へと進行する。終始ジョンソンのベースがファンキーなビートを刻むなか、クルーはスパニッシュなムードとジャジーなフレージングでスリリングな演奏を繰り広げる。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　一転して「フィラデルフィアより愛をこめて」は、ブライトでリズミカルなポップ・ナンバー。クルーの故郷でもあるデトロイト出身のヴォーカル・グループ、<strong>ザ・スピナーズ</strong>のヒット曲だ。はじけるようなメイソンのドラムス、ヴィヴィッドなメロディとブルージーなアドリブを奏でるクルーのギターが、爽やかな空気をつくっていく。つづくカリプソ風の「アンジェリーナ」は、いかにもクルーらしいオリジナルのメロウ・ナンバー。彼のスウィートでセンシティヴなギター・サウンドが絶品だ。グルーシン、ジョンソン、メイソンの共作「スリッピン・イン・ザ・バック・ドア」は、ブラス・サウンドが活かされたジャズ・ファンク。のちにリトナーやグルーシンもカヴァーしている。クルーは首尾一貫ソウルフルなフレーズを力強く紡いでいく。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　クルーの自作「ヴォネッタ」では、アップテンポのサンバのなかで名インプロヴァイザーとしてのクルーが飛翔する。グルーシンによるローズのバッキングも軽妙。シンガーソングライター、<strong>ニール・セダカ</strong>の大ヒット「雨に微笑みを」では、クルーの小気味いいギターも然ることながら、バウンスするドラムス、しなやかなギター・エフェクト、大胆な展開を見せるストリングスなどが際立つ。グルーシンによるアレンジの勝利だ。クルーが敬愛する<strong>ビル・エヴァンス</strong>の「ワルツ・フォー・デビイ」では、前半は彼のソロ・ギターがフィーチュアされる。美しいコード・ヴォイシングやお得意の高速アルペジオが堪能できる。後半はグルーシンによる鍵盤類とストリングスが加わる。グルーシンのリハーモナイズが至高を極める。ミニモーグの音色も印象的だ。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>　ラストの「風と海」もクルーのオリジナル。もともとシンプルなモティーフが、グルーシンのクリエイティヴな味つけによって、色鮮やかな曲に仕上げられている。クロスするオフビートなリズム、サンバホイッスル風のローズ、ユニゾンするフルートとローズ、ミュート・トランペットとギター、ポルタメントの効いたストリングス、後半のホーン・セクションによるオブリガート、そして繰り返されるモジュレーションと、まるでグルーシン・サウンドの宝石箱のようだ。この煌めくアンサンブルに、クルーはただ溶け込んでいくしかなかった。その点にまったくイヤミは感じられず、むしろスッキリとしたあと味が残される。それはグルーシンのマジックでもあり、クルーの22歳にしてもち得たオーラでもある。本作は、そんなレアな化学反応から生まれた。</p>
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